LRT化で大増発と運転時間拡大へ! JR西日本城端線・氷見線LRT化に伴うダイヤ改正予測(2023年以降予定)

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JR西日本は2020年1月29日、プレスリリースにて城端線と氷見線についてLRT化など新しい交通体系の検討を進めていくこととした( 城端線・氷見線の未来に向けた検討着手について )。今回はこれから、JR西日本城端線・氷見線をLRT化した際に行うダイヤ改正について予測していく。

城端線・氷見線あいの風とやま鉄道移管に伴うダイヤ改正予測はこちら!

1. LRT化で経営分離へ

今回の城端線及び氷見線の新しい交通体系の検討の結果次第では、LRT化を行うにあたりダイヤ改正を行う可能性が極めて高い。

そもそもなぜ2020年の今になってこの話題が出たのだろうか。城端線や氷見線ではJR西日本発足以降キハ40系列を使用し続けており、少なく見積もっても車齢37年は経過しているし、一部の車両は42年経過しているほどだ。日本全国(東京メトロとJR東海を除く)では在来線車両を概ね40年程度で新車に置き換えて廃車にしてるが、関西私鉄の多くでは50年程度使うことも少なくない。これは電車の新製には1両当たり1億円では済まないことが多く(321系は1億円切ったけどね)、費用負担が大きいためである。

実際近畿日本鉄道では車両老朽置き換えの費用負担をかわそうと伊賀線、養老線、内部線、八王子線を経営分離しており、実際に伊賀線を継承した伊賀鉄道では東急から1000系を、養老線を継承した養老鉄道では東急から7700系を譲り受けて運転している。

そう考えると、今回の城端線と氷見線のLRT転換もJR西日本が自社で車両置き換えをしないための策で、手切り金を払うことで将来にわたる赤字負担をなくそうとしているのではないだろうか




城端線と氷見線ではキハ40系列一般車を合わせて23両配置しており、うち18両を定期運用で使用している。高岡市と氷見市の人口減少が激しく利用が減っていることから氷見線の運用両数を2両減らせるとしてもこのまま車両更新すると21両を配備しなくてはならない。もし日本最閑散区間を含む芸備線備中神代~備後落合間を廃止してもキハ120形2両しか捻出できず、しかもおそらく姫新線のキハ40系列4両のうち2両を置き換えて終了であるため、他線区から都合のよい中古車が入るとも思えない。

またJR西日本が普通気動車を2009年のキハ127形の導入を最後に10年以上行っていないことを考えると、おそらく自治体の資金援助なしで行うということは考えていない。

岡山市が吉備線のLRT化に対して2018年に前向きになったのも運行するキハ40系列の車両置き換えの費用負担をJR西日本が岡山市に求めた可能性が高く、どうせ費用を負担するならLRT化した方が得だと考えた可能性がある。

そもそも今回話し合いがあったばかりであり、いつごろまでに再編したものが出来上がるのかは時期は決まっていない。ただ富山港線が富山県の連続立体交差化事業費用を抑えられるという理由で2003年の提案から200年の開業までわずか3年で済んだことを考えると、最速で2023年には何らかの形でLRT化されていてもおかしくはない。2023年3月ダイヤ改正では城端線新高岡を通る北陸新幹線が敦賀まで延伸し新高岡へのアクセスは改善する。そう考えると北陸新幹線敦賀開業時に何か動きがあってもおかしくはなさそうだ。




地方ローカル線と化していた富山港線の2006年のLRT化成功の秘訣は3つあり、

  • 小編成化に伴う列車運転本数の大幅拡大と運転時間帯の拡大
  • 停留場増設による駅間間隔短縮
  • 並走するバスを廃止し主要駅からフィーダーバス化

となっている。これにより富山港線では2004年の輸送密度が1,900人/日・往復程度であったが、2015年には3,500人/日・往復程度にまで増やした。

また富山港線開業直後の2006年より行ったJR西日本高山本線の増発社会実験では、車両の必要な平日朝夕ラッシュ時の利用は増えたものの昼間の利用は運転本数を毎時1本から毎時2本に増やしても僅かしか伸びず、結局2011年3月12日ダイヤ改正で昼間は概ね毎時1本に戻ってしまった。JR西日本は昼間の列車増発は儲からないことは知っているので、やりたくないのだ。そう考えると、JR西日本の想定では気動車の増発ではなく、LRT化を推したいのだろう。

