東名間が半分の40分に! リニア中央新幹線名古屋開業時ダイヤ予測(2027年予定)

 6014回閲覧

JR東海は2027年に品川~名古屋間にリニア中央新幹線を開業させるとした。今回はリニア中央新幹線の維持運営費の算定からリニアの名古屋開業時のダイヤとその他設備について予測と考察をしていく。

N700系に統一される2020年の東海道新幹線ダイヤ改正についてはこちら!

1. リニアは全席指定・事前発売のみ

JR東海はリニア中央新幹線を開業するにあたり、様々な費用を算定している。その中の建設費として駅設置費用も盛り込まれており、そこからリニアの利用方法についてもある程度予想することができる。

JR東海の資料によると、リニア中央新幹線の駅に設置されるのは、乗り場とコンコース、そしてそれを結ぶエスカレータとエレベータなどの設備。ホームは中間駅でも2面4線が用意されており、東海道新幹線と違い4線どの線に停車しても乗降が確保される。

しかしコンコースは入出場口と化粧室、施設管理事務所しかない。改札口ではないところにも違和感を覚えるが、なによりこれまでの鉄道・新幹線と異なるのは「新たな販売システムにより、駅にはきっぷを販売するスペースを設けていません」ということ。つまり1980年代の本には通常の国鉄駅には標準装備とされていた「みどりの窓口」およびJR東海管内でその後継とされる「JR全線きっぷうりば」もない。自動券売機も設置しない。それぞれのスペースを圧縮することによりで各駅の建設費を圧縮し、駅下に商業施設などを誘致し有効活用しようとしているのである。




とはいえ駅でリニアチケットを売らないとはどういうことか。あと10年後には革新的な技術が導入されるかもしれないが、現状の技術の延長で考察していく。現在、東海道新幹線を利用するには乗車券と新幹線特急券を購入しても乗車できるが、2006年7月22日にエクスプレス予約をスタートした。これはPCや携帯電話などで事前に乗車券・指定席特急券を原則セットで予約し、JR東海の窓口で受け取るというもの。その後2008年3月29日よりEX-ICを導入し、本人に限り駅窓口・券売機に行くことなくICカードで乗降できるようになった。その後もプラスEXの導入や全国交通系ICカードでの利用可能化によるスマートEXなどICカードによる利便性向上を図っている。これはJR東日本やJR西日本など他社発券の際に発生する発券手数料5%を極力削減したいためだと思われるが、これはリニア中央新幹線開業時の乗車システムを試しているのではないだろうか。ICカードを使えばきっぷ売り場が必要ないし、改札口もIC読み取り機のみで済む。またクレジットカードや記名式ICカードであれば航空機同様氏名の把握が容易にでき、テロ対策もしやすくなる。こうして設備の簡素化と安全性の強化を一石二鳥で行うことができるのである。1日単位で発売されることの多いテーマパークの入場券などの場合にはネットで予約のコンビニ支払もできるかもしれないが、東海道新幹線で車内改札が近年まで省略できなかった要因でもある無手続きでの座席変更が多くなる恐れもあり、導入は難しいものと思われる。そうなるとリニアチケットの購入はPCやスマホ、タブレット端末のみとなりとなりそうだ。




2. 運賃・料金は一体制で東京都区内・名古屋市内制度はなしか

先述したように、発券はネットとICカードの利用の可能性が極めて高い。

そして現在使用されているエクスプレス予約のサービスを見ていくと、受け取りが駅窓口のe特急券を除いて運賃と料金が一体となっており、東京都区内や名古屋市内、大阪市内などの乗車券制度のうちの特定都区市内制度が存在しない。これは、東京都区内や大阪市内の在来線はJR東日本やJR西日本などの他社線であり、自社のみのきっぷではなくなってしまうためである。これはe5489サービスを展開するJR西日本の発売するネット早得も同様で、福岡市内と北九州市内の設定はない(ただし自社の在来線の運行する大阪市内や広島市内の設定はある)。そのためリニアチケットも品川や名古屋などの単駅発売となる可能性が極めて高い。また運賃と料金も一体化し、在来線とは別運賃体系になるのであろう。このように路線によって運賃が別計算となる例は京成成田空港線や阪神神戸高速線などが既に先例としてあり、十分考えられる。

そして運賃について。日本国内では全ての交通機関に運賃が設定されている。リニア中央新幹線は東海道新幹線より品川~名古屋間でプラス700円、品川~新大阪間でプラス1000円で設定される見込みだ。先述したように東京都区内や名古屋市内は設定されないとすると、JR線利用の場合東京~品川間で別途165円、新大阪~大阪間で別途160円必要となる。もっとも赤羽や天王寺からの利用であればさらにかかる。




さらに既存の新幹線や在来線と運賃形態や発券方式を独立させることにより、1980年10月1日から始まった「みどりの窓口」での1か月前発売にこだわる必要が無くなるので、JR東海がライバル視している航空機同様6カ月後分まで一斉発売も可能となる。またエクスプレス予約で発売されているIC早得は現状21日前までの予約で発券されているが、スーパー先特(JAL)やスーパー旅割(ANA)などの旧超割系割引と同様75日前でのさらなる割引を設定することができる。もはや航空業界では普通運賃という概念がもはや崩壊してしまったのだ。

