速度向上試験で最高速度引き上げへ 上越新幹線・北陸新幹線ダイヤ改正予測(2021年3月予定)

埼玉県本庄市と群馬県みなかみ町は広報にて、2017年9月6日~11月29日に上越新幹線大宮~新潟間で最速速度向上試験を行うと公表した( 広報ほんじょう2017年8月15日版広報みなかみ2017年9月版 )。今回はこれについて見ていく。


1. 上越新幹線最高速度向上試験の意図とは

今回実施される上越新幹線の最高速度向上試験は、2カ月以上の長期間にわたり実施される。

そもそも現在営業・建設中の新幹線は磁気浮上式のリニア中央新幹線を除き、東海道新幹線から北海道新幹線まで全て設計最高速度260km/hで建設されている。公金を大量投入している整備新幹線の最高速度が260km/hとしているのはこの建設時設計速度が根拠で、実際には2010年以降に営業を開始した整備新幹線は320km/h運転も耐えられるようだ。

とはいえ国鉄民営化後、国鉄時代に建設された新幹線各線はJR本州3社の保有資産となり、設計最高速度を超える270km/h運転の300系(東海道・山陽新幹線)や275km/h運転のE2系(東北新幹線)などの運行を開始した。上越新幹線も一部区間で200系新幹線による275km/h運転を行ったが、短距離かつ下り坂のみかつ対応編成が少ないことによりあえなく廃止され、新幹線の営業速度としては一番低い240km/hの運行となった。

とはいえなぜ今になって上越新幹線の最高速度向上試験を行うこととなった。JR東日本では過去にも速度向上試験を行っており、上越新幹線では過去に営業前の400系新幹線(山形新幹線用)の試験を行ったこともあり、高速試験車や新型車両の試験を行ってきた。しかし2017年現在、新たに導入予定の新幹線車両はJR東日本では予定しておらず、新しい高速試験車ALFA-Xも2019年春落成予定で、E5系やE6系の開発に一役買ったFASTECH360も解体して現存したいないため、高速試験車の技術試験の可能性はほぼゼロに近い。となれば、既存の車両形式での高速化という見方が一番強いだろう。

上越新幹線では、2018年春より2階建て新幹線E4系の置き換えが始まり、2021年までに既に北陸新幹線に導入されているE7系に置き換えられる。これにより上越新幹線を走行する車両は既存のE2系と新しく導入するE7系の2車種となり、JR東日本の資材調達状況によればすべての車両の最高速度が275km/h以上となる。現在運用されているE4系が2階建てゆえ240km/hに抑えられていることからも上越新幹線の最高速度は240km/hとなっているが、E7系に置き換われば275km/hにすれば全列車所要時間を短縮することができ、コストパフォーマンスはよくなる。そう考えると、もし今回の最高速度向上試験で将来的に上越新幹線の最高速度が引き上げられるとなれば、E4系が全てE7系に置き換わる2021年頃になるのではないだろうか。

2. 最高速度向上の効果はいかに

次に大宮~新潟間で最高速度を向上した場合の試算をしてみよう。2015年3月14日の北陸新幹線の開業により、日中の定期「とき」はもっぱら高崎~新潟間各駅停車になったため最高速度向上の効果は受けずらいが、大宮~高崎間では日中の定期「とき」が通過運転を行う他、北陸新幹線も乗り入れるため(うち「かがやき」「はくたか」は全便が通過運転を実施)、多くの列車が恩恵を受けることになる。

まずは大宮~高崎間のみで見ていく。現在の最高速度は240km/hであるが、これを北陸新幹線と同等の260km/hに引き上げた場合通過タイプで2分、E2系とE7系の最高速度に合わせて275km/hとした場合3分の短縮が見込まれる。

しかし、関東平野の人口密集地帯で最高速度引き上げはできるのだろうか。東北新幹線大宮~宇都宮間は2011年のE5系登場まで最高速度が240km/hであった。当時は宇都宮以北で275km/hを出していたものの、E4系がまだいたこともあったせいか宇都宮以南では最高速度引き上げが行われてこなかった。E5系導入により区間最高速度は上がったものの、2008年のJTB時刻表と比べると東京~宇都宮間の「Maxやまびこ」「やまびこ」は所要時間50分のまま変わりない。つまりE2系や200系新幹線を使用しうる列車の宇都宮以南の最高速度は国鉄時代の1985年以来240km/hのまま変わっていないのだ。そのような中最高速度の引き上げはできるのだろうか。できるとすれば、高崎~新潟間のみになってしまうのではないだろうか。

とはいえ、高崎~新潟間でも限りはある。定期便に限れば2015年3月15日以降の昼間の「とき」は高崎以北で全駅停車となっており、最高速度を引き上げたところで所要時間の短縮は見込みにくい。所要時間が全線で2時間08分であるが、もし最高速度を引き上げても各駅停車タイプの「とき」が東京~新潟間で2時間を切ることはないだろう。

とはいえ、「とき」の中でも速い列車は速い。途中大宮にしか停まらないノンストップ型「とき」1往復は所要時間1時間37分、停車駅を需要の多い駅に絞り大宮~長岡間ノンストップながらもそれ以外の区間では全駅に停まる「とき」1往復は所要時間1時間52分で運行される。これらの「とき」は最高速度を275km/hに向上した際に前者は8分、後者は6分の短縮が見込まれ、東京~新潟間1時間30分切りも夢ではない。株主向け宣伝にはもってこいだが、昼間のほぼすべての定期便を含む毎時1本の「とき」は概ね高崎~新潟間各駅に停まるので、実質2時間運転ということに変わりはなさそうだ。

その他のメリットとしては、所要時間短縮に伴い上越新幹線新潟発初電の繰り下げや新潟着終電の繰り上げ(ともに東京発着時間は不変)が見込まれ、東京からも新潟への滞在時間が延長する見込みだ。大宮~高崎間も275km/hに引き上げれば北陸新幹線もスピードアップの恩恵を受けられ、最大3分程度ではあるが北陸新幹線金沢・富山発初電の繰り下げや金沢・富山着終電の繰り上げ(ともに東京発着時間は不変)が見込まれ、東京からも金沢・富山への滞在時間が延長する見込みだ。

3. 結び

今回の2017年上越新幹線の最高速度向上試験では、これまでのような新型車両や高速試験車による速度向上試験ではなく、E7系導入により上越新幹線を走行する全列車の275km/h運転対応化によるものである可能性が高い。240km/hから275km/hに引き上げるのは大きな工事とメンテナンスが必要であるが、大宮~高崎間77.3kmを240km/hから275km/hに引き上げるのと東京~大宮間の110km/hから130km/hに引き上げるのは短縮時間効果はほぼ同一で、しかも東京~大宮間の最高速度を引き上げた方が東北新幹線の所要時間短縮にもつながり、経済効果はより一層高くなる。

国鉄時代に東北新幹線を建設する交換条件として東京都北区と交わした誓約に赤羽線(埼京線)十条駅を地下化があるが、東北新幹線上野開業から30年以上経った今でも実現されておらず、なぜか高架化に話がすり替わっている。埼京線十条駅を国鉄時代の誓約通り地下化して、その代わり東北新幹線の最高速度を多少引き上げることをJR東日本は考えなかったのだろうか。今後どのようにJR東日本は東北・上越・北陸の各新幹線を運営していくのか見守ってゆきたい。