青函トンネルスピードアップで3時間台運転へ! 北海道新幹線ダイヤ改正予測(2019年3月予定)

 454回閲覧

鉄道・運輸機構は7月11日、プレスリリースにて北海道新幹線青函共用走行区間で高速試験走行を行うと公表した( 北海道新幹線、青函共用走行区間における高速走行試験について )。今回はこれについて見ていく。

2019年3月16日全国一斉ダイヤ改正まとめについてはこちら!

1. 青函トンネルの最高速度向上へ

今回の2018年9月北海道新幹線高速試験走行では、2018年度以降の北海道新幹線のうち貨物列車と共用している82kmの区間のうち、青函トンネル区間54kmでの最高速度向上が図られる。

北海道新幹線の新規開業区間では最高速度が260km/hであるものの、貨物列車との供用区間ではJR北海道津軽海峡線時代同様140km/hでの運転に据え置かれた。ただ140km/hでの運転では国際鉄道連合の高速鉄道の基準である「在来線を改良した高速線では最高速度200km/h以上」を満たしていないことから、北海道新幹線の最高速度引き上げは、2016年3月26日の北海道新幹線新青森〜新函館北斗間開業より前から検討されていた。

しかし、200km/h運転は貨物列車と運転時間帯が合わないようにする必要があるほか、最高速度が引き上がる列車の前に毎日1時間~1時間半程度の確認車運転を設定しなければならないなど、様々な制約が発生することが発覚した。そのため、まず2018年度末、おそらく2019年3月のダイヤ改正にて北海道新幹線全列車にて、貨物列車と共用区間のうち青函トンネル内54kmに限り140km/h運転から160km/h運転に引き上げ、2020年度より多客期の一部の下り(新函館北斗行き)に限り貨物列車と共用区間のうち青函トンネル内に限り210km/h運転を目指すこととなった。

一見160km/h運転と聞くと、現在京成成田空港線特急「スカイライナー」で実施されているほか、かつて2015年3月13日までは北越急行特急「はくたか」で実施されていたため、在来線での実施も容易だと思われるかもしれないが、青函トンネル自体が全長54kmと日本一の長大トンネルなほか、トンネル内での対向列車との相対速度を考えなくてはならない。新幹線は先頭形状で対策を取っているため対向列車と高速で離合することも可能であるが、在来線の場合先頭形状が必ずしもそのように設計されているとは限らない。かつて160km/h運転を行っていた北越急行はトンネルが多かったものの、全線単線ゆえ列車交換を行う際には必ずどちらかの列車が停車していた。そのため対向列車との相対速度は160km/hにしかなっていない。また京成成田空港線は160km/h運転区間は全線高架で、地下区間は単線となっている。そのため特急「スカイライナー」同士がそれぞれ160km/hで相対速度320km/hで離合することはあるものの、必ず高架区間での離合となるのでトンネルのような狭い環境での離合とならず、列車への影響が小さい。そのため実は日本国内では、在来線における長大トンネル内での離合時の最高相対速度は、JR西日本の北陸本線北陸トンネルや、北総鉄道線の130km/h×2の260km/hが最高であり、それ以上の速度で離合したことはない。




では世界を見るとどうか。中国では長白線や渝貴線などで、高速列車CRHと貨物列車を複線で同時に運行させている。もちろんトンネル区間もあるのだが、高速列車CRHは200km/h、貨物列車は120km/hの相対速度320km/hで離合させている。これが可能なのは、日本の新幹線のトンネル断面積は62㎡なのに対し、中国やヨーロッパなどの高速鉄道では90㎡と日本に比べ45%もトンネル断面積が大きい。さすがに日本で建設中のリニア中央新幹線は設計最高速度505km/hで営業最高速度500km/hを目指しているからトンネル断面積は74㎡と新幹線より大きくなるが、それでも海外の高速鉄道より小さい断面積である。このような小さな断面積で済んでいるのは、1964年の東海道新幹線開業時の技術では設計最高速度260km/hでの運転ができなかったことからトンネルドンなどの影響がどこまで出るのか未知であったこと、その後新幹線のみ先頭形状を進化させて対策をとったことなどがあるが、青函トンネルではそれが裏目となりトンネル断面積が小さいゆえ中国のように高速列車を200km/hで運転させながら貨物列車と離合させることはできない。

青函トンネルでは現状北海道新幹線140km/hと貨物列車110km/hが離合するため相対速度は250km/hとなるが、これが今回の北海道新幹線最高速度引き上げにより北海道新幹線160km/hと貨物列車110km/hで相対速度270km/hとなる。旅客列車の場合は在来線であってもある程度密閉されているので気密性が高いが、貨物列車の場合は車扱いの場合はまだしも、コンテナ車の場合コンテナを台車に置いているので荷崩れを起こす可能性がある。そのため国土交通省及び鉄道・運輸機構では今回の北海道新幹線最高速度引き上げに向けて、空気力学的な計算を様々な状況で実施し、青函トンネル内での北海道新幹線160km/h運転化は可能だと判断し、今回高速試験走行を行いこととなった。

そこで、今回はまず2019年3月ダイヤ改正で実施予定の、北海道新幹線青函トンネル区間での160km/h運転についてみていく。




2. 160km/h運転で3時間台運転突入へ

2019年3月ダイヤ改正にて実施予定の北海道新幹線青函トンネル区間最高速度引き上げでは、青函トンネル内での最高速度を140km/hから160km/hへと最高速度が引き上げられることにより、新青森~新函館北斗間ノンストップ列車の場合奥津軽いまべつ〜木古内間で所要時間が3分短縮される。

