上越新幹線にE7系導入への足掛かり 東北・上越・北陸新幹線ダイヤ改正(2017年3月4日)

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JR東日本は昨年12月16日、プレスで2017年3月4日に東北・上越・北陸の各新幹線のダイヤ改正を行うと公表した( http://www.jreast.co.jp/press/2016/20161219.pdf )。今回はこれについて見ていく。

2017年3月4日ダイヤ改正まとめはこちら!

1. 今回の東日本系新幹線のダイヤ改正はごく小規模

今回のダイヤ改正では東日本系新幹線(東北・上越・北陸の各新幹線)は非常に小規模なダイヤ改正にとどまった。

まずは上越新幹線。JR東日本新潟支社のプレス( http://www.jrniigata.co.jp/Scripts/press/20161216daiyakaisei-1.pdf )によると、越後湯沢発東京行き「Maxたにがわ」のうち1本が4時間30分程度繰り上がり、高崎から東京へのアクセス増強につなげる。
次に北陸新幹線。JR東日本長野支社のプレス( http://www.jreast.co.jp/nagano/pdf/161216-4.pdf )によると、金沢発東京行き「かがやき」のうち1本が3時間50分程度繰り上がる。

最後に東北新幹線。臨時「はやぶさ」のうち1本のうち東京~仙台間を定期化する。

以上。という、非常に要素の少ないダイヤ改正となった。ダイヤ改正の基本は「シフト」、つまり本数をかえずに運行時間帯をかえることであり、今回JR東日本では東海道線や中央線快速で行われた。これ自体は経営戦略上でも重要なダイヤ改正の仕方であるが、ここまで味気ないのはそれはそれで気になる。2016年3月26日の山陽新幹線もそうであるが、国鉄時代に製造された車両が新幹線から淘汰された現在、高速鉄道の技術革新はある一定水準まで引きあがり、全ての車両が高速対応になったことが原因なのだろう。

特に2017年3月4日の東北新幹線については、もはや臨時列車の一部区間の定期化であり、時刻については変更がない。ダイヤ改正がかつて時刻改正と言われていた歴史があることからも、もはやダイヤ改正とは言えないものとなってしまっている。これは、北海道新幹線が開業して1年になるので、1年間で想定以上の輸送があったことを示したかったのだろう(事実、JR各社総合のダイヤ改正プレスでは「東北・北海道新幹線」としてこの「はやぶさ」定期化が示されていた)。今後北陸新幹線が延伸しようが、北海道新幹線が全通しようが目に見えているのは現行列車の運転区間延長であり、東海道新幹線のN700Sなどの新型車両の公表もないことから、数年間は東日本系新幹線のダイヤに大幅な変化は見込めないものと思われる。




2. 2018年度より上越新幹線にE7系投入

そんな中、昨日4月4日、JR東日本は上越新幹線に新車を導入するプレスを公表した( http://www.jreast.co.jp/press/2017/20170402.pdf )。それは上越新幹線にE7系11編成を投入するというもの。E7系はW7系とともに現在北陸新幹線を運行する唯一の車種となっており、2017年3月25日のE2系J編成(8両編成)の引退を以て全ての北陸新幹線の列車がE7系またはW7系に統一された。今回は2階建て新幹線E4系を淘汰する目的で上越新幹線にE7系を導入することとなった。上越新幹線導入予定のE7系は輸送量と互換性の観点から12両で製造されるものと思われる。おそらくE4系2編成(計16両)をE7系1編成(12両)で置き換えるのが基本になるものと思われる。そのため上越新幹線E7系導入後は北陸新幹線との共通運用が見込まれ、北陸新幹線として東京駅に到着した編成が12分後には上越新幹線として発車することになるものと考えられる。そのためW7系の「とき」「たにがわ」も運行されるようになるかもしれない。

