JR西日本は2020年10月16日、プレスリリースにて2020年度にN700Sを2本投入すると公表した( 東海道・山陽新幹線車両 N700Sおよび、北陸新幹線車両 W7系の新製投入 )。今回はこれから2021年3月実施予定の山陽新幹線ダイヤ改正について見ていく。
2021年3月実施予定の東海道新幹線ダイヤ改正予測はこちら!
1. 「ひかり」所要時間短縮で岡山で接続改善へ!
今回の2021年3月実施予定の山陽新幹線ダイヤ改正では、東海道新幹線内での岡山発着「ひかり」の所要時間短縮により山陽新幹線内でも時刻変更を行う。
東海道新幹線内では6分の所要時間短縮に留まるが、山陽新幹線内では待避回数を減らすことができることから、さらに所要時間を短縮できる見込みだ。
これにより岡山発着「ひかり」と岡山発着「こだま」の接続が大幅に改善するほか、岡山発着「ひかり」は運転本数そのままに16両編成を1運用削減できる見込みだ。
2. N700S営業運転開始で臨時含め「のぞみ」毎時6本化へ!
また今回の2021年3月実施予定の山陽新幹線ダイヤ改正では、車両増備に伴いダイヤ改正を行う。
前回の2020年3月14日山陽新幹線ダイヤ改正では臨時含め山陽新幹線内では「のぞみ」の毎時6本化は一部の時間帯に限られていた。しかし今回の2021年3月ダイヤ改正に合わせN700S16両編成を2本投入及び先述の岡山発着「ひかり」で削減するN700系16両編成1運用を臨時「のぞみ」に転用することでパターンダイヤ時間帯の全時間帯で毎時6本運転を可能にする見込みだ。
ただ山陽新幹線内で臨時含め「のぞみ」を毎時6本化したいのであれば、N700Sの新製投入にこだわらなくても良かったはずだ。JR東海ではN700Sを2020年より投入することで既にN700系を4本廃車にしている。かつてJR西日本所属の300系新幹線を全て追い出し廃車にする目的でJR東海から700系新幹線を譲り受けたことがあることを考えると、このご時世で鉄道会社はみんな赤字になってるんだし、N700系を4本廃車にするくらいだったら2本くらいJR西日本に譲渡したっていいではないか。
しかしそれでもJR西日本がN700Sの新製投入にこだわった理由は2つ考えられる。1つは2021年3月ダイヤ改正で東京~博多間定期「のぞみ」毎時1本を意地でもN700S専用運用にするために14本の投入が必要だが、JR東海投入分だけでは12本のみで2本足りないためJR西日本に投入を強要した説。まあはっきり言って東京~新大阪間で3分所要時間を短縮しても人件費は減らせるが旅客は増えないのに対し、東京~岡山・広島や名古屋~博多間で所要時間が短縮すれば少なからず航空機から旅客を奪えるのでJR西日本にとって増収とはなりそうではあるが。
もう1つは東海道新幹線内のみならず山陽新幹線内でもN700S投入により最高速度を引き上げる説。これについては長くなるので次の節にて述べよう。
また山陽新幹線で定期「のぞみ」毎時2本化の可能性がある。
2020年現在でも既に姫路と福山の双方に停車する「のぞみ」は博多発着を含め存在していることから、定期「のぞみ」の毎時2本化を行っても「のぞみ」として運行することはできる。
もし毎時2本化するのであれば、姫路と新山口停車、福山と徳山停車でセットにするのではないだろうか。
そう考えると、広島~博多間で定期「のぞみ」が毎時1本にまで減るとは考えにくそうだ。
このほか運用繰りの関係で2020年現在N700系16両編成で運転している山陽新幹線内完結の新大阪6時06分発「ひかり591号」博多行き及び博多20時51分発「ひかり594号」新大阪行きの1往復はN700Sによる運転となる見込みだ。
3. N700S投入により山陽新幹線で最高速度引き上げはあるのか
また今回の2021年3月実施予定の山陽新幹線ダイヤ改正では、N700S投入により最高速度の引き上げはあるのだろうか。
まずJR西日本ではN700Sは2020年度は2本投入することが決まったものの、2021年度は一切投入しないことも決まった。これまで初年度には新型車両の16両編成を初年度には8本投入していたことを考えると非常に少ない。
そう考えると、今回のN700S投入は臨時含め「のぞみ」山陽新幹線内毎時6本化を達成するために増備したのであって、N700系を置き換える目的ではなさそうだ。
またN700SはN700A3次車及び改造車と比べて6%消費エネルギーが少ないとされる。消費エネルギーは重量と空気抵抗に比例する。
さらにN700A3次車は16両713tであるが、N700Sは15t軽量化して698tとなっている。これにより2.1%軽量化している。
このほか集電ロスを減らしたりいろいろエネルギー効率を上げているのだが、先頭形状の変化により同じ速度の場合の空気抵抗が3%減ったと考えると、受ける抵抗が同じ速度が3%上がることになる。つまり300km/h運転から最大310km/h運転に理論上引き上げることが可能だ。
またブレーキ性能はN700A3次車及び改造車では2007年当時のN700系と比べてブレーキ性能が20%向上していることから、最短4分間隔運転の山陽新幹線では性能上320km/h運転が可能だ。N700Sのブレーキ性能はN700A3次車及び改造車より5%向上していることから、当然ブレーキ性能だけで見れば320km/h運転に耐えうる(極論を言えば、500系の車体にN700Sの台車を付ければ問題なく320km/h運転ができる)。