これにより新青森〜新函館北斗間では最速1時間01分から58分へ短縮され1時間を切ることとなり、仙台〜新函館北斗間が最速2時間30分から2時間27分へと短縮され2時間半を切ることとなり、東京〜新函館北斗間では最速4時間02分から3時間59分へと短縮され4時間を切ることとなる。このように貨物列車との共用区間のうち青函トンネル内のみだけで最高速度を日本の在来線で採用されたことのある160km/hにするだけでキリのいい時間以内にギリギリ収めることができるようになる。

ダイヤ改正内容としては、「はやぶさ」東北新幹線内での時刻は原則変わらず、北海道新幹線内のみの発着時刻変更となる可能性が高い。また、短縮される所要時間についても、奥津軽いまべつ・木古内両駅通過の場合は3分短縮されるが、奥津軽いまべつに停車する場合2分しか短縮されない可能性がある。このような場合でも、東北新幹線東京駅の発着枠が固定されている以上東北新幹線内で運転時刻を変更するのは初終電を含めても難しく、木古内と新函館北斗の発着時間変更にとどまるものと思われる。東北新幹線および新青森発着時刻の変更の可能性のあるのは、新青森発着及び盛岡発着の「はやて」のみで、所要時間短縮による運転時間帯短縮を図るために行われる可能性がある。

また、北海道新幹線の新函館北斗発着時刻が変更されることにより、函館本線函館~新函館北斗間運転のはこだてライナーが、快速を中心に時刻変更される可能性が高い。一方で新函館北斗で接続する特急「スーパー北斗」は、前回の2018年3月17日ダイヤ改正以降もキハ261系の増備が続いており運用に余裕が出ることから、車両運用が変わったにもかかわらず所要時間があまり短縮されなかった特急「北斗」から格上げされた特急「スーパー北斗」が所要時間短縮され北海道新幹線との接続時間を改善させる可能性がある。ただ特急「スーパー北斗」は札幌近郊で千歳線との列車の兼ね合いがあり、函館側での時刻変更は容易ではなさそうだ。




3. なぜ共用区間全区間で最高速度向上を行わないのか

ではなぜ2019年3月の北海道新幹線ダイヤ改正時に貨物列車との共用区間82kmではなく青函トンネル区間のみの54kmのみに限り160km/hに最高速度を引き上げるのか。

先述のようにトンネル断面積のみが影響していれば、明かり区間を含む青函トンネル以外の区間でも160km/h運転を行うことは可能なはずだ。しかしなぜそれができないのかというと、明かり区間は冬季に雪に悩まされる区間であり、青森が世界一の豪雪都市であること(ちなみに2位は札幌、3位は富山)、この共用区間は1988年3月13日の津軽海峡線開業時に開業しており、豪雪対策が2015年3月14日開業の北陸新幹線と比べても未発達であること、三線軌条ゆえメンテナンスがほかの新幹線よりかかること、青函トンネル区間のみの最高速度160km/hへの引き上げと比べノンストップ列車の場合さらに3分短縮できるものの、北海道新幹線定期列車13往復中ノンストップ列車は5往復のみで残る8往復は木古内に停車、そのうち7往復は奥津軽いまべつに停車することから、所要時間を短縮できる列車が少ないことなどが挙げられる。

しかし、三線軌条ゆえ260km/h運転ができないのはわかるが、160km/h運転なら可能と思われる。ともなれば、積雪の少ない春夏秋だけ最高速度を引き上げを実施して所要時間を短縮し、夏ダイヤと冬ダイヤを導入すればいいのではないか。

JR北海道では2012年12月~2013年2月の期間まで、130km/h運転を行う特急列車を冬期間に120km/h運転に減速させる措置をとっていた。津軽鉄道や大連地下鉄・ハルビン地下鉄のように夏ダイヤと冬ダイヤが切り替わるたびにダイヤ改正をその都度実施していたわけではないが、特急「スーパー北斗」では札幌~函館間の所要時間が10分程度延びていたとも言われている。そのため北海道新幹線でも冬は減速する形で冬ダイヤを設定することは可能だ。

ただし1つ難点がある。それは東北新幹線東京駅が2面4線しかなく、多客期ともなれば毎時15本を12分折返しでひっきりなしに捌かなければならない。下り(新函館北斗行き)に関しては東北新幹線内は定時運行し北海道新幹線内のみで減速運転を行えば問題ないが、上り(東京行き)は北海道新幹線内で遅れた分が東北新幹線内にそのまま波及する。ともなると東京着時刻も遅くなり、他の東北新幹線列車にも影響が出るほか上越新幹線・北陸新幹線にも遅延が波及する。ともなるとJR東日本が許すはずもなく、上り列車での実現は難しそうだ。もし実施するとしても最大3往復しか運転されない北海道新幹線の臨時列車でシーズンごとに時刻を変えるのが精いっぱいで、コスパが非常に悪い。ともなれば、季節別ダイヤの実現は難しそうだ。


4. 結び

今回の2019年3月北海道新幹線ダイヤ改正では、青函トンネル内スピードアップに伴い所要時間短縮が行われる見込みだ。今後2020年度内には新函館北斗行きのみに限り、多客期にさらなる最高速度引き上げに伴う所要時間短縮が見込まれる。

今後北海道新幹線でどのようなダイヤ改正が実施され、どのような臨時列車が設定されるのか、楽しみにしたい。

コメント

コメントを投稿される方はこちらの注意事項をお読みください。コメント投稿時点でこの注意事項に同意したものとみなします。

トップページに戻る

タイトルとURLをコピーしました