短距離輸送設定で将来的に在来線を置き換えか! 中国高速鉄道広深港高速線九広間列車ダイヤ改正(2018年9月23日)

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港鉄は8月23日、プレスリリースにて9月23日に香港に中国高速鉄道を乗り入れると公表した( 港鐵公司營運高速鐵路將於二零一八年九月二十三日投入服務 )。今回はこのうち、香港西九龍~広州東間の中距離列車について見ていく。

同日実施の中国高速鉄道香港開業のうち香港西九龍~福田・深圳北間の列車についてはこちら!

1. 香港~広州も高速化へ

今回の2018年9月23日中国高速鉄道香港開業に伴うダイヤ改正では、かねてより直通列車が多く設定されている香港~広州間でも直通CRHが設定されることとなった。

今回の中国高速鉄道香港延伸開業に対する想いは中国・香港共に強く、5月の時点で運転本数や列車の発着地についての情報が出ていたほか、中国鉄路では既に営業している路線では乗車日の28日前より切符を購入できるが、新線に関しては万が一開業が遅れる場合があるので、開業日が決まった段階で発売開始するケースが多い。そのため、昆楚大線の場合では、2018年7月1日ダイヤ改正で開業したが、切符の売り出しは開業僅か2日前の6月30日であった。しかしそんな開業日直前の発売で香港側が納得するはずもなく、今回は2018年9月23日開業であったが13日前の9月10日から切符を発売することとなった。

中国鉄路は、これまで幾度に渡って香港特別行政区政府に対し高速列車の乗り入れを迫ってきた。とはいえ、当時高速列車が走っていたには広九線であったため、深圳駅・羅湖接続で広九直通列車同様港鉄MTR東鉄線に乗り入れようとしていた。しかし25m車では車両限界に引っかかり入線ができないこと、大学駅周辺の急カーブがあること、高速列車が中華人民共和国内地側の片乗り入れとなることなどから見送られてきた。そこで香港側でも新たに高速線を建設することにより、中国高速列車の乗り入れを可能にさせ、香港側も車両を用意することで相互乗り入れを図ることとなった。




2. 高速鉄道駅までのアクセスはどうなる

今回の2018年9月23日中国高速鉄道香港開業に伴い設定された中国高速鉄道香港西九龍発着列車は、在来線広九列車の発着する広州東ではなく高速列車のターミナル駅広州南に停車する。

広州市の中心部は広州地下鉄1号線及び地下鉄2号線の公園前駅周辺となっている。これまで香港から広州市中心部に行くには九龍(紅磡)駅から城際直通車を用いて広州東駅に向かうか、紅磡(九龍)から香港MTR東鉄線を利用し羅湖に向かった後、徒歩連絡で中華人民共和国内地に渡り深圳駅から広九線CRHで広州東(広州方面全列車停車)または広州駅(一部のみ経由)に向かい、広州東駅から広州地下鉄1号線に乗車し9.0km、14分、4人民元かけて公園前に到着するか、広州駅から地下鉄2号線に乗車し2.6km、4分、2人民元かけて公園前にアクセスしている。しかし今回のダイヤ改正で設定された香港西九龍発着の高速列車CRHは広州東や広州発着ではなく、広州南発着として運転されることとなった。広州南駅から公園前へは17.7km、27分、5人民元かけて移動する必要があり、広州市内での移動が長くなっている。せっかく高速化したのに、効果が弱まる結果となった。




3. 運転本数はどうなる

今回の2018年9月23日中国高速鉄道香港開業に伴うダイヤ改正では、香港西九龍~広州南間列車の運転本数は1日30往復を設定したことから、在来線広九列車の12往復より大きく増えている。また長距離列車となる北京南発着、上海虹橋発着、昆明南発着、長沙南発着のそれぞれ各1往復(すべて復興号16両編成)の合計4往復も広州南を経由することから、香港西九龍〜広州南間は毎日34往復が利用可能となる。これにより香港西九龍~広州南間では概ね毎時2本程度の利用チャンスが設定され、利用チャンスが大幅に増加した。

車両運用について見ていくと、前回記事にて取り上げた福田発着は全便、深圳北発着は定期列車22往復中16往復が港鉄の動感号8両編成での運転となっているが、今回扱う広州南発着は30往復中4往復が港鉄の動感号8両編成(食堂車無し)、残り26往復が中国鉄路の復興号16両編成(半室食堂車付き)による運転となる。なお先述した広州南を経由する長距離高速列車は全て復興号16両編成による運転であるから、利用可能な34往復のうち30往復が中国鉄路の車両・乗務員による運転となる。在来線の九広列車は12往復の運転であり(うち10往復が常平停車)、9往復は中国鉄路による25T客車10両編成(うち1両は食堂車)、3往復は港鉄によるktt(九広通)客車9両編成による運転だったことを考えると、非常に輸送力が増加している。

この開業により、香港西九龍〜広州南間142kmはノンストップ列車の場合最速47分で結ばれることとなった。表定速度も181.2km/hであり、香港特別行政区内200km/h運転、中華人民共和国内300km/hであることからしてかなりダイヤに余裕を持っているように見える。既存の九龍(紅磡)〜広州東間は最速1時間50分で結んでいるが、広州側の使用駅が広州東から広州南に変更したことにより広州市内での中国鉄路駅から広州市中心部へのアクセス時間が13分延びることとなったが、それを差し引いても香港~広州間で50分もの時間短縮がされており、移動時間が短縮されたものと思われる。

