初電繰り上げと急行増強で運転時間大幅拡大へ 小田急江ノ島線ダイヤ改正(2018年3月17日)

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小田急電鉄は2017年11月1日、プレスリリースにて2018年3月に代々木上原~登戸間の複々線化工事事業が完了することを受け、大幅なダイヤ改正を行うと公表した( 2018年3月、新ダイヤでの運行開始 )。また小田急電鉄は3月7日、プレスリリースにて江ノ島線の新ダイヤについて公表した( 新ダイヤに伴う、江ノ島線の運転について )。今回は第12弾として、小田急江ノ島線の朝を中心に見ていく。

2018年3月17日全国一斉ダイヤ改正まとめについてはこちら!

1. 平日朝ラッシュ時は急行増強

今回の2018年3月17日小田急電鉄ダイヤ改正では、下北沢方面の列車大幅増化により江ノ島線でも増発が行われる。

これまで江ノ島線発の新宿行きは平日朝ラッシュ時は藤沢発7時台に4本が運転され、全て経堂通過で新宿まで急行運転であったが、今回2018年3月ダイヤ改正にて藤沢発7時台を6本に増強の上、相模大野から快速急行に変更しスピードアップが行われることとなった。これにより藤沢から新宿までの所要時間が1時間18分から1時間08分に10分短縮されるが、そもそも急行停車駅で快速急行通過駅の長後や南林間に増発分まで停める必要があるのか、増発分は快速急行にしてさらなる所要時間短縮を図った方がよかったのではないかと思う人もいるのではないかという人もいるだろう。




しかし、小田急電鉄のプレスリリース掲載の時刻表を見ると、なんと藤沢発7時台の各駅停車が9本から6本に大減便する。江ノ島線では各駅停車は6両のみで、急行は現在残っている藤沢~片瀬江ノ島間で各駅に停まる一部の急行を除き10両で運転されている。そのため藤沢平日7時台発は13本から12本に減るものの、輸送力的には94両から96両へ2両分増強され、2.1%輸送力が増強される。各駅停車が急行に格上げされるので平均所要時間が短縮されるのは間違いないが、今回2018年3月ダイヤ改正の増発分が快速急行ではなく長後や南林間にも停車する急行としたのは、各駅停車の減便分の配慮であろう。

しかし急行通過駅となるそれ以外の駅では各駅停車の大幅減便により乗車チャンスが3割以上減っているのだ。確かに全ての各駅停車が大和で急行と接続するようになるし相模大野でも平日朝ラッシュ時に限れば小田原線からの快速急行と接続するので所要時間短縮にはなるのだが、利便性が低下するのは否めない。六会日大前など需要の多い駅は急行停車駅に追加すべきではないだろうか。

また、片瀬江ノ島発列車も藤沢平日7時台着が8本(藤沢まで通過運転の急行1本と各駅停車7本)から6本(全て各駅停車)に減便する。藤沢始発の各駅停車がなくなったことで運転間隔の均等化や藤沢駅でのスイッチバック中の間隔調整などはなくなり所要時間短縮が図られているが、そもそも急行が通過だった鵠沼海岸と本鵠沼はダメージが少ないが、藤沢7時台着の輸送力が52両から36両へと30.8%減少しており、藤沢以南でも平日朝ラッシュ時は明確な減便が行われている。藤沢~片瀬江ノ島間では有力な競合交通機関が少ないことから、選択と集中により藤沢以北で利用しやすいダイヤを組んだものと思われる。




2. 初電も繰り上げで新宿到着時刻繰り上げへ

また今回の2018年3月17日小田急電鉄ダイヤ改正では、江ノ島線で初電が繰り上げられる。

2017年現在は大和5時06分発各駅停車相模大野行きが一番列車であったが、今回のダイヤ改正で11分繰り上げられ、大和4時55分発各駅停車相模大野行きが一番列車となった。これにより相模大野でこれまで急行新宿行きに連絡していたが、今回のダイヤ改正より各駅停車新宿行き(新百合ヶ丘から急行)への連絡に変更となり、新宿着時刻が5時55分から5時48分に7分繰り上げられることとなった。この初電繰り上げにより、中央林間連絡東急田園都市線の接続で2017年までは中央林間5時16分発地下鉄半蔵門直通各駅停車押上行きへの連絡となっていたが、今回のダイヤ改正で田園都市線初電の中央林間5時04分発地下鉄半蔵門線直通各駅停車押上行きに連絡できるようになり、田園都市線経由での渋谷着時刻が6時09分着から5時54分着へ15分繰り上げられることとなった。ただ今回の江ノ島線内での初電繰り上げはどうやら新宿着時刻を遅くさせないための措置のようで、この初電繰り上げに対して代替措置がないことから次の列車までの間隔が30分空くこととなった。