さらに富山港線のLRT化と異なるのは、富山港線はそもそも直流電化していたため電圧を下げれば路面電車を運行できたが、城端線や氷見線は非電化路線のためLRT化するには海外で導入のある気動車の路面電車を導入するか電化しなければならないこと、また富山港線は富山市内のみの運転だったため競合するバス路線が多かったが城端線や氷見線は都市間を運転しているためそもそも並走するバスが高岡市内区間を除いて少ない。そう考えると、伸びしろは少ないと言わざるを得ない。

もし城端線と氷見線がLRT化すれば富山港線同様JR西日本から経営分離するのは必須で、もし経営分離すれば富山県内のJR在来線は高山本線のみになる。富山駅にはJR東海キハ85形特急型気動車が特急「ワイドビューひだ」として乗り入れているので、いっそうのこと高山本線を全線JR東海に移管しJR東海の日本海側進出を果たし、高山本線を全列車JR東海車で統一しJR西日本キハ120形12両を中国地方に転属させキハ40系列の一部を廃車し、ついでに1984年以前から計画されている高山本線電化計画を全線直流でやってしまい、最強のJR西日本及びJR東海の経営合理化策になる気もするのだが。

それはともかく、そもそも城端線や氷見線がLRT化は本当に現実的なものなのか、見ていこう。




2. 氷見線のLRT化で万葉線と直通運転し富山港線並みの運転本数拡大へ

今回の氷見線のLRT化に伴うダイヤ改正では、どのようなダイヤを組むのだろうか。

そもそも2018年度の氷見線の輸送密度は全線平均で2,552人/日・往復となっている。氷見線の単独駅で最も乗車人員が多いのは高岡市中心部に位置する越中中川、2番目は終点の氷見であることから、おそらく隣駅間輸送密度は全線のどの区間をとっても3,000人/日・往復程度が上限でもし国鉄時代であれば第三次特定地方交通線に指定され各都道府県がこぞって第三セクター化に乗り出すレベルの輸送量となっている。

この輸送量であることから、2020年現在氷見線では平日朝ラッシュ時に3両運転を行っているものの、残りの時間帯は概ね2両以下(うち半数ほど1両編成)での運転となっている。また営業距離は16.5kmで、万葉線の12.9kmよりやや長い程度だ。さらに全列車が高岡~氷見間で折り返し運転を実施しており、他線との直通運転は行っていない。

また氷見線高岡~能町間と万葉線高岡駅前~新能町・米島口間はほぼ似たようなところを通っているほか、万葉線も氷見線と同じ狭軌の1,067mmなので、LRT化に伴い富山港線同様600V直流電化した氷見線を万葉線に直通させることは可能だ。そう考えると、米島口より先氷見線との交点付近で分岐させて運転させることができる。

富山港線でもLRT化に伴う富山ライトレール移管に伴い2か月運休して経路変更工事を行っていることから、LRT化に伴い経路を変更する可能性は十分にあり得るし、すでにある万葉線を活用できるのでなおさらだ。途中の越中中川と能町は廃駅になるが、それぞれ広小路と新能町が代替してくれるので影響は最小限で済む。もしこの経路変更が行われれば、氷見線16.9kのうち4.4kmは整備不要となるほか、10か所以上の踏切を除却できる。

また氷見駅は氷見市街地の南の外れにあり、氷見中央バス停まで1.3kmも離れている。そう考えると、LRT化に際し氷見市内でも併用軌道の路線を敷設し、氷見市中心部まで直接アクセスできるようになればさらに利用が伸びるのではないだろうか。

