111年越しの悲願の乗り入れも城際直通車九廣通廃車へ 香港港鉄MTR東鉄線金鐘延伸に伴うダイヤ改正(2022年5月15日)

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111年越しの悲願の香港島乗り入れも城際直通車九廣通廃車へ 香港港鉄MTR東鉄線金鐘延伸に伴うダイヤ改正(2022年5月15日)

港鉄MTRは2022年5月3日、プレスリリースにて5月15日に東鉄線紅磡~金鐘間を延伸開業すると公表した( 東鐵綫過海段將於二零二二年五月十五日通車百年鐵路延伸港島 紅磡五分鐘直達會展站 )。今回はこれについて見ていく。

1. 路線延伸で111年越しの香港島上陸へ!

今回の2022年5月15日港鉄MTRダイヤ改正では、東鉄線が香港島内の金鐘まで延伸する。

そもそも東鉄線の前身の九広鉄路は九龍半島と広州を結ぶ路線で、当時香港及び九龍半島の一部を領有していたイギリスによって敷設し1911年10月8日に広州と九龍半島の直通運転を開始した鉄道である。なぜ香港島ではなく九龍半島発着にしたかというと当時香港島と九龍半島の間のビクトリア・ハーバーを結ぶ手立てがなかったため、九龍半島の南端に終着駅の九龍駅を設けて香港行きの船と連絡させることとした。つまり九広鉄路と船を乗り継ぐことで広州と香港を結んでいたのである。

その後1972年の九龍半島と香港島を結ぶ香港海底トンネル開業に伴い香港島と九龍半島の間のアクセスがバスにシフトしたことから、1975年に九龍駅を海底トンネルの入り口付近に移設した。その後九龍駅は紅磡駅に改称し、九広鉄路も東鉄線に路線名称を改称している。

つまり今回の東鉄線の金鐘延伸は、九広鉄路開業からの悲願の夢だった香港島へのアクセスを111年越しに達成する夢の路線なのである

ただ西鉄線と馬鞍山線の直通運転が始まった2021年6月27日ダイヤ改正にて両線を屯馬線に統合したが、今回の東鉄線の金鐘延伸では路線名は東鉄線のまま据え置くこととなった。もう西鉄線がないのだから九広鉄路に戻しても良いと思うのだが。




今回の2022年5月15日香港港鉄MTRダイヤ改正では、東鉄線紅磡~金鐘間の2駅間を延伸する。途中香港島内に会展駅を東鉄線単独駅として設置する。九龍半島の紅磡~香港島内の金鐘間の所要時間は7分となっている。当初の予定では2022年6月~7月ころの開業予定であったことを考えると、やや繰り上げに成功したようだ。

東鉄線が新たに乗り入れる金鐘では地下鉄荃湾線、地下鉄港島線、地下鉄南港島線と乗り換えることができるが、多数の路線が乗り入れることと海底トンネルを通る関係で東鉄線は地下五階にホームを設置することとなった。もっとも南港島線は地下六階発着なので乗り換えはしやすいが、港島線とは乗り換えに5分程度かかってしまうし、地上に出るのも一苦労である。

プレスリリースでは今回の東鉄線延伸でで金鐘~九龍塘間を東鉄線で13分で到達できるようになるとしているが、既存の地下鉄荃湾線と地下鉄観塘線を旺角で対面乗り換えしても17分で到達できるのである。地上からの到達時間や地下鉄港島線からの乗り換えを考えればほぼ時間が変わらないため、今回の東鉄線延伸は九龍地区にとってはあまり利便性が高くなるとは言えそうにない。

そうなると今回の東鉄線金鐘延伸で恩恵を受けるのは東鉄線や屯馬線(旧馬鞍山線方面)で結ばれている新界東や金鐘で東鉄線と乗り換えがしやすい南港島線沿線に限るようだ。

もっとも港鉄では区間制運賃を採用しているので今回の東鉄線延伸で最短距離が短くなろうが既存区間の運賃は変わらない。ただそもそもビクトリア・ハーバーを跨ぐ際には割増な運賃を設定しているため、これまで紅磡でビクトリア・ハーバー越えのバスに乗り換えて香港島に向かっていた需要を東鉄線直通利用に移すことで増収が図れるほか、4号車の一等座料金が東鉄線の運賃と同一額として設定するため一等座料金を加算徴収できるようになる(例:紅磡~上水間の一等車加算料金は12香港ドルだが、金鐘・会展~上水間の一等車加算料金は24香港ドルのため、12香港ドルの増収となる)。

なお今回の延伸で唯一の新駅となる会展駅の運賃は地下鉄港島線湾仔駅発着と同一となる。

2. 両数削減で新車に一斉置き換えへ!

今回の2022年5月15日東鉄線延伸により新たに金鐘駅が始発駅となる。が、この金鐘駅は構造上ホームが9両までしか用意できなかったことから、東鉄線はイギリス製メトロキャメル電車12両編成から韓国現代ロテム製9両編成の新車に2021年から2022年にかけ全て置き換えることとなった。これにより2022年5月6日に東鉄線からイギリス製車両が姿を消すこととなった。

なお12両から9両に減車後も4号車の一等座(ファーストクラス)は存続している。

中国の地下鉄・都市鉄道を走る車両は原則中国製の車両の中、香港では未だに海外製の新車を投入している。もっとも観塘線や南港島線では中国製の新車も導入したが、2000年代には日本製(川崎重工や近畿車輛など)の、2010年代には韓国現代ロテム製の新車を大量投入している。

もっとも香港を統治していたイギリスは中国人を麻薬のアヘン漬けにした敵国なのでイギリス製のものは徹底排除したいのだろうが、その中でも未だに中国以外で製造した車両を新車として導入しているのは一定の配慮があると言わざるを得ない。




3. 東鉄線紅磡駅移設で城際直通車廃止と九廣通廃車へ

今回の2022年5月15日港鉄MTRダイヤ改正では、東鉄線の金鐘延伸と同時に紅磡駅の東鉄線ホームを屯馬線の真下の地下一階に移設する。

東鉄線には出入境審査を伴う越境列車城際直通車を香港紅磡~広州東間で運転している。

このホーム地下化により東鉄線紅磡駅に城際直通車が物理的に乗り入れられなくなるため、港鉄MTRは城際直通車運転部門を廃止城際直通車専用車両の九廣通(ktt)の車両メンテナンスを取りやめ廃車することとしたのだ。これにより東鉄線は一等車連結の通勤型車両のみの運転となる見込みだ。

このため越境列車は香港西九龍駅発着の高速列車CRHのみとなる。この高速列車CRHは主に香港西九龍~広州南を結んでいるが、広州南は広州市街地まで40分程度かかるためあまり使い勝手委がいいとは言えない。このため中国ではアクセス改善のために広州市内に連絡線を設け、2023年を目途に城際直通車と同じ広州東に香港西九龍発着の高速列車CRHを乗り入れる見込みだ。


4. 結び

今回の2022年5月15日港鉄MTRダイヤ改正では、東鉄線の金鐘延伸により九広鉄路111年越しの香港島乗り入れを果たすこととなった。

ただこの乗り入れ開始によりイギリスメトロキャメル製車両が東鉄線から引退させるほか、そもそも九広鉄路開業当初の運転系統だった城際直通車を廃止にし、城際直通車専用車両九廣通を廃車することとした。

今後港鉄MTRでどのようなダイヤ改正を行うのか、見守ってゆきたい。

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