昼間増強も東北沢待避復活か 小田急電鉄複々線化完了に伴うダイヤ改正(2018年3月予定)

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小田急電鉄は11月1日、プレスリリースにて2018年3月に代々木上原~登戸間の複々線化工事事業が完了することを受け、大幅なダイヤ改正を行うと公表した( 2018年3月、新ダイヤでの運行開始 )。今回は第1弾として、昼間のうち大半が複々線となる主に向ケ丘遊園~新宿間と、各種別の停車駅刷新について見ていく。

1. 小田急電鉄、極めて異例の意気込み

本来3月のダイヤ改正の公表は前年の12月第3金曜日に行うのが通例で(2018年3月ダイヤ改正であれば、2017年12月15日または22日公表)、JRグループ各社はもちろんのこと第三セクター各社もその日に合わせてダイヤ改正公表をしてきた。大手私鉄はダイヤ改正実施日をずらすことにより概ね1カ月前にプレスリリースを出すことが多いが、そんな中でも東京メトロと小田急電鉄はこれまで3月にダイヤ改正を実施する場合JRグループ各社と合わせて2008年以降12月第3金曜日にプレスリリースを公表してきた。

しかし今回2018年3月中旬に実施されるダイヤ改正は小田急電鉄の中でもかなり意気込みがあるようだ。2017年3月のダイヤ改正一斉公表日であった2016年12月16日の前日には2018年3月より運行を開始する朝の特急ロマンスカーの愛称を募集し翌日のダイヤ改正一斉公表には参加せず、翌年2月3日にダイヤ修正を公表したものの、中身はほとんど触れない状況となっていた(ちなみにこの2017年3月4日小田急電鉄ダイヤ修正により、平日朝の多摩線唐木田発新百合ヶ丘行き急行が各駅停車に格下げされた模様)。その後11月1日の異例の早さのダイヤ改正公表となったが、その勢いはこれまでより1カ月半ほど早いのみならず、遅くとも翌2日までには平日朝夕(午前9時30分までの上り列車と午後6時以降の下り列車)の全列車の時刻を掲載している。JRグループも新幹線新線の開業時には半年前程に新幹線やアクセス列車の運行本数のみプレスリリースで事前に公表することはあるが、今回の小田急電鉄のダイヤ改正プレス公表は線増はあるものの新線開業は伴っていない。時刻公表なんて約1カ月前の時刻表発売が一番早くにでる。

小田急電鉄は例年より早い11月のダイヤ改正プレスリリース公表について「新生活(4月)から小田急電鉄を利用してほしいから」と述べているが、時刻表を18ページプレスリリースにのっけられても、1980年代の時刻表月200万部発売時代と異なり今となっては専門サイトの読者レベルしか理解できない。もし本当に新生活に小田急を利用してほしいなら、利用駅入力式の通勤シミュレーションシステムをウェブサイト上に構築して、何分短縮されるのか、何分遅く起きられるのか表示すべきだ。そんな中プレスリリースにてこれらのことを足早に公表したのは、小田急電鉄史上最大の悲願である複々線化完了による白紙ダイヤ改正を実施できるからではないだろうか

そして今回プレスリリースを出した11月1日は、1986年に当時の日本国有鉄道が最後の大規模ダイヤ改正を行った日だ。インターネットのない、NTTのキャプテンシステムが予約に使えるようになったばかりの頃の当時はダイヤ改正プレスリリースは国鉄監修交通公社の時刻表(現在のJTB時刻表)かテレビ番組のみどりの窓口しかなく、公表もそれまでは1ヶ月前の時刻表発売が最速でこの1986年11月1日ダイヤ改正で初めて3ヶ月前公表を行なったのであるが、国鉄分割民営化まで5ヶ月前ということもあり全国で大規模なダイヤ改正となった。小田急電鉄が今回11月1日にダイヤ改正プレスリリースを出したのは、これにあやかろうとしたからではないだろうか。

ちなみに、小田急電鉄は2018年3月中旬にダイヤ改正を行うとしているが、2018年の3月中旬の土曜日は3月17日のみであることから、JRグループのダイヤ改正も含めて2018年3月17日に行うものと思われる。