また保安装置も2017年にデジタルATCに置き換えたことから最高速度の引き上げは容易にできる。つまりN700Sは理論上山陽新幹線内で305km/h~310km/h運転に引き上げることが可能だ。
ただし山陽新幹線で300km/hから310km/hに引き上げても所要時間は2~3分程度しか縮まない見込みだ(300系から500系や700系の所要時間短縮がそれぞれ15分及び8分あったのは、最高速度引き上げよりも起動加速度向上によるところが大きい)。
またJR西日本がN700Sを投入した理由で最大なものが臨時を含めた山陽新幹線内での「のぞみ」毎時6本化なので、省エネには興味はあるだろうがおそらく速度向上はほぼ興味がない。そう考えると山陽新幹線内での最高速度引き上げは難しいのではないだろうか。
4. 東海道新幹線内での所要時間短縮により終列車繰り下げも視野か
また今回の2021年3月実施予定の山陽新幹線ダイヤ改正では、東海道新幹線内で毎時1本の定期「のぞみ」が3分所要時間短縮を図る見込みであることから、山陽新幹線内でも時刻変更を行う。
対象となるのは東京毎時09分発及び東京毎時36分着の東京~博多間運転の定期「のぞみ」毎時1本となる。この列車では下り列車(博多方面)では新大阪発時刻が3分繰り上がり、上り列車(東京方面)では新大阪着時刻が3分繰り下がる見込みだ。
これにより東京21時09分発定期「のぞみ111号」岡山行きを福山通過の広島行きに延長させると広島23時59分着で設定が可能となる。これにより東京から広島への最終が18分、新大阪から広島への最終が12分繰り下がる可能性がある。なおもし広島への最終列車が繰り下がった場合は、東京19時51分発「のぞみ109号」広島行きが岡山行きに短縮する可能性がある。
なお航空機の羽田から広島への最終便は羽田20時25分発ANA689便である。羽田空港までの移動時間と搭乗手続きにかかる時間を考えれば、東海道・山陽新幹線の東京から広島への最終が東京20時09分発になれば十分勝つことができそうだ。
5. 「みずほ」「さくら」減便でN700系8両編成の「こだま」転用と500系順次廃車か
また今回の2021年3月実施予定の山陽新幹線ダイヤ改正では、九州新幹線直通「みずほ」「さくら」の減便が定期列車・臨時列車ともに見込まれる。
JR九州は2021年3月ダイヤ改正で九州新幹線直通列車の減便を行う可能性が高いことから、山陽新幹線内でも「みずほ」「さくら」の減便を行い、九州新幹線直通列車がほぼ終日毎時1本程度の運転にまで減便する可能性が高い。特に臨時列車は2020年4月以降1本たりとも運転していないほか、新大阪~博多間の列車においてはJR東海の圧力により臨時「のぞみ」を増発を迫られていることから、「みずほ」「さくら」を臨時増発する必要性が薄れている(多客期は博多乗り換えで「のぞみ」と「つばめ」を乗り換えればいいだけなので)。そう考えると「みずほ」「さくら」用のN700系8両編成の運用がJR西日本でも余ることに間違いはない。
またJR西日本ではN700Sを2022年度までに4本投入するとしているが、うち2本は16両編成として2020年度内に投入することが決まっているほか、2021年度の投入はない可能性が高い。そうなると2022年度に2本投入することになるのだが、16両編成になるとは誰も言っていない。N700系8両編成は早朝・深夜には新大阪発着を中心に山陽新幹線「こだま」運用にも就いていることから、今回のダイヤ改正で1日中「ひかり」「こだま」にしか運用しないN700系8両編成ができたとしても不思議な話ではない。
そうなると500系新幹線の置き換えも視野に入れている入るのではないだろうか。
また8両編成の運用削減により500系の運用を削減し順次廃車する可能性もある。
毎週月曜運転だった広島6時20分発新大阪行き臨時「ひかり596号」は2020年4月から無期運休状態となっている。
さらに先述した東京~岡山間「ひかり」と岡山~博多間「こだま」の岡山での乗り換えが大きく改善し数分程度で乗り換えられるようになることから、それに興じて新大阪~岡山間で各駅に停車する列車を毎時2本運転で運転する時間帯を減らし16両編成の東京発着「ひかり」のみの毎時1本のみの運転とする時間帯を増やす可能性がある。
もう500系新幹線は1997年から走り続けており、新幹線車両としては異例の24年間も走っているんだ、老朽化した500系新幹線の運用を減便やN700系8両編成に置き換えで削減する可能性は高そうだ。
6. 結び
今回の2021年3月実施予定の山陽新幹線ダイヤ改正では、JR西日本でもN700Sを投入するのに伴い、東京発着の一部の「のぞみ」で所要時間短縮を図る。
一方、臨時「さくら」の減便によりN700系8両編成の「こだま」運用が増える可能性が高いほか、「こだま」の減便により500系の運用本数を削減する可能性がある。
今後山陽新幹線でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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