京急電鉄は2022年9月22日、プレスリリースにて11月28日月曜日より「モーニングウィング5号」の時刻変更を行うと公表した( モーニング・ウィング5号 2022年11月分Wing Passご購入のお客さまへ )。今回はこれから2022年11月下旬実施の京急電鉄ダイヤ改正について予測していく。
同日実施の2022年11月下旬京成電鉄・都営浅草線・北総鉄道・芝山鉄道ダイヤ改正ダイヤ改正予測はこちら!
1. 11月にダイヤ改正実施へ
京急電鉄ダイヤ改正では2022年11月下旬にダイヤ改正を行う見込みだ。
これは、1か月単位で発売しているモーニング・ウィング号 Wing Pass11月分のうち、「モーニング・ウィング5号」の運転時刻を11月28日月曜日より約30分程度早めると公表があったためである。
このことから、2022年11月26日土曜日または11月27日日曜日に京急電鉄および都営浅草線、京成電鉄でダイヤ改正を行う可能性が極めて高い。
京急電鉄では2022年2月26日にダイヤ改正をしたばかりであることを考えると、実に7か月ぶりにダイヤ改正を行うこととなる。
今回はこれらから2022年11月下旬実施予定の京急電鉄・都営浅草線・京成電鉄ダイヤ改正について予測していく。
2. 平日朝オフピークの減便でモーニングウィング5号繰り上げへ
今回の2022年11月下旬京急電鉄ダイヤ改正では、平日朝に減便を図る。
まずプレスリリースで既に公表していることとして、平日朝運転の「モーニングウィング5号」がダイヤ改正後最初の平日2022年11月28日より三浦海岸7時56分発泉岳寺行きから三浦海岸7時28分発泉岳寺行きに繰り上げ、各乗車駅で最大30分も発車時刻が早まる。
がこの「モーニングウィング5号」の新しい運転時刻は、横須賀中央→品川間で京急久里浜7時36分発特急金沢文庫行き(金沢文庫から快特品川行き)と全く同時刻で設定している。つまりこの平日朝オフピークの快特を減便するのは間違いない。
「モーニングウィング号」は2015年12月5日京急電鉄ダイヤ改正での設定以来、既存列車の純増発という形で設定してきた。が、このご時世で通勤時間帯を中心に利用者が減っていることから「モーニングウィング号」の時刻変更に合わせ減便することとしたようだ。
そもそも京急電鉄の最混雑区間戸部→横浜間は、2019年度は混雑率143%だったにもかかわらず2021年度には95%にまで落ち込んでいる。もっとも京急電鉄は2020年に混雑分散と称して品川行き特急1本を8両から12両に増結する程だったが、そもそも乗車定員に達していないこと、競合するJR東日本東海道線では2022年3月12日ダイヤ改正で平日朝ラッシュ時に減便していることを考えれば、京急電鉄での減便はあっても何らおかしくはない。
そう考えると今回のダイヤ改正で京急電鉄が平日朝ラッシュ時に減便・減車を行う可能性も十分に考えられる。現在平日朝ラッシュ時は最も混雑している戸部→横浜間で品川方面12両快特毎時5本、品川方面12両特急毎時6本、羽田空港行き8両特急毎時4本、6両普通毎時9本を運転している。このうち快特1本は先述した「モーニングウィング5号」への置き換えとなるが、このほかの列車も減便してもおかしくはない。
ただ、列車間での混雑の偏りを現状維持したまま輸送力調整を行うのであれば、列車に純粋な減便より運転間隔を少しずつ広げた方が良い。平日朝ラッシュ時の京浜急行は複線と少ない待避線で快特から普通まで捌く必要があるため、快特や特急が各駅に停車する普通の後ろでつかえて減速することが多い。このため、金沢文庫→品川間の快特の所要時間は昼間は35分にもかかわらず平日朝ラッシュ時は特急とともに50分もかかってしまうのである。
もし運転間隔を各列車とも30秒ずつでも広げることができるなら、その分普通の後ろに快特や特急がつかえることが少なくなり、結果的に快特や特急の所要時間短縮につなげることができる。もし運転間隔を各列車間で30秒ずつ広げ、金沢文庫→品川間で快特や特急が普通を抜かす回数を6回とすると、所要時間を3分短縮できる見込みだ。