それでは次の章から、昼間のダイヤについて見ていく。




2. 新宿発着の優等列車増強

昼間については、2016年3月26日ダイヤ改正で大幅に手が加えられたので、今回は比較的小規模となっている。

現状、昼間は平日・土休日ともに運行本数は特急ロマンスカーが毎時3本、快速急行が毎時6本、急行が毎時6本、各駅停車が毎時6本の合計毎時21本で、このうち急行毎時3本とロマンスカーの一部が千代田線直通、残りは全て新宿発着だ。これが2018年3月のダイヤ改正から、急行が昼間は全て新宿発着になる代わりに、千代田線向け直通列車として新しい停車駅となる準急が、平日は毎時3本、土休日は毎時6本設定される。

新設される準急の停車駅は現在の準急とは全く異なり、どちらかというと2016年3月26日ダイヤ改正によって消滅した区間準急に近い。代々木上原を出ると下北沢、経堂に停まった後、千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵、成城学園前と4駅続けて停まる。その後狛江に停車した後、登戸から先は各駅に停まる。ホームの関係からして急行線ではなく緩行線を走るものと思われ、下北沢も地下2階各駅停車ホーム発着になるものと思われる。

また、下北沢〜新百合ヶ丘間ノンストップだった快速急行も、ラッシュ時の混雑分散目的の登戸停車が昼間にも実施されることとなった。
昼間の小田急線の下り方面の発着駅はあまり変わらず、小田原線方面は快速急行毎時3本と急行毎時3本と各駅停車毎時6本、江ノ島線方面は快速急行毎時3本、多摩線方面は急行毎時3本というのは変わっていない。今回新設される千代田線直通準急は、平日土休日ともに運行される毎時3本は向ヶ丘遊園発着、土休日のみ運転の毎時3本は成城学園前発着となっている。

ここで昼夕輸送力比を計算すると現在は86%であるが、これが平日を基に計算すると75%となり推奨値内に入り込む。昼間も平日夕ラッシュ時も増発により混雑が緩和されるのは間違いなさそうだ。



3. 快速急行の混雑はいかに

今回2018年3月ダイヤ改正では、大増発する代わりに平日朝ラッシュ時の混雑分散目的で快速急行が終日登戸に停車することとなった。しかし運行本数の変わらない昼間に登戸に停車するということは、それだけ利用者が快速急行に集中することを意味する。現状でも昼間の快速急行は混雑しているのにもかかわらずさらに混雑が増すのは避けられない。

ただ、それを少しでも解消する策は取られる。1つは先述した多摩線直通急行の新宿発着化。現状は千代田線直通のため、昼間に経堂・成城学園前・登戸・向ケ丘遊園から新宿に出るには代々木上原で混雑している快速急行に乗り換える必要がある列車も多かった。しかし昼間の急行が全て新宿発着になったことにより、小田急沿線から東京都心方面利用の3分の2を占める新宿利用の場合でも代々木上原で乗り換える必要はなくなった。これにより少なくとも新宿~代々木上原間で快速急行が空くのは間違いなさそうだ。

またもう1つ考えられるのが、新百合ヶ丘での多摩線急行と小田原線快速急行の接続中止。現在新百合ヶ丘では上り(新宿・千代田線方面行き)の昼間に限り、多摩線からの急行と小田原線からの快速急行が対面接続している。これにより多摩センターなど多摩線沿線からの速達アクセスに貢献するわけだが、もちろん快速急行も混む。今回2018年3月ダイヤ改正で多摩線急行を新宿行きにするのと同時に、登戸への追加停車により快速急行の所要時間も急行と比べて所要時間の優位性が薄れることもふまえて、新百合ヶ丘での多摩線からの急行→新宿行き快速急行への接続を解除すればその分快速急行の混雑が緩和されるのではないだろうか。




4. 新しい準急は隔駅停車枠なのか

今回新しく設定される準急は、2010年以降需要の伸びる千歳船橋や祖師ヶ谷大蔵、狛江に停まるが、通過駅も6駅しかないこと、連続通過は世田谷代田、梅ヶ丘、豪徳寺の3駅通過のみであることを考えると隔駅停車の様相が伺える。隔駅停車は京急や東急東横線、京王線など輸送量の多い路線に設定される種別であるから隔駅停車があることはその路線が発展している証拠であり、特に沿線の世田谷区では2017年10月に人口90万人を突破し、2040年までに100万都市になろうという勢いであるから、その需要増加が新種別の設定に繋がっていることは喜ばしいことだ。