なお、大和以南からの初電は片瀬江ノ島4時54分発各駅停車町田行きであったが、各駅停車相模大野行きに短縮されることとなり、藤沢以北で発時刻が1分ずつ繰り上げられることとなった。ただ、相模大野での連絡が急行新宿行きから快速急行新宿行きに変更となったため、新宿着時刻が6時17分着から6時10分着に繰り上げられることとなった。現在の藤沢から新宿へのJRの初電は藤沢5時04分発の東海道線普通東京行きを利用し、品川で山手線外回りに連絡して新宿に6時07分に到着するが、今回の小田急電鉄ダイヤ改正で小田急による藤沢から新宿への初電は藤沢5時05分に出発し相模大野で快速急行に接続することにより、新宿6時10分に到着することとなり、ほぼ互角となることとなった。

一方で平日の下り各駅停車は片瀬江ノ島朝6時台発が1本削減され、片瀬江ノ島発の2本が藤沢発に短縮されることとなり、早朝に運転される列車も大幅に削減され朝5時台〜6時台前半まで20分間隔での運転となっている。これは、片瀬江ノ島〜藤沢間でそこそこ近隣を走行している江ノ電が朝5時台は概ね24分間隔での運転となっていることから、小田急側も10分間隔で列車を運転する必要はないと判断したのであろう。また上りではの急行一番列車が相模大野5時26分発急行藤沢行きから相模大野5時32分発急行藤沢行きに6分繰り下げられることとなった。
なお、下りの初電も一部で繰り上げられている。藤沢以北では初電は相模大野4時55分発各駅停車片瀬江ノ島行きのまま変更ないが、藤沢以南で時刻が2分ずつ繰り上げられることとなり、藤沢5時33分発から5時31分発、片瀬江ノ島5時40分着から5時38分着に2分繰り上げられることとなった。




3. 急行の運転時間拡大で新宿直通強化へ

また今回のダイヤ改正では急行運転時間の拡大も実施されている。

これまで平日の江ノ島線急行の初列車は藤沢6時01分発急行新宿行きであったが、今回のダイヤ改正より大幅な時刻繰り上げと種別格上げを実施し、大和5時34分発急行新宿行き(相模大野から快速急行)と片瀬江ノ島5時30分発急行新宿行き(相模大野から快速急行)となり、大和と南林間、中央林間では42分~43分、藤沢と湘南台、長後では21分~20分急行の初列車の時刻が繰り上げられることとなり、利便性が大幅に向上した。とはいえ中央林間で見ていくと田園都市線の急行初列車は中央林間5時28分発地下鉄半蔵門線直通急行押上行きとなっており、小田急の急行が中央林間5時40分発であることからまだわずかに及ばないようだ。

また土休日は2017年現在では大和6時18分発急行新宿行きと片瀬江ノ島6時04分発赤●急行町田行きが上り急行の初列車であったが、今回のダイヤ改正より片瀬江ノ島5時30分発快速急行新宿行きが設定されることとなり、大和基準で25分、藤沢基準で35分急行の初列車が繰り上げられ、種別が格上げされたことで速達性も向上し、新宿にこれまでの江ノ島線急行の初列車である大和始発急行新宿行きと比べ30分早い6時37分に到着できるようになった。なお、今回のダイヤ改正で土休日は大和始発の急行が全廃し、土休日の江ノ島線直通快速急行及び急行は全て藤沢または片瀬江ノ島発着となったほか、本鵠沼・鵠沼海岸に停車する6両編成の赤●急行も廃止され、急行は全て本鵠沼・鵠沼海岸を通過することとなった。