そうなると、今回の京急電鉄ダイヤ改正では平日朝オフピークのみならず朝ラッシュ時にも減便を図るのではないだろうか。
3. 運行パターンの見直し実施か
また今回の2022年11月下旬京急電鉄ダイヤ改正では、運行パターンの見直しを図る可能性がある。
この運行パターンの見直しは2022年5月12日公表の2022年度決算説明会資料に記載しており、他社の状況を見る限り2021年9月以降大規模な減便を行っている鉄道会社が少なくない。このため京急電鉄でも終日に渡る減便を図る可能性がある。
ではどのような運行パターンの見直しを行うのだろうか。2022年度決算説明会資料によれば、一例として2021年10月18日京急電鉄ダイヤ変更における久里浜線京急久里浜~三崎口間の平日昼間10分間隔から20分間隔への減便を挙げている。つまり少なくとも昼間の減便は20分サイクルダイヤを変えずに減便するようだ。
では各区間の輸送密度はどのようになっているのだろうか。昼間は毎時1両につき4,000人/日・往復運べ、平日夕ラッシュ時は昼間に必要な車両数の1.5倍が必要とし、一番直近の大都市交通センサスである2015年の隣駅間輸送密度で見ていこう。
線区 | 隣駅間輸送密度最大の区間 | 隣駅間輸送密度 | 昼間に必要な両数 | 平日夕ラッシュ時に必要な両数 |
本線東京都区内 | 品川~北品川間 | 442,773人/日・往復 | 毎時111両 | 毎時167両 |
空港線 | 京急蒲田~糀谷間 | 153,537人/日・往復 | 毎時39両 | 毎時58両 |
大師線 | 京急川崎~港町間 | 72,590人/日・往復 | 毎時19両 | 毎時28両 |
本線神奈川県内 | 横浜~戸部間 | 467,458人/日・往復 | 毎時117両 | 毎時176両 |
逗子線 | 金沢八景~六浦間 | 47,569人/日・往復 | 毎時12両 | 毎時18両 |
本線金沢八景以南 | 金沢八景~追浜間 | 216,077人/日・往復 | 毎時55両 | 毎時82両 |
本線堀ノ内以南 | 堀ノ内~京急大津間 | 36,758人/日・往復 | 毎時10両 | 毎時14両 |
久里浜線 | 堀ノ内~新大津間 | 101,544人/日・往復 | 毎時26両 | 毎時39両 |
久里浜線京急久里浜以南 | 京急久里浜~YRP野比間 | 48,805人/日・往復 | 毎時13両 | 毎時19両 |
もっともこのご時世で利用者が減っているのは間違いないが、そもそもこのご時世より前から必要以上に運転していたとあればそれは容易に減便対象となるだろう。
とはいえ、2022年時点の現状を見ても昼間の本線快特やエアポート急行のうち6両編成、本線普通のうち品川~京急蒲田間や金沢八景~追浜間はほぼ席が埋まっている状態なので、2021年9月25日京阪電鉄ダイヤ変更のように一番利用の多い区間でも減便が必要なわけではない。そう考えると20分サイクルダイヤを変える必要はなさそうだし、少なくとも品川~金沢文庫間での減便は考えにくそうだ。
もし品川~金沢文庫以南で減便を図るとすれば、平日夕ラッシュ時の12両快特毎時6本と8両特急毎時6本を12両快特毎時9本にすれば、特急以上の輸送力減少は10%で済むし、1986年時点では平日夕ラッシュ時は快特毎時3本と特急毎時6本での運転だったためあり得る話ではある。
また先述したように2021年10月18日京急電鉄ダイヤ変更で京急久里浜~三崎口間の平日昼間の運転本数を10分間隔(毎時6本)から20分間隔(毎時3本)に減便した。これは輸送力調整もあるが、地域輸送性も考えても毎時3本で問題ないための減便と思われ、観光利用の多い土休日は減便していない。が、逆を言えば久里浜線京急久里浜以南より輸送密度が低い線区は土休日は運転本数を維持しても平日昼間のみ運転本数を半減させる可能性がある。