このことから、氷見線のLRT化は万葉線と直通運転を行うことで導入コストを最小限に抑えることができる

ではダイヤはどうなるのだろうか。

万葉線MLRV1000形が定員80人であることを考えると、昼間に1本の列車で運べる輸送力は2,000人/日・往復であると考えることができ、氷見線の隣駅間輸送密度が最大で3,000人/日・往復の1.5倍の4,500人/日・往復であるとすれば昼間は毎時3本、平日夕ラッシュ時は毎時4本、平日朝ラッシュ時は毎時6本あれば運べそうではある。そう考えると、平日朝ラッシュ時は10~15分間隔、その他の時間帯は15分間隔での運転ができそうだ。ただ、昼間は高岡市中心部区間で万葉線と合わせて毎時8本の7分30秒間隔でなくても地域輸送性が保てるため、万葉線と氷見線それぞれで毎時3本ずつ20分間隔の運転になってもおかしくはなさそうだ。

また平日運転の米島口7時40分発高岡駅行きと高岡駅8時10分発米島口行きは氷見線氷見発着に移してしまえばよく、万葉線としての編成数を1本減らすことができる。

これだけでも平日朝ラッシュ時の30分間隔、それ以外の時間帯の60分間隔での運転の2020年時点と比べても3倍以上の運転本数を確保することができ、氷見線の利便性は大幅に向上しそうだ。




なお10分間隔で運転するためには氷見線区間で駅数を増やさない場合は3~4km間隔、停留場を増設する場合2~3km間隔で交換設備を設ける必要がある。停留場を増設する場合には交換設備を増強する必要がありそうだが、増やさない場合は島尾に交換設備を設ければ済んでしまう。非常にコストパフォーマンスが良いのだ。

なお氷見線が高岡駅前~米島口で万葉線と直通運転を行うと考えると、万葉線と一体運営とする可能性が高く、運賃も万葉線のものを使う可能性がある。

この運営移管により初乗りは3kmまで150円から2kmまで200円に値上げするほか、2020年現在高岡~氷見間は330円、高岡市中心部の越中中川~氷見間は240円で利用できるが万葉線の運賃体系に合わせるとともに400円に値上げしかねない。また通勤定期1か月でも9,900円と7,260円から14,400円に大幅に値上げする。ちなみに万葉線では8kmを超えると上限の400円になるが、JR西日本の地方交通線は8kmの利用で210円となり、ほぼ倍になる(幹線だったらちょうど2倍であったし、定期券は割引率が下がるので2倍を超えるのだが)。

富山港線は2004年の輸送密度が1,900人/日・往復程度であったが、3,500人/日・往復程度にまで増やした。とはいえ富山港線は全線富山市内であるが、城端線や氷見線は高岡市外にも路線を伸ばしており通勤通学を除く生活圏にしてはやや広い。そう考えると、富山港線のように80%増は難しいかもしえれないが、50%増程度なら見込めるのではないだろうか。




3. 城端線のLRT化で富山港線以上の運転本数拡大へ

では次に今回の城端線のLRT化に伴うダイヤ改正では、どのようなダイヤを組むのだろうか。

そもそも2018年度の城端線の輸送密度は全線平均で2,899人/日・往復となっているが、城端線単独駅で一番乗降客数が多いのは砺波で、次いで戸出、福野、福光の順となっており、新高岡~戸出間に限れば輸送密度6,000人/日・往復程度いるものと思われ(戸出~砺波間も輸送密度4,000人/日・往復程度いるものと思われる)、国鉄末期にバス転換が良いとされた特定地方交通線から除外するレベルを維持しているということになる。

このため城端線では平日朝ラッシュ時のみならず平日夕ラッシュ時も3両での運転が頻繁に行われている。昼間に1往復1両での運転が行われているのだが、名目上1両ワンマン運転を行っていることを示したいためだけの列車でありほぼ終日に渡って2両以上で運転している。

