線内運転増発は品川延伸への架け橋か 東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道ダイヤ改正(2017年3月25日)

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東京メトロは2月9日、プレスリリースにて2017年3月25日に地下鉄南北線にてダイヤ改正を行うと公表した( http://www.tokyometro.jp/news/images_h/c2991319d057114726eaf10aaf1f5fce_1.pdf )。今回はこれについて見ていく。
同日実施の東急目黒線・都営三田線のダイヤ改正についてはこちら!

2017年3月4日ダイヤ改正まとめはこちら!

1. 南北線は大幅増便へ!

今回の2017年3月25日東京メトロダイヤ改正では、地下鉄南北線では大きな動きがあった。

まずは平日朝。朝7時台の市ヶ谷発日吉行きを赤羽岩淵始発に延長し、1本増発に成功した。1本程度の増発ならよくあることだが、今回の増発は平日夕ラッシュ時に多く行われている。白金高輪方面行きでは飯田橋基準で19時台に1本、21時台に3本増発され、特にオフピークの混雑緩和に寄与している。赤羽岩淵方面行きでは飯田橋基準で19時台に1本、20時台に1本、21時台に1本増発され、こちらも混雑緩和に寄与している。平日夕ラッシュ時は最大毎時12本で昼夕輸送力比(適正値60〜78%/推奨値66%~75%)は83.3%でやや夕ラッシュ時が混雑気味であることには変わりないが、それが18時台だけではなく19時台にも広がった形となったようだ。

また土休日の夕方も大幅な増発が行われた。これまで南北線は土休日は19時台から10分間隔での運行となっており混雑に拍車がかかっていたが、今回の増発で土休日19時台は昼間と同じ6分間隔、20時台~22時台は7分30秒間隔に運転間隔が短縮された。また23時台には鳩ヶ谷行きを1本増発し、赤羽岩淵~鳩ヶ谷間で終電の8分繰り下げを果たした。これにより他線同様土休日の夕方の利便性も向上した。




2. 線内運転増加で接続できない列車が増加へ

とはいえ東京メトロ南北線は白金高輪~目黒間では都営三田線と線路を共有し、目黒からは東急目黒線、赤羽岩淵からは埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線と直通運転をしている。東急目黒線は多少の増発(4本程度)があり地下鉄の直通も多少は増やしたが、南北線と比べると極めて小規模であり今回の増発とはギャップを感じる。

つまり、先程の増発は、実は他線と直通しない赤羽岩淵~白金高輪間の線内運転列車の増発が中心で、直通先では埼玉高速鉄道含め(土休日は19時台に2本、終電に1本は足したが)ほとんど増発していないのだ。そのため今回の増発では初終電くらいにしかなかった赤羽岩淵発着が平日・土休日共に19時台以降に概ね毎時2本程度(平日は王子神谷行き含む)に増発し、埼玉高速鉄道線方面へ利用する際に15分程度間隔があく時間帯が増えた。また白金高輪方面もこれまで土休日の夕方以降はほとんどの列車が東急目黒線直通で組まれていたが、今回の増発で白金高輪行きが増発したことにより乗り換えが必要となった。白金高輪では対面乗り換えで都営三田線から来た列車に乗り継げば目黒・東急目黒線方面まで行けるので利便性は実質向上したのであるが、平日・土休日では22時以降では白金高輪で対面接続しない白金高輪止まりの列車も増加し、深夜ではやや接続が悪化したケースも見られる。今回の増発は他線への影響は最小限にし、2016年10月21日に行われた都営三田線単独のダイヤ改正のように線内重視でダイヤ改正を行ったものと思われる。




3. 南北線内運転増加は品川延伸へのアピールか

とはいえ、両側とも他線と直通している東京メトロ南北線が線内で増発しているということはどういうことを意味しているのだろうか。確かに輸送量が伸びたともとれるが(それ以前に土休日夕方は明らかに本数不足だったのだが)、今回の線内重視のダイヤ改正を行った背景には、国土交通省の答申案( https://www.mlit.go.jp/common/001126948.pdf )による南北線品川延伸を見込んでいるのかもしれない。