ここで疑問点が1つ。東北新幹線(山形・秋田の両新幹線を除く)をE5系で統一して、余ったE2系を上越新幹線に回すのではなかったのか。2009年の資料では2015年度までにE5系を59編成投入し、すべて置き換えるとしていた。2011年、E5系が営業運転を開始するもたった6日後に震災が起こったため多少遅れることは致し方ないものだと思われる。そこで2017年現在の編成数を見ていくと、E5系については31編成、E6系については26編成導入されており、E6系については臨時列車含めて東京~秋田間を2往復、E5系についてはH5系と合わせて臨時を含めて東京~新函館北斗、東京~新青森、東京~盛岡の「はやぶさ」各1往復、東京基準で合計3往復を賄えるほどの編成を保有しているものの、当初の59編成のおよそ半分にしか及ばない。2012年度には臨時含め毎時2本の「はやぶさ」を運行するために13編成が導入されているものの、2014年以降は毎年1編成しか導入していない。当初は2016年3月26日開業の北海道新幹線用H5系の製造のためJR東日本が製造数を減らしていたという意見もあったが、2017年も1編成であったことからどうやらそれだけが理由ではないらしい。

それは、JR東日本が2020年代半ばから新素材・マグネシウム合金製の車両を製造するというもの。1964年の東海道新幹線開業時に導入された0系は鋼鉄製であったが、いかんせん重いことがネックで晩年に220km/hを出すのが精一杯だった。しかし1982年の東北・上越新幹線開業時に導入された200系は軽量のアルミニウム合金で製造され、240km/h運転を達成した。1981年にフランスTGVが鋼鉄製の車両で270km/hを達成しており、その後数年間は鋼鉄車を導入し続けていたが、1990年代になりアルミニウム合金の優位性が勝るようになり、今では320km/hの営業運転にまでなった。そして2020年代に計画されているのがアルミニウム合金より軽量な新素材・マグネシウム合金車両である。その他台車などにも騒音対策などを施し、2030年代には400km/hでの営業運転を目指すという。もし導入されれば東京~盛岡間は最速で2時間を切り、東京~新青森間ではほぼすべての定期列車が3時間を切って運行されるようになるものと思われる。

とはいえマグネシウム合金はアルミニウム合金より高価である。いつも新素材は高値でつくのが当たり前であるのだが、その資金は早めに確保したいところ。またE5系に一度統一されてしまうと置き換えに老朽化を待たなければならない。これでは技術が確立されても早期に効果を発揮することができないのである。そうとなればE5系の導入は極力抑えたいという方針に変わったとみてもおかしくはない。




さて、話を上越新幹線にE7系が導入される話に戻す。なぜ東北新幹線のE5系導入に伴うE2系の転属から方針をかえたのか。それは1編成当たりの製造費にある。E5系は10両編成ながらも320km/hでの運行に対応するために起動加速度をE2系と比べて引き上げたり、全周幌を導入したり、空気ばね式の車体傾斜装置を導入している。そのため1両当たり4億円程もする高価な列車となっている。ところがE7系は高々E2系のマイナーチェンジ。ノーズ長も変わりないし、最高速度はE2系の275km/hから260km/hにむしろ引き下げられた。E2系が1両2億5000万円程度だったから20年の技術革新でそれより安価になっているのであろう。そうなると、E5系は1編成(10両)約40億円するが、E7系は1編成(12両)30億円で済むのである。つまりJR東日本としては営業キロの短く時間短縮効果の薄い上越新幹線への投資は維持できるほどにし、最大限東北新幹線を高速化させ、世界の高速鉄道市場に売り出そうとしているのである。そして世界の高速鉄道市場のライバルは、なんといってもフランス国鉄とJR東海である。フランス国鉄は新在直通による低コスト導入、JR東海はリニアによる最高速を目指している中、JR東日本は新素材での車両導入を目指すことにより、新規の高速鉄道だけではなく既存の高速鉄道の車両置き換えも狙っているのであろう。今後の高速鉄道市場にも注目したい。


3. 結び

今回2017年3月4日のJR東日本系新幹線のダイヤ改正は非常に小規模なものにとどまった。しかしJR東日本の新幹線にはまだまだ大きな伸びしろがあるのは間違いない。数年間ではあまり変化はないが、10年単位で大きな変革が出ると確信したい。

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