常磐線一部復旧 JR東日本仙台支社ダイヤ改正(2016年12月10日)

 391回閲覧

JR東日本仙台支社では本年12月10日に常磐線相馬~浜吉田間の復旧により増発を伴うダイヤ改正を行うと9月29日に公表した( https://jr-sendai.com/upload-images/2016/09/20160929.pdf )。今回はこれについて見ていく。

1.地元の災害復興計画で遅れる常磐線復旧

常磐線の不通区間は、原発事故によるものもあるが、今回再開する相馬~浜吉田間はそれとは異なる。沿線の新地町(新地駅)と山元町(坂元駅、山下駅)ではそれぞれ災害復興計画が策定されており、新地町の復興計画( http://www.shinchi-town.jp/uploaded/attachment/1110.pdf )では常磐線を内陸側へ移設し、新地駅を以前より役場寄りに移転するとしている。また坂元町の災害復興計画( http://www.town.yamamoto.miyagi.jp/uploaded/attachment/1079.pdf )では新地町同様常磐線の内陸移設があるほか、点在する農家なども幹線道路沿いに集約させるとしており、当てはまらない農家では水道の復旧工事を公費では行わないとしているほどである。

そこまで強い計画の裏には、常磐線を含め津波の被害に遭ったためである。これは石巻線女川駅、仙石線東名駅、野蒜駅でも行われており、同様の理由で周辺の区間と比べ復旧が遅くなっていた。特に仙石線の場合は短い目で見れば仙台と石巻の間の輸送がバス頼りになってしまったのは言うまでもないが、長い目で見れば今後被災するリスクが低い方がよいということもできる。




2.復旧後も運行本数維持

今回の復旧後のダイヤを見てみると、運行本数としては仙石線復旧時同様震災前と変わらない水準で普通列車が確保されている。ただし、震災前は特急「スーパーひたち」が4往復あったことを考えると、その分は減少したと言わざるを得ない。また、震災前に示された特急運行計画では、現状の「ひたち」「ときわ」に相当する列車は現状通りいわきまでの運行となり、いわき~仙台間の特急は系統分離されるとされているが、その列車の運行の見通しはまだ立っていない。

常磐線普通列車運行本数 2011年2月現在下り(仙台方面) 2011年2月現在上り(原ノ町方面) 2016年12月予定下り(仙台方面) 2016年12月予定上り(原ノ町方面)
岩沼~山下間 30本 28本 30本 28本
山下~新地間 24本 23本 25本 24本
新地~原ノ町間 23本 22本 23本 22本

また、今回移設された3駅は全て高架駅となっており、移設前は3駅とも交換可能であったが、新地駅と山下駅は8両対応で交換可能、坂元駅は6両対応で棒線駅となる見込みである。震災前に運行していたE651系特急スーパーひたちの基本編成の7両に合わせて設計されたものだと考えられるが、もし震災前のように上野乗り入れを目指すのであれば震災前は全て通過駅であったとはいえ交換用に10両はほしいところである。

また、常磐線は貨物列車の走行していた路線であったが、今回の復旧区間は重量の関係で貨物列車が非対応となっている。これはさらに強度を高めるために復旧にかかるまでの時間がかかること、JR東日本もJR貨物からアボイダブルコストしかとれず一切収益にならない。となれば、早期復旧もかなわなくなるし、JR東日本もダイヤが制約されメリットがない。そのため、今回は仙石線同様旅客列車のみの運行を想定したものになったと思われる。

3.復旧はいち早く、運賃は二の次

今回は震災復興による復旧であるが、これは災害復興計画としては各自治体に任せられているものの、同時期で広範囲に行われることから実質国家レベルでのプロジェクトとなっており、常磐線が再開するのは12月10日からだが、前日の9日までは代行バスや仙台~相馬間の都市間バスが運行されているわけで、一刻も早い復旧が急がれる。

しかし、運賃はどうか。今回の内陸移設により改キロが行われ、一部で運賃も改定される。だが、運賃の改定は復旧の12月10日ではなく、翌年3月である。これは、仙石線の復旧時にも起きたことだが、仙台エリアのJRの乗車券を購入できるのはJR東日本だけではなくその他の旅客5社も可能で、旅行代理店にも及ぶ。私鉄の場合は社内、せいぜい直通先程度で収まるためそこまで費用が掛からないが、JR東日本1社だけのために改キロを行うと残りの5社分と旅行代理店などのマルスシステム改修代を全てJR東日本が負担しなければなる。それが別々に2回となると費用がかさむ。そのため、2015年の仙石線復旧および仙石東北ライン開業時に伴う改キロの際には北陸新幹線の開業と合わせて、今回の常磐線改キロも磐越西線郡山富田駅の開業や広島の可部線の可部~あき亀山間開業と合わせることにより、JR西日本と費用を折半できる仕組みとなっている。国鉄時代であれば再開時にすぐさま改キロを導入するが、費用節減のためにこのような形になっているものだと思われる。


4.結び

今回の常磐線復旧によってまた不通区間が解消されるわけだが、山田線の復旧工事は三陸鉄道への移管が条件で始まったばかりで、常磐道は全線開通にこぎつけられたものの常磐線はさらに海沿いを走行しているため未だに全線復旧の目途が立っていない。

今後どのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。。

コメント

コメントを投稿される方はこちらの注意事項をお読みください。コメント投稿時点でこの注意事項に同意したものとみなします。

トップページに戻る

タイトルとURLをコピーしました