黒磯駅完全直流化で新白河でも系統分割へ! JR東日本仙台支社ダイヤ改正(2017年10月14日)

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JR東日本仙台支社は7月7日、プレスリリースにて2017年10月14日にダイヤ改正を行うと公表した( 2017年10月ダイヤ改正について )。今回はこのうち東北本線について見ていく。

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1. 東北本線黒磯完全直流化

近年3月以外にもダイヤ改正を行うJR東日本仙台支社であるが、今回の2017年10月14日のJR東日本ダイヤ改正では、常磐線のみならず東北本線でもダイヤ改正が行われることとなった。

常磐線の場合には中距離電車・特急ともに上野東京ライン経由で品川までの直通増加による利便性向上が図られたが、10月14日にダイヤ改正を行う最大の理由は東北本線黒磯駅の完全直流化による交流専用電車の乗り入れ消滅と交直流電車の用意による水戸線・常磐線の車両運用繰りの変化である。常磐線のダイヤ改正はダイヤ的には大規模ではあるが東北本線黒磯駅の完全直流化のついでであり、設備投資的には圧倒的に東北本線に割いていることは言うまでもないだろう。




ではなぜ今になって東北本線黒磯駅を完全直流化するに至ったのであろうか。1つはメンテナンスを簡略化するため。今まで黒磯駅は駅構内で直流と交流を切り替えることができたが、今回2017年10月14日ダイヤ改正以降は、高久寄りにデッドセクションを設けることにより黒磯駅の信号を含む大掛かりな交直流切り替え装置を撤去し、設備を簡素化する。これにより宇都宮線は黒磯駅までATOSを導入できることとなり、遅延情報などの把握もできやすくなる。

もう1つはJR貨物が交直流対応の機関車を増やせたこと。国鉄時代より東北本線では黒磯以南では直流機関車、黒磯以北では交流機関車で走らせており、黒磯駅構内で直流と交流を切り替えて機関車を交換することにより南北を直通していた。しかしそれでは関東~北海道へ貨物輸送をするのは手間であることから、1997年より交直流対応機関車EH500形機関車を新製し続けることで機関車交換を減らした。

最後のとどめとなったのは2016年3月26日の北海道新幹線開業による青函トンネルの電圧変更。これまでは東北地方のJR線と同じ20,000Vであったが、新幹線の電圧に合わせ25,000Vに上がったことから、新しく2つの電圧に耐えうる機関車を新製しなくてはならなくなった。そこで製造されたのがEH800形機関車で、青函トンネル専用に運用されることとなった。そのためこれまで青函トンネルで使用されていたED79形機関車は廃車に、EH500形機関車は運用区間を青森以南にとどめることとなった。このEH500形の運用エリアが狭まったことで東北本線内でのEH500形使用率が上がり、直流専用機関車も交流専用機関車も東北本線から淘汰できたことにより、黒磯駅での機関車付け替えが不要となり、黒磯駅構内での交流設備がJR貨物的には不要となった。そのため今回のダイヤ改正によってデッドセクションを動かすことができるようになったのであろう。




2. 東北本線は新白河でも系統分離

JR貨物的には黒磯駅構内の交流設備は無くてもよくなったが、旅客担当のJR東日本は黒磯駅を境に南側はE231系や205系などの直流専用電車、北側はE721系や701系などの交流専用電車を運用している。現在は発車番線によって棲み分けされているが、黒磯駅構内が完全直流化されればもちろん交流専用電車は乗り入れられなくなる。

そこでJR東日本がとったのは、黒磯~新白河間の運行系統を分離すること。新白河以北であればE721系や701系などの交流専用電車でも運行ができるため大幅な改造も必要ない。そして黒磯~新白河間のみであれば数本交直流電車を製造するだけで済むので車両製造コストも抑えられる。そのため黒磯以南と新白河以北の県境を跨ぐ東北新幹線を避ける利用者には乗り換え回数を1回増やすこととなったが、栃木県内のみでみれば従来より黒磯乗り換えであったため利便性が大きく低下することもないし、福島県内に関しても最南端の白坂を除いて郡山から直通で行けることは変わりない。そのため広域輸送を東北新幹線に譲った地域輸送重視の在来線である東北本線としては、地元住民の利便性を損なうことはあまりないのではないだろうか。




2.1. 車両はE531系とキハ110系列を使用

今回の東北本線新白河での系統分割で衝撃的だったのは、黒磯~新白河間のデッドセクションを含む区間に、交直流電車のE531系だけではなく、気動車のキハ110系列を使用することだ。

