廃止の連鎖が止まらない JR北海道ダイヤ改正予測(2017年3月25日予定)

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JR北海道は、当社単独では維持することが困難な線区について公表した( https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/161118-4.pdf )。今回はこれについて見ていく。

1. 問われる北海道の交通

今回の公表では、全線の49.8%に当たる1237.2kmがJR北海道単独では維持できない線区として初めて公式に示されることとなった。これまで1線区ずつであればJR東日本の岩泉線(廃止)や只見線(今のところバス代行)、JR東海の名松線(復旧)、JR西日本の三江線(廃止決定)で示したことはあったが、ここまで大規模なものになったのはJR6社では初めてである。

そもそも1980年代の特定地方交通線廃止により当時の道内国鉄の34.4%が廃止されており、1960・70年代に無尽蔵に鉄道を開通させたこともあるがそもそも北海道自体人口密度が低く、都市も10万人規模、札幌を除けばせいぜい30万規模のため、都市内輸送ではバスが主流となり、地域輸送も都市間輸送も振るわない事態となっている。このような事態になったのは、JR北海道の経営体質にも起因するものがある。

事の発端は相次ぐ車両火災と貨物列車の脱線。死者は出なかったものの、長期間の運休と点検費がかさむことにより一気に財政が圧迫し、本年9月の台風災害による甚大な被害もさらに足かせとなりこのような状況に至っている。1990年代は気動車特急を相当精力的に取り組んで、制御振り子式のキハ283系の導入によって日本一表定速度の速い特急「スーパー北斗」を生み出した。近年でも強制振り子式のキハ285系を導入しようとしたが、あえなく先行試作車で廃車に。その他にもToT(トレイン・オン・トレイン)や協調運転用の高性能普通気動車キハ201系など、発想自体はいいものの費用のかかる計画を推してきた。弱い経営基盤で投資ばかりしていては、財政難になるのは当たり前である。むしろ旧国鉄だから最悪国が何とかしてくれるだろうという親方日の丸の雰囲気が車内に漂っていたかもしれない。

そんなわけで一応特定地方交通線以外の多くの路線を今日でも運営しているわけだが、如何せん人口減少が甚だしく、特に20代までの人口が特に減り、道内の高校が次々に廃校となる始末である。これでは高校生を輸送するにも長距離で小人数を運ぶこととなり、余計効率が悪くなるのである。これにより2016年3月のダイヤ改正では普通列車の減便がなされたわけだが、新聞各社による46駅の廃止の提案( http://mainichi.jp/articles/20161004/ddr/041/020/003000c )とともに甲斐もむなしくこのような廃止提案になったと思われる。




2. 地方では嫌われ者?

先述したが、都市では小回りの利き便数もあるバスが発達しており、札幌以外では主に高校生しか使ってくれないという事態になっている。小中学生も主にスクールバスで、鉄道には乗ってくれない。つまり札幌以外では高校生しか味方がいないことになる。

特に衝撃だったのは本年8月の夕張市との会談。なるべく早く石勝線夕張支線を廃止してほしいというもの。背景には急速な人口減により夕張市自体の人口が1万人を割ったこと、夕張市自体が財政危機でとても鉄道支援ができないこと、地元の夕張バスの経営を並行しているJRが圧迫していることが挙げられている。これまでは沿線自治体は当然鉄道を存続希望するものだと思っていたが、それが覆された瞬間である。そもそも夕張支線が夕張市内にしかないので、バスであれば国や道の補助金の対象にすらならないレベルのものを国鉄経営安定基金で賄っていること自体が不公平であったので廃止やむなしだと思われる。路線単位ではないものの、市町村合併が2000年代に多く行われた関係で1市町村内で完結する列車が増えており(苫小牧市や室蘭市、釧路市、北見市、遠軽町など)、このようなものは広域輸送を担うJR北海道としての営業は不適切で、小回りの利く地域のコミュニティバスで代替すべきではなかろうか。




3. 単独維持が可能でも、運賃は値上げ

今回の公表によると、単独維持の可能な路線であっても「必要に応じて運賃の値上げ」を行うとしている。

2014年4月の消費税率変更の際には、JR6社では唯一きっぷでの幹線・地方交通線の初乗り運賃を上げたなど、経営状態がよろしくないのは目に見えていた。運賃値上げについてはJR北海道のみの問題ではなく、札幌市交通局では2017年4月より路面電車の運賃を30円値上げし、200円とすることが決まっており( https://www.city.sapporo.jp/st/shiden/documents/ninkashinsei281109.pdf )、バスも札幌市内は初乗り210円であることから、札幌市営地下鉄同様200円程度であればやぶさかではないものと思われる。このように運賃の値上げは残念ながら必要不可欠で、運賃の値上げだけで済むのであれば致し方ないものだと思われる。

また、現時点では単独維持が可能だと判断しても、北海道新幹線札幌開業後は長万部~東室蘭間も大幅に輸送密度が下がり、2000人未満になることが確実視されており、今後さらに単独維持が困難な路線が増えることが予想される。

4. 苦肉の増収策は、廃線ビジネス

2016年12月4日には留萌本線留萌~増毛間が廃止されるが、近年経営難を理由に廃線にするものの、なんとか記念切符やグッズを発売して増収しようとしている。

前例としては2015年12月に廃止となった江差線木古内~江差間で、こちらも直前の駆け込み需要と記念切符発売で利益を上げることができた。特定地方交通線の廃止のように同日に全国各地で廃止されては分散してビジネスにはならないわけで、JR東日本の岩泉線や高千穂鉄道など災害による廃止でもこのようなことはできない。今後3線を廃止する方針としているが、毎年1線ずつ廃止してゆけば毎回記念切符が売れ、毎回かけこみ需要が生まれ、多少なりともJR北海道の財布が潤い、廃止後はその区間の運営に充てていたの支出が恒久的に削減されるので一挙両得となる。経営難だからしぶしぶ廃止を容認している自治体が多いので、ビジネス目当てで安易に廃止となれば問題となるだろう。

5. 普通列車のダイヤ予測

2016年3月には道内普通列車の大幅削減がなされたが、今回のダイヤ改正ではやっても数本であると思われる。それよりも、2017年3月に最大46駅、(うち16駅は廃止確実と思われる)が廃止になる方が重大な点であると思われる。地元住民対象の特急に10円加算で乗れる施策の拡大で普通列車がそこまで削減されるかは見物である。2017年ダイヤ改正の北海道新幹線と道内特急の予測は、別記事にて扱う。


6. 結び

JR北海道は国鉄分割民営化当初から経営難が予想されており、気動車の新規導入にいたっては普通車用では20年近く行われていない、特急用でも35年以上使用しているものがあるなど、かなり経営に手詰まり感が見て取れる。今後持続可能な鉄道運営をするためにも、正念場であると思われる。

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