とはいえ、ノンストップの47分~48分運転の列車は1日3往復しか運転されず、多くは50分台で結んでいる。最長で1時間17分かかる列車もあれば、深圳北で港鉄動感号が中国鉄路復興号に抜かれるという列車設定まである。また港鉄動感号にはノンストップ列車は設定されず、全て深圳北に停車している。中国鉄路の車両同士で抜かし合っている分には問題ないが、なんだか運転本数や停車駅設定や待避などで中華人民共和国側が優劣をつけているような気がしてならない。

なお、乗務員に関しては福田や深圳北での交代は行わず、車両の所属する鉄道会社と同じ会社の乗務員が全区間で乗務することとなった。そのほか、香港西九龍駅では西安や成都など香港西九龍駅からの直通列車が運転していない都市向けに、乗り継ぎ用中華人民共和国内地内完結の高速列車切符を発売することとなった。




4. ダイヤはどうなる

今回の2018年9月23日中国高速鉄道香港開業に伴うダイヤ改正では、所要時間の短縮により滞在時間の延長も図られた。香港西九龍〜広州南間の初列車は北行きは香港西九龍8時05分発北京南行きG80列車、南行きは広州南6時48分発香港西九龍行きG6501列車となっている。また終列車は香港西九龍22時50分発広州南行きG6504列車、南行きは広州南21時37分発香港西九龍行きG99列車(上海虹橋始発)となっている。

在来線の広九列車と比べると、北行きが初列車は九龍(紅磡)7時25分発広州東行きZ812直達特快列車であり、高速列車の香港西九龍8時05分発より40分早く出発するが、在来線は広州東9時24分着であり高速列車は広州南に8時56分に到着することから、広州市内のアクセスを考えてもおよそ15分は早く広州市中心部の公園前駅に到着することができる。しかも在来線では広州東到着後に入国審査があるが、高速列車なら香港西九龍で済ませているため駅を降りたらすぐ広州地下鉄に乗れる。ともなると、20〜30分は早く広州市中心部に行けそうだ。

対して南行きは広州東8時19分発九龍(紅磡)行きZ801直達特快列車であるが、高速列車の広州南発時刻は6時48分であることから、別駅とはいえ初列車発車時刻だけでも1時間31分繰り上がったほか、香港到着も九龍(紅磡)10時17分着から香港西九龍7時43分着となったことから、別駅とはいえ2時間34分到着が繰り上がった。

また終列車は北行きは九龍(紅磡)20時01分発広州東行きZ802直達特快列車であるが、今回の高速列車は香港西九龍22時50分発で設定され、別駅とはいえ最終が2時間49分から下がった。なお、在来線は広州東22時00分着なのに対し、高速列車は広州南に23時41分に到着することから、大きく滞在時間を伸ばすこととなった。

対して南行きは広州東21時32分発九龍(紅磡)行きZ811直達特快列車であるが、今回のダイヤ改正で設定された高速列車の最終は広州南21時37分発とやや互角だ。ただし在来線の九広列車は出境検査があるため発車45分前に入場しなければならないが、高速列車は広州では出境検査を行わないため、5分前に改札を入れば良いという違いはある。なお、在来線は九龍(紅磡)23時25分着なのに対し高速列車は香港西九龍22時28分着であることを考えると、大幅なスピードアップとなっている。

これにより、香港から広州への滞在時間は入出境時間を削ったとしても11時間23分から12時間36分に1時間23分延長し、広州から香港への滞在時間は8時間59分から14時間22分に5時間23分拡大された。

なお、今回のダイヤ改正で在来線の広九列車や広州・広州東~深圳間の広九線CRHの時刻変更や減便は実施されなかった。




5. 料金はどうなる

今回の2018年9月23日中国高速鉄道香港開業に伴い料金も設定される。香港西九龍~広州南間は高速列車で2等車でも247香港ドルまたは215人民元かかる。在来線の九広列車が210香港ドルであることを考えると17.6%の値上げにとどまっているほか、約540日本円の追加出費のみで済む。この点を考えると香港~深圳(福田)での利用と同じ加算運賃で大きく速達性を確保できることから、かなり乗り得列車であるものと思われる。

ただし広深港高速線の料金表を見てみると、香港西九龍~福田間は68人民元、福田~広州南間は82人民元、合計しても150人民元にしかならないのだ。運賃分割をするとなんと30.2%OFFで利用できてしまうのだ。ただ福田停車の広州南発着高速列車CRHは少ないことから深圳北で途中下車したとしても合計149.5人民元と、ほぼ同額で利用できる。在来線より安くしてはならないというのは考えていたのだろうが、香港の余りの物価の高さに特別加算料金を課しているようだ。

なお、一部の列車(広州南行き2本、香港西九龍行き9本)は割引料金で利用でき、香港西九龍〜広州南間を215香港ドルまたは187人民元で利用できる。なんと在来線広九列車と比べて5香港ドル(約70日本円)しか変わらない。先述の途中下車よりは高いが、14%OFFということでかなり乗り得だろう。


6. 結び

今回の2018年9月23日中国高速鉄道香港開業では、香港~広州間においても高速列車CRHが多数運転されることとなり、1912年の九広列車の運転開始以降歴史のある路線の運転を継承することとなった。ただまた港鉄の広州南乗り入れ高速列車は1日4往復のみと少なくなっており、在来線九広列車のktt(九広通)の3往復よりは増えたものの、長距離列車を含め1日30往復の中国鉄路の編成に押されている。1時間に2本程度では輸送力が不足するため16両編成の中国鉄路復興号による運転が大多数を占めているのだろうが、中国の力が圧倒しているように見せている気もしなくはない。

今後広深港高速線でどのようなダイヤ改正が実施されていくのか、在来線の九広列車はどのようになるのか、見守ってゆきたい。

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