従来交流専用電車であるE721系や701系が主に2両編成や4両編成で黒磯まで乗り入れていたが、E531系ともなると最小でも5両編成となり、県境区間ゆえ空気輸送となることは明らかだ。そのため鉄道時刻表ニュースでは以前の記事で少数派のE501系が東北本線に転属し、4両編成または2両編成に短縮されるのではないかという予測記事を出したが、実際にはプレスリリースの通りE531系5両編成を東北本線に投入することとなった。これは水戸線や常磐線と共通運用化するためではないかと考えられる。耐寒工事については2015年以降に導入された3000番台に装備されているが、これは2016年3月25日まで運用していた415系を置き換えるためにいわきやいわき以北にも乗り入れるためであったが、それが東北本線にも生かされる形となった。

そしてJR東日本なりにも最小編成単位が5両のE531系を東北本線黒磯~新白河間で使用することにより空気輸送が増え、エネルギーコストが抑えられないことは目に見えていた。

そこでJR東日本が打った策が短編成を作り出すために直流電化区間でも走行可能な気動車を投入することだ。黒磯~新白河間周辺の気動車は、2017年初頭には宝積寺で接続する烏山線のキハ40系列、安積永盛で接続する水郡線のキハ130系列、そして郡山で接続する磐越東線のキハ110系列だ。このうち烏山線については2017年3月4日ダイヤ改正にて蓄電池式直流電車EV-E301系に統一され、全線非電化なのに全列車電車化された。水郡線については安積永盛で東北本線と接続しているものの、臨時列車を含めて1日11往復しかないこと、主に昼間に留置されるのは水戸側で郡山ではすぐに折り返して発車してしまうため気動車を確保できないことなどが挙げられる。磐越東線であれば主に2両以上で運行されること、郡山に車両を置いているのでラッシュ時にしか使用しなかった車両を昼間に有効活用できる。そのため、朝ラッシュ時に磐越東線に用いられるキハ110系列が東北本線黒磯~新白河間でも使用するようになったのであろう。




2.2. 黒磯~新白河間は最大2運用で2往復減便

ここで、交直流電車E531系と気動車キハ110系列がどのようにして運用されているのか見ていく。

まずは朝。白河発黒磯行き初電から始まるが、この初電と黒磯発終電のみ新白河発着ではなく白河発着となり、白河発黒磯行きの2本目の電車は新白河で系統分割されたため、白河発新白河行きという1駅運転電車(交流専用車)ができた。朝の初電から9時31分までの上下5往復はE531系交直流電車による運行で、輸送力(=空気輸送量)は増加する。この時間帯はE531系交直流電車の2運用のみで、気動車の運用はない。2運用で済ますため、朝の時間帯に1往復が削減されている。

昼間は9時31分から15時頃まで気動車を上下5往復を運転する。この時間帯は気動車のみの運行で、キハ110系列が使用される。1運用のみで、同じ編成がひたすら黒磯~新白河間を折り返すこととなる。この時間帯も1運用での運行とするため1往復が削減された。そのため新白河発郡山方面行き交流専用電車のうち、新白河で接続を受けない列車が昼間にも誕生することとなった。
夜はE531系交直流電車とキハ110系気動車が混在することとなった。電車は上下4往復、気動車は上下3往復となり、気動車を2運用確保できないためにE531系を1運用使用しているようにとれる。

総じて、ダイヤ改正前は19往復であったが、ダイヤ改正後は交直流車9往復、気動車8往復の合計17往復となった。

キハ110系列については、黒磯~新白河間の輸送密度が2,253人/日(2016年度)であり、JR西日本の城端線(2,776人/日)や氷見線(2,621人/日)に近い。両線は昼間はキハ40系列2両編成で運行されていることから、東北本線黒磯~新白河間の気動車も2両編成での運行になるのではないかと思われる。

2両編成であれば、烏山線や若松線(筑豊本線)のような蓄電池車を入れて、男鹿線のEV-E801系を導入して高久〜新白河間で充電運行して黒磯〜高久間で蓄電池運行すればいいのではないかという意見もあるかもしれないが、もしそれで済むならば使いもしないデッドセクションを設けること自体がJR東日本として背任行為に当たり、経営陣の責任を取ることになりかねない。

実際仙石東北ラインが出来るときも、石巻貨物駅までの最短ルートとなるはずだったのに、東北本線と仙石線の間にデッドセクションを設けず、新線付け替えにより移設された東名や野蒜周辺では機関車の乗り入れができず、最短経路で運行できなくなっている。JR東日本だってアボイダブルコストしかとれないJR貨物のために、新規で重厚な機関車対応とはしたくはない。とはいえ、東北本線は既に貨物列車含め機関車走行が多い路線。特に関東〜北海道はJR貨物の主力でもあり、JR東日本もカシオペア紀行のような臨時列車を運行する可能性はある。そのようなことから、交直流電車を定期列車として走らせてデッドセクションを設ける口実としたのであろう。


3. 結び

今回2017年10月14日ダイヤ改正では、東北本線の歴史に新たな1ページを添えるビッグイベントである黒磯駅構内完全直流化とデッドセクションの移設の進捗に伴い、車両の動力を変更して系統分割するという大掛かりなものとなった。今後どのように影響していくのか、注目していきたい。

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