さらに10両編成の送り込みのため、下りでも急行の初列車が繰り上げられる。2017年現在では相模大野6時09分発急行藤沢行きが初列車であったが、今回のダイヤ改正で相模大野5時48分発急行藤沢行きが増発され、21分繰り上げられることとなった。また新宿始発の江ノ島線直通列車の設定時間帯も拡大し、2017年現在は土休日は新宿7時31分発急行藤沢行きが新宿からの直通初列車であったが、今回のダイヤ改正で新宿6時41分発急行藤沢行きが設定され、新宿発の江ノ島線直通列車の設定時間帯が50分前倒しされることとなった。また、かつては相模大野で小田原線方面列車と分割・併合することにより急行小田原・片瀬江ノ島行きなども運転されていたが、今日では10両固定化により新宿からの江ノ島線直通列車は原則藤沢発着で運転され、片瀬江ノ島発着は平日のごく少数のみで土休日は特急ロマンスカー「えのしま」を除き全廃していた。しかし今回のダイヤ改正では土休日の片瀬江ノ島乗り入れが大幅に拡大したことで、新宿~片瀬江ノ島間直通快速急行が多数設定されることとなった。これにより土休日では新宿からの江ノ島線直通列車の2番列車となる新宿7時03分発快速急行片瀬江ノ島行きから20分間隔で片瀬江ノ島乗り入れの快速急行が設定されることとなった。




4. 競合交通機関との兼ね合いはいかに

ここからは小田急江ノ島線と競合関係になる路線について見ていく。

まずは藤沢で接続するJR東日本の東海道線と湘南新宿ライン。東海道線東京・上野方面は藤沢発7時台に18本運転され、湘南ライナーも3本運転されており、利便性の点では太刀打ちできない。しかし湘南新宿ラインは3本しか運転されておらず、戸塚乗り換えを含めても6本しかない。小田急電鉄では今回の2018年3月ダイヤ改正で急行(相模大野から快速急行)を平日朝ラッシュ時は全て藤沢始発で運転することから、着席通勤ができるものと考えられる。ただ平日朝ラッシュ時の新宿までの所要時間は湘南新宿ラインが59~62分に対し小田急は68分かかっており、80分以上かかる現状よりは格段に所要時間が短縮されるとはいえ相模大野まで急行運転ということもあり遠回りの湘南新宿ラインよりやや遅い。運賃面ではJRが電車特定区間外ということもあり小田急が圧倒的優位であるが、対新宿では小田急が僅かに有利というくらいなのだろう。




次いで中央林間で接続する東急田園都市線。小田急は新宿発着で東急は渋谷発着であるため需要がある程度分散するようにも見えるが、小田急としては渋谷に行くのであれば下北沢乗り換えで京王井の頭線を利用してもらった方が収入が増えるわけで、今回の2018年3月ダイヤ改正で利用の巻き返しを図りたいところだ。さすがに中央林間から乗る需要は変えられないが、南林間以南から東急田園都市線への流出を防げれば良いのだろう。東急田園都市線については平日朝ラッシュ時は準急のほぼ全てが長津田始発ということもあり中央林間始発列車のほとんどが各駅停車だ。つまり速達で渋谷に向かうためには長津田で乗り換える必要がある。しかし小田急なら快速急行・急行で下北沢まで一直線だ。小田急の混雑が複々線化完了による今回の2018年3月ダイヤ改正で150%程度にまで緩和される見込みであることから、東急田園都市線に流出していた一部の利用客が小田急江ノ島線に流れる可能性は十分ある。

最後に2020年3月開業予定の相鉄JR直通線について。相鉄JR直通線は平日朝ラッシュ時は毎時4本、それ以外の時間帯は毎時2~3本の運転を予定している。予定では大和や湘南台で接続することになるが、相鉄JR直通線が相鉄本線といずみ野線双方に乗り入れるとするならば直通列車はさらに減ることとなり、直通需要でいえば小田急が圧倒的優位だ。また相鉄JR直通線は羽沢横浜国大より東海道貨物線を走行するため藤沢からの湘南新宿ライン以上に遠回りの運転となる。新宿に向かうならなおさらだ。また運賃面でも羽沢横浜国大が電車特定期間に含まれるか不透明であり、含まれなかった場合ただでさえ高いJR線の運賃がさらに高くなる。ともなれば、相鉄JR直通線対策としては今回2018年3月ダイヤ改正の所要時間短縮と大増発で十分だと思われ、小田急電鉄に軍配が上がりそうだ。


5. 結び

 今回2018年3月小田急電鉄ダイヤ改正では、複々線化の完成に伴い江ノ島線でも新宿直通列車の大幅増発や急行運転時間帯の大幅拡大により輸送力増強が図られ、初電も繰り上げられる。一方で各駅停車での減便も実施されている。2020年3月には大和乗り換えで利用できる相鉄JR直通線の開業も控える中、今後どのようなダイヤを組むのか注目したい。

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