城端線は全長が29.9kmと既にLRT化を提案している吉備線より長く、最高速度が85km/hから60km/hに引き下げ停留場の数を増やすと所要時間が大きく伸びる。また平日は1日2本、土曜日は1日1本富山乗り入れ列車を運転しており、LRT化した場合系統分離が必須になるため城端線から富山駅への利用で朝ラッシュ時も乗り換えが必要となること、あいの風とやま鉄道ではJR西日本が所有するキハ40系列による運転の城端線直通列車を平日や土曜日に残すことで521系の投入本数を減らしていたが、城端線直通列車を系統分離すると自前で車両を導入しなくてはならなくなることから、少なく見積もっても521系2両編成2本を追加投入しなくてはならなくなる。そう考えると、城端線のLRT化は氷見線のLRT化と比べるとデメリットが多く、あまり良いとは思えない。




しかも富山~砺波以南の城端線沿線には平日1日4往復、土休日1日2往復の富山地方鉄道バスの特急バスを運行しており、富山直通を全廃するのはやや危険であるし、所要時間を延ばしたら特急バスに客を取られてしまう。

また万葉線高岡駅停留場が2014年3月29日ダイヤ改正で駅ビルの中に移転したが、南側へ線路を延ばせるようには作られていない。つまり万葉線や氷見線の新高岡乗り入れは城端線をLRT化してもできず、北陸新幹線からの利便性向上もあまり図れない。

そう考えると、氷見線はLRT化する可能性がかなり高いが、城端線は氷見線と比べるとLRT化する可能性が低そうだ。




では城端線をLRT化したらダイヤはどうなるのだろうか。

昼間にLRT毎時1本で運べる輸送力は2,000人/日・往復であると考えると、城端線の隣駅間輸送密度が最大で6,000人/日・往復の1.5倍の9,000人/日・往復であるとすれば昼間は毎時5本、平日夕ラッシュ時は毎時7本、平日朝ラッシュ時は毎時10本あれば運べそうではある。そう考えると、昼間は15分間隔では足りず10~12分間隔、平日夕ラッシュ時も7分30秒~8分30秒間隔、平日朝ラッシュ時に至っては5~6分間隔での運転が必要ということになる。もちろん線区間この運転本数が必要なわけではなく、福光~城端間はは平日朝ラッシュ時を除いて毎時2本あれば足りてしまうので、砺波発着や福光発着の区間運転を終日設定すべきだし平日朝ラッシュ時に限っては戸出始発高岡行きを設定してもいいのかもしれないが、それでも必要な編成数が多くなるのは明らかだ。

しかも5分~6分間隔で列車を運転するには1km~1.5km毎に列車交換設備を設けなくてはならず、かなり費用が掛かる。というかそもそも駅数も多いので、ホームの低床化だけでも氷見線より整備費用が掛かってしまう。

5連接車のような30m級の車両を城端線専用に導入すれば平日朝ラッシュ時も10分間隔での運転で済むので、列車交換設備を簡素化することができそうではあるが、そもそも城端線専用の設備、城端線専用の車両を導入してわざわざ富山への直通列車を切って所要時間を大幅に伸ばす必要があるのだろうか。

しかも城端線がLRT化する場合には、万葉線や氷見線への乗り入れができないことから、全線非電化のままLRT化したっていいし、万葉線や氷見線と別運営でもいい。

えちぜん鉄道や北陸鉄道を目指すのであれば、終日2両編成での運転にして、平日朝ラッシュ時のみ毎時3本、それ以外は赤字覚悟で毎時2本の運転に終始させた方がいい気がする。そうすれば電化工事もいらないし、ホーム低床化工事もいらないし、交換設備の増強もいらないし、富山直通列車を残すこともできる。

その新型車両をJR西日本キハ127形のような普通気動車にするのか、JR東日本GV-E400形を導入するのかは新会社や自治体判断にはなると思うのだが、そもそもLRT化するメリットが余りにも少なすぎる。

そう考えると、今回の提案の趣旨は経営路線の切り離しであり、その手段としてLRTを挙げたということなのだろう。


4. 結び

今回の城端線及び氷見線のLRT化に伴うダイヤ改正では、運転本数の増加が見込まれそうだ。

氷見線では万葉線の軌道を活用して利便性の向上や運営合理化を図ることができるが、高岡駅の構造上南側への直通運転はできず城端線のLRT化の意味は低い。

今後城端線と氷見線がどのように存続していくのか、見守ってゆきたい。

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