となると、JR東海も早期予約による流動的な料金設定をすることが可能になり、繁忙期・閑散期の期間や料金差額の設定もやりたい放題にできる。つまり東海道新幹線プラス1000円(品川~新大阪間)で利用できるのは、独自に設定した閑散期の平日で75日前までの予約で利用する場合であり、繁忙期や当日予約の場合はさらにプラス5000円されてもおかしくない。また「ひたち」「ときわ」のように乗り換えると料金打ち切りになる可能性が高く、速達タイプと各停タイプで乗り換える際には運賃も含め別途リニアチケットが必要となるのであろう。




3. リニア中央新幹線開業時のダイヤ予測

さてここで本題のリニア中央新幹線のダイヤ予測を行うことにしよう。

維持運営費の試算に用いられた情報によると速達タイプが毎時4本、各停タイプが毎時1本を想定し、速達タイプは品川~名古屋間を40分で運行し1駅停車するごとに8分追加され、各停タイプの全線所要時間は待避がない場合で1時間12分となる見込みだ。現在東海道新幹線の昼間の最速で「のぞみ」が品川~名古屋間1時間31分、「こだま」が同区間を2時間40分であることを考えるとほぼ半分に短縮される。時間短縮効果は絶大なようだ。

3.1. 運行本数は速達タイプが最大毎時8本か

しかし、東海道新幹線とは編成定員が異なる。東海道新幹線N700系は1323席であるが、リニア中央新幹線L0系は1000席となる見込みである。現在臨時便を含めダイヤを組んでいる東海道新幹線は最大毎時14本(うち「のぞみ」最大毎時10本)で運行されており、定員の少ないリニアがたった速達タイプ毎時4本の運行で需要が足りるのか疑問だ。

そこで輸送密度を計算してみた。東海道新幹線(東京~新大阪間)の輸送密度は24万2306人/日であるが、リニア中央新幹線(品川~名古屋間)の輸送密度予測は15万9977人/日である(ちなみにリニア中央新幹線が全線開業すると26万0211人/日となる見込みで、東海道新幹線を超える)。この輸送量を捌くには名古屋開業時は速達タイプが最大毎時8本、新大阪開業時には毎時12本設定しないと捌くのは難しい。そのため経営維持費の試算に用いられた本数は定期便だけであると想像がつく。しかしダイヤを予測するためには臨時便も考慮に入れなくてはならないので、速達タイプ毎時8本、各停タイプ毎時1本で試算していく。




3.2. ダイヤの基本は2本抜き

今回のダイヤ改正予測には、過去に行われた東海道新幹線のダイヤ改正から見ていく。東海道新幹線の基本は速達タイプである「のぞみ」の続行運転と2本抜きである。これにより各停タイプである「こだま」の待避を極力最小限にし「のぞみ」をできる限り運行させることができるようになっている。リニア中央新幹線も同様のダイヤが組まれるのであろう。

ダイヤパターンの一例を示す。

下り

品川発毎時時刻(分) 00 03 10 15 18 30 33 45 48
種別 速達 速達 各停 速達 速達 速達 速達 速達 速達
運行頻度 定期 臨時 定期 定期 臨時 定期 臨時 定期 臨時
名古屋着毎時時刻(分) 40 43 48 55 58 10 13 25 28
品川~名古屋間所要時間 40分 40分 1時間38分 40分 40分 40分 40分 40分 40分

とりあえず1通りダイヤを作成してみたものの、車両性能が異なるとはいえ足りない情報を東海道新幹線のダイヤから補うとすると、速達タイプの列車を昼間も所要時間40分で運行しようとすると各停タイプの待避を行う関係で最低10分の間隔がないと各停タイプを縫うように走行することができない。

もちろん2本抜きならその間の間隔は3分にまで詰められるのだが、それをパターンダイヤに落とし込もうとするとなかなか難しい。また速達タイプは品川~名古屋間ノンストップで算出しているため、神奈川県駅(橋本駅近傍)に毎時1本しか停まらないというやや強引な設定が組まれており(一応各停タイプは毎時4本まで設定可能なスジは組んだ)、速達タイプの一部が神奈川県駅に停車することを考慮して組んでいない。ただそれを組みだすと定期と臨時の割り振りが難しく、新大阪開業時にダイヤを組もうとすると昼間の列車の所要時間が最速と比べて名古屋のみ停車でも18分も伸びてしまう。未だに営業運行していない技術でダイヤを組むのには難しさを感じた。


4. 結び

2027年のリニア中央新幹線品川~名古屋間開業では、品川~名古屋間を僅か40分で移動できるようになる。しかし中間駅に停車する種別を作る必要があり、最高速度を高くするからこそ各停タイプによる制約が大きくなりダイヤ作成は困難を極める。10年後どのような運行形態になるのか楽しみにしたい。

コメント

コメントを投稿される方はこちらの注意事項をお読みください。コメント投稿時点でこの注意事項に同意したものとみなします。

トップページに戻る

タイトルとURLをコピーしました