久里浜線京急久里浜以南より輸送密度が低い線区は逗子線金沢文庫~逗子葉山間と本線堀ノ内~浦賀間である。この両区間は久里浜線同様平日昼間毎時3本に減便してもおかしくはない。
では各線ごとに見ていこう。
4. 本線浦賀発着の削減で金沢文庫以南で普通減便か
まずは本線金沢文庫~浦賀間。
2019年度の乗降人員を見ても、堀ノ内〜浦賀間は昼間毎時9両、3両編成毎時3本で運び切れてしまう。もっとも普通車は主に6両編成、昼間に4両編成を使うこともあるが、地域輸送性を考えても毎時3本あれば十分運べてしまうのだ。
また、金沢文庫〜堀ノ内間の特急通過駅各駅もYRP野比と同レベルまたは未満の需要しかなく、乗車チャンスは毎時3本あれば十分な需要しかない。
もっとも昼間は特急の運転がないために特急停車駅にもかかわらず昼間は普通しか来ない追浜は単駅で毎時11両が必要なため毎時3本では足りず毎時6本の乗車チャンスが必要だが、快特の増停車または平日朝ラッシュ時のような金沢文庫以南特急格下げで対応すれば良い。
そう考えると今回のダイヤ改正で金沢文庫以南の普通を平日昼間に限り10分間隔(毎時6本)から20分間隔(毎時3本)に減便してもおかしくはない。
また横須賀市の人口が2015年から2022年までの間に6.3%減少していること、また利用実態を鑑みるに金沢文庫~浦賀・三崎口間は特急(金沢文庫から快特になる列車を除く)は終日全駅停車させてその分普通車を減便し運用合理化を図った方が良い。
ただし京急本線では普通車は6両までの運転しかないため、特急・エアポート急行通過駅は原則ホームが6両までしか対応していない(むしろ2012年10月21日に高架化が完了した大森町・梅屋敷・雑色が6両分しかホームがないので普通車の8両対応はあきらめたようだ)。そのためには京急田浦、安針塚、逸見、県立大学の4駅のホームを6両対応から8両対応に約40m延ばす必要がある。
このうち京急田浦、安針塚、県立大学の3駅はそのままホームが延長できるが、平日朝のみ実施している逸見での通過待ちを廃止して待避線を仮設ホームで潰せば逸見も8両対応にできるだろう。
もし特急が金沢文庫以南で各駅に停車するようになれば、昼間は平日のみならず土休日も快特毎時6本中毎時3本を金沢文庫以南特急に格下げすることにより普通を毎時6本中毎時3本削減しても金沢八景~京急久里浜間の各駅で毎時6本以上の乗車チャンスを維持できる。
また平日夕ラッシュ時も8両編成毎時11本あれば運びきれるので久里浜線方面快特毎時6本と浦賀行き特急毎時6本の設定で金沢八景以南は済むようになる。もっとも特急は堀ノ内まで先着するため、横須賀中央へは毎時12本の先着が保証されているのは現状と変わらない。
さらに平日朝ラッシュ時も特急の金沢文庫以南各駅停車化で京急久里浜・浦賀~金沢文庫間の普通毎時6本を減らせるようになるので、6両編成8運用を削減できる見込みだ。1500形の置き換えを控えていることを考えると運用削減による新車投入抑制は効果的だろう。
ただ、今回のダイヤ改正で平日夕方以降に特急を毎時6本運転している時間帯いおいての快特を久里浜線直通から金沢文庫行きに短縮して増解結の手間をなくすということはさすがにしないだろう。
また金沢文庫以南の全駅で8両対応になったとしても、京急久里浜までは昼間でも8両編成毎時4本は必要なこと、浦賀方面へは地域輸送性を考えても毎時3本は必要なことから、金沢八景~堀ノ内間が昼間8両編成毎時6本のみになるとは考えにくい。そう考えると6両普通の金沢八景以南の運転は引き続き残るだろう。
このほか土休日朝、品川7時30分発〜8時30分発の特急3本および横浜6時40分発〜9時10分発の特急15本は快特に格上げして金沢文庫→品川間の所要時間を5分短縮し、運用数を1運用減らしに行っても良いのではないか。もっとも特急には京急蒲田以北や金沢文庫以南のエアポート急行や普通の補完的役割もあるが、エアポート急行は品川方面も横浜方面も毎時6本運転しているため特急であえて補完する必要もないし、普通も昼間同様の混み具合しかしないだろう。