この国土交通省の答申案(諮問198号)では、東急・京急による蒲蒲線設置やJR東日本による羽田空港アクセス線の新設、東京メトロ有楽町線の住吉延伸、埼玉高速鉄道岩槻・蓮田延伸とともに白金高輪~品川間の地下鉄建設が初めて提起されたのだ。本文を読むと「検討熟度が低く構想段階であるため、関係地方公共団体等において、事業主体を含めた事業計画について十分な検討が行われることを期待」と記載されており、まだまだ計画構想段階であるものの、リニア中央新幹線の始発駅となる品川駅と国会議事堂近くの永田町、東京ドームに近い後楽園、国際的なサッカー試合が行われる埼玉スタジアム21を擁する浦和美園が直結されることは政治的にも庶民的にも非常に有用である。

そしてこの計画の最大のメリットは、非常に経済的なのである。現在JR東海はリニア中央新幹線の建設を進めているが、2027年に品川~名古屋間を開業させ2038年に新大阪延伸まで目論んでいる。リニア中央新幹線は東京駅まで延伸することは地理的に可能な構造とはなっているものの、大深度地下30m以下での建設は1メートル掘るのに1億円かかるとも言われており、東京~品川間の7km掘るだけでも莫大な建設費がかかるほか、その建設費を回収するすべもない。リニア中央新幹線はEX-IC同様運賃一体料金型で、東京都区内は設定されない見込みなので、JR東日本としても東京延伸されたらリニア中央新幹線に乗るまでの在来線きっぷの売り上げが東京~品川分落ちるし、JR東海も品川と東京で料金に差をつけても建設費を回収するにはほど遠い。乗客からしても渋谷・新宿・池袋・総武線千葉方面へは品川からでもほとんど変わらないし、2015年3月14日に上野東京ラインが開業したことにより宇都宮線や高崎線、それに常磐線特急「ひたち」「ときわ」の多くが品川乗り入れするようになり、北陸新幹線の新大阪延伸が決まった今リニア中央新幹線の東京延伸のメリットはせいぜい東京ディズニーリゾートと東北新幹線乗り継ぎくらいしかない。それをするほどなら東京メトロないし東京都交通局が白金高輪~品川間を高々深度15mで2km掘った方がはるかに安上がりで短期間で出来上がり、地下鉄事業者の増収につながる。

また東京メトロ・東京都交通局にも品川延伸によるリニア中央新幹線との接続には言い分がある。現在東京メトロ南北線と都営三田線が直通する東急目黒線は、相鉄東急直通線として日吉~新横浜~西谷間の延伸計画があり、現在鋭意建設中である。しかし相鉄JR直通線含め難工事となっており、当初2019年に開業予定だったにも関わらず2023年春頃に後ろ倒しとなったのだ。この相鉄東急直通線は、相鉄側には都心直結というメリットがあるが東急及び地下鉄側には新横浜で東海道新幹線に乗り換えられるというメリットがあるが、2023年開業ではリニア中央新幹線の開業まで4年程度しかなく、その後の新大阪開業まで考えると明らかにメリットが薄まっている。東急としてはまだまだ計画を進めたいところだが、直通している南北線と三田線からすれば品川に延ばせば東海道新幹線ともリニア中央新幹線とも乗り換えられ、しかも需要増に直結することができるのだ。また2km程度の地下鉄であれば7年程度で着工から完成まで可能であり、2017年現在構想段階であったとしても2020年から着工すれば2027年のリニア名古屋開業に間に合わせることはできるし、リニア名古屋開業後に着工を決定しても2038年のリニア新大阪開業に間に合わせることができる。予定通り相鉄東急直通線が2019年に開業できていれば効果を十分に発揮できる期間を長く持てたが、リニアの起点が2011年に決定されたことによりその意義の一部が薄れてしまい、東京側からの魅力が無くなってしまったのは致し方なかろう。

とはいえ、地下鉄側にも懸念材料がある。それはリニア中央新幹線が東京駅に延伸することである。もしリニア東京延伸してしまったら、地下鉄の白金高輪~品川間延伸の効果が薄れてしまい、経済的にも二重投資となり地下鉄建設の中止および無期延期が濃厚となる。地下鉄品川延伸線が南北線のみの乗り入れとなるのか、都営浅草線から直通で行けるにもかかわらず三田線も乗り入れするのか不透明ではあるが、この地下鉄路線の建設のカギを担っているのは他でもないJR東海である。今後どのような展開になるのか注目したい。


4. 結び

東京メトロ南北線は1日平均輸送人員が51.9万人であり東京メトロ・都営地下鉄の中で一番輸送人員が少ない路線であるが、直通の増強によりこれまで需要拡大を図ってきた。しかし今回のダイヤ改正では直通ではなく南北線内で大きくテコ入れが行われ、利便性を向上させることに成功した。今後の延伸とダイヤ改正に期待したい。

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