今回の準急設定も各駅停車の混雑対策によるものだが、混雑する理由として新宿~成城学園前間で各駅停車が一切待避をしないことが原因の1つである。もし複々線化により東北沢で待避するようになれば、その分今でも空いていて快速急行登戸停車により客がさらに減る急行に乗客が移って、混雑が均等化するのではないだろうか。

5. 千代田線直通は昼間は除け者か

千代田線直通列車と言えば、現状では多摩線唐木田発着が主である。2002年3月23日のダイヤ改正で千代田線直通列車専用種別の多摩急行が設定され、2016年3月26日ダイヤ改正で昼間は急行に種別変更したものの昼間毎時2本から毎時3本に増強が図られ、千代田線直通列車の存在感を高めていた。

しかし今回2018年3月ダイヤ改正では、朝夕ラッシュ時は大幅な増強が行われるものの昼間に関しては新しく設定される準急に格下げされることとなり、また直通区間も唐木田発着から向ケ丘遊園発着へ短縮されることとなった。喜多見まで東京23区内で和泉多摩川まで東京都内であることを考えると、東京23区外に出るのは準急の通過する和泉多摩川を含めても4駅、東京都外に出るのは登戸と向ケ丘遊園の僅か2駅のみだ。

昼間の準急運行区間が複々線区間の(ほぼ)終端であると考えると、まるで東京メトロ南北線や都営三田線が東急目黒線日吉までしか直通しないかのような短距離ぶりである。東横線と比べると目黒線の利用は少ないが、東横線が8両または10両に対し目黒線が6両であることを考えると多少は調節しているように感じる。しかし小田急の場合、各駅停車(の一部)を除いて、急行も千代田線直通も全て10両だ。両数では調節しようがない。土休日には成城学園前発着でさらに毎時3本の千代田線直通準急が運行され、実に千代田線の昼間の半分が小田急直通となるわけであるが、成城学園前発着に関しては東京23区内に留まることもありただの地下鉄の延長のような扱いのような気もする(というか、中国であれば間違いなく地下鉄扱いだ)。多摩線の京王対抗と快速急行通過駅の新宿アクセス向上のための昼間の小田急新宿乗り入れ増加であるが、千代田線向けに急行に代わって新しい準急を割り振ることになったのは、昼間の千代田線直通需要が伸び悩んだことがあるのではなかろうか。


6. 結び

今回2018年3月小田急電鉄ダイヤ改正では、複々線化工事に伴い、昼間にも増発が行われた。小田急電鉄の悲願がどのような形で実るのか、注目してゆきたい。

コメント

  1. GK より:

    >新百合ヶ丘での多摩線からの急行→新宿行き快速急行への接続を解除すればその分快速急行の混雑が緩和されるのではないだろうか。
    有り得ないでしょう。
    ダイヤ改正以後も新百合ヶ丘-向ヶ丘遊園、代々木上原-新宿が複線のまま残るのだから、快急は新百合で急行を抜いておかないと特に代々木上原-新宿で列車が詰まってしまい新宿手前でダンゴ運転になってしまう。
    >千代田線向けに急行に代わって新しい準急を割り振ることになったのは、昼間の千代田線直通需要が伸び悩んだことがあるのではなかろうか
    これもそうではなく、本来の複々線化後の運転形態を模索した結果でしょう。
    もともと千代田線直通急行は下北沢周辺の複々線化が完成するまでのつなぎ。その完成を機に本来の新宿直通へシフトするとともに千代田線直通は本来の構想どおり緩行線へ振り向けたということ。
    さらにいえば、複々線化はこれでも終わりではなく新百合ヶ丘まで継続するという意志表示とも受け取る。その暁には緩行線を走る遊園止まりの列車は多摩線内折り返しの各停と一体化して唐木田発着となることをすでに盛り込んでいるのでは。

  2. TAKE より:

    記事の通り、日中千代田線直通利用は伸び悩んでいますね。利用してみるとガラガラの空いてます。
    小田急からの千代田線直通利用って大手町くらいまでですがどこもビジネス街なので、朝夕しか需要がありません。銀座や有楽町に行くのだったらもう少し昼間も利用者いるでしょう。
    こういった地下鉄直通が必ずしも便利かというと微妙で、混んでる電車で立ったまま直通するよりも、代々木上原始発で座れるのならその方がいい人も多いでしょう。日中なんてそれでいいと思うので千代田線直通はいらないかな。

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