5. 逗子線の減便は消極姿勢か
次に逗子線・昼間も平日夕ラッシュ時もエアポート急行を10分間隔(毎時6本)で運転しているが、輸送量は平日昼間に20分間隔に減便した久里浜線京急久里浜~YRP野比間より若干少なく、ほぼ同数となっている。このため昼間に減便を図ってもおかしくはない。
ただ、逗子葉山と競合するJR横須賀線逗子駅は昼間でも横浜方面へ平均10分間隔(毎時6本)の運行があるほか、逗子葉山駅南口を発着する葉山町方面の京急バスが平日昼間でも海岸回り(逗11・逗12系統)が15分間隔(毎時4本)、山回り葉山小学校方面が毎時6本程度運行がありバスとの折り合いがつかない。
このため逗子線は平日昼間に減便してエアポート急行の運転区間短縮を図る可能性はゼロではないが、あまりないのではないだろうか。
6. 空港線の減便はあるのか
次に空港線。一応輸送力的には8両編成毎時6本の運転があれば昼間は運びきれてしまうが、現状では8両編成の品川方面エアポート快特・快特が毎時6本、6両または8両の横浜方面エアポート急行が毎時6本の合計毎時12本運転しており、エアポート快特や快特を中心に明らかに空席が目立っている。
そう考えると2010年5月16日ダイヤ改正以前と同様、品川方面は快特毎時3本と急行改めエアポート急行毎時3本、横浜方面は特急改めエアポート急行毎時3本の運転とすれば空港線内の輸送力調整はできるだろうし、横浜方面のエアポート急行毎時6本中毎時3本を京急川崎で折返しにして京急川崎~羽田空港間の減便だけで済む。いやむしろその方が空港線快特通過駅から品川・都営浅草線方面への昼間の直通列車が復活するので沿線住民は使いやすいのだ。
ただ2022年に入り国内旅行が事実上ほぼ制限なくできるようになっていること、海外旅行も順次緩和し2022年10月1日からはJR東日本特急「成田エクスプレス」が平常運行に戻ることを考えると、羽田空港利用者も戻る可能性が十分考えられる。また品川方面は東京モノレールの空港快速10分間隔(毎時6本)と直接競合していることを考えると、安易にエアポート急行に格下げできなさそうだ。
もっとも空港線快特通過駅から昼間の品川・都営浅草線方面直通列車の設定はできないが、青物横丁と平和島から都営浅草線直通列車を設定するのであれば1990年同様久里浜線方面快特のうち都営浅草線直通の毎時3本を特急に格下げすれば解決はするのか、ついでに先述したように追浜と汐入に停車させるには特急格下げが必要なので持ってこいといわれればそうなる。
7. 大師線は概ね据え置きも将来的なワンマン化も視野か
次に終日4両編成で運転している大師線。
昼間は毎時5本で足りることになるが、果たして本線の20分サイクルダイヤを崩してまで行うものなのだろうか。
もう今回の2022年11月下旬ダイヤ改正で京成電鉄もワンマン運転を開始することから、4両以下でワンマン運転を行っていない関東大手私鉄は京急電鉄と小田急電鉄しかなくなるが、京急電鉄は終日4両編成で運転系統が1つしかない大師線では未だに車掌常務がある。もっとも本線普通車の4両運転のワンマン化は難しいかもしれないが、大師線のワンマン運転化は今後行ってもおかしくはないのではないのではないだろうか。
京急電鉄では2023年3月頃より鉄道駅バリアフリー料金制度に伴う加算運賃10円加算を導入する計画がある。これによりホームドアの設置やバリアフリールートの整備などを図る見込みだが、今後のワンマン運転実施を視野に入れていてもおかしくはなさそうだ。
8. 結び
今回の2022年11月京急電鉄ダイヤ改正予測では、京急電鉄で朝オフピークの減便が見込まれるほか、終日に渡り運行パターンを変更する可能性が十分考えられる。
今後京急電鉄でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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