JR東海は2022年5月20日、プレスリリースにて2022年3月12日にダイヤ改正を行うと公表した( “夏”の臨時列車のお知らせ )。今回はこのうち、高山本線特急「ひだ」について見ていく。
1. 新型車両HC85系投入へ!
今回の2022年7月1日JR東海運用変更では、高山本線特急「ひだ」の車両運用を変更する。
これはJR東海ではキハ85系特急型気動車の置き換えとしてHC85系ハイブリッド型気動車を投入することとなったもので、特急
高山本線特急「ひだ」用には1989年2月18日よりキハ85系気動車を使用しているが、既に33年経過していることから老朽置き換えを図ることとなった。
JR東海の車両置き換えは新幹線車両は約13年、在来線普通列車は約25年~35年と短めだが、在来線特急車両で33年で置き換えというのはJR旅客他社と比べてもほぼ変わらない。JR四国では1990年~1992年に投入した水色の2000系特急型気動車の廃車が順次進んでいることを考えると、車両置き換えは適切な時期に行っていると言えよう。
2022年7月1日から名古屋~高山間の2往復2運用、2022年8月1日からは名古屋~高山間の3往復3運用に拡大する。
2022年7月1日から新型車両HC85系で運転するのは、名古屋7時43分発特急「ひだ1号」高山行き、名古屋18時12分発特急「ひだ17号」高山行き、高山8時00分発特急「ひだ4号」名古屋行き、高山12時34分発特急「ひだ10号」名古屋行きの2往復4本となっている。
また2022年8月1日からはさらに名古屋16時03分発特急「ひだ15号」高山行き及び高山6時46分発特急「ひだ2号」名古屋行きでも運用する。
なお今回のキハ85系から新型車両HC85系への運用変更に伴う時刻の変更はない。
また両数はいずれも4両のまま据え置くが、キハ85系はグリーン車0.5両および普通車3.5両だったのに対し新型車両HC85系はグリーン車1両と普通車3両となっていることから、普通車を0.5両削減することとなった。
ただ、今回の運用変更では他社のJR西日本乗り入れとなる富山発着や大阪発着運用への新型車両HC85系の投入は見送るようだ。
なお既存のキハ85系は基本の4両編成(うちグリーン車0.5両)のほか、付属の3両編成(グリーン車0.5両の編成と普通車のみの編成の両方あり)がある。が、新型車両HC85系は4両編成(グリーン車1両の編成と普通車のみの編成の両方あり)および2両編成(全車普通車)の投入となる。
しかもキハ85系は1両ずつ切り離して増結に充てることもできるが、ハイブリッド型車両のHC85系は車両記号に気動車のキハを使わず、クモロ、モハなどの電車に使用する記号を使用していることを考えると、電車のように容易に編成を切り離して使うことはできなさそうだ。つまり、付属編成を用いた3両単位での増結はできそうだが、1両単位での増結は難しそうだ。
このため高山本線特急「ひだ」では2022年現在4両運転のほか7両運転、多客時には最大10両運転も行っているが、新型車両HC85系では4両運転列車は4両のまま据え置くだろうが(ただし普通車は3.5両から3両に縮小)、7両運転は通常時は6両に減車するだろうし多客時増結も最大10両から8両に見直す可能性は十分に考えられそうだ。
(2022.8.17追記)なおJR東海では9月17日・10月15日・11月6日に新型車両HC85系運転の特急「ひだ1号」を飛騨古川まで延長運転することとなった。これにより9月17日に高山~飛騨古川間で新型車両HC85系が営業運転を開始することとなった。
2. 新型車両HC85系の富山乗り入れも実施へ!
今回の2022年7月1日JR東海運用変更では、JR東海区間内完結の名古屋~高山間にてHC85系を運転開始する。が、今後2022年度内、つまり2023年3月ダイヤ改正までに高山本線特急「ひだ」の全列車を今回投入する新型車両HC85系に置き換えるとしている。
新型車両HC85系は起動加速度は従来のキハ85系と同一ながらも、ハイブリット機能により高起動加速度の維持時間を拡大している可能性が高いことから加減速性能が高い可能性がある、そうなれば所要時間短縮を図る可能性も考えられそうだ。
JR東海の基幹路線の東海道新幹線は2024年3月の一斉最高速度引き上げ及び「のぞみ」全車指定化などを図るために次回2023年3月ダイヤ改正の内容は3年連続の小規模改正で終わる可能性が高いことを考えると、もし高山本線特急「ひだ」が全て新型車両HC85系による運転となれば、2023年3月JR東海ダイヤ改正の目玉になることは間違いない。
ただ高山本線特急「ひだ」は1日4往復が富山に乗り入れているため、富山発着列車のキハ85系からHC85系への置き換えはJR西日本との調整が必要なのは間違いない。そう考えると今後JR西日本向け乗務員訓練を行う可能性は高いし、2023年3月ダイヤ改正での新型車両HC85系の富山乗り入れはほぼ確実なようだ。
(2022.8.17追記)その後新型車両HC85系の投入拡大は続き、2022年12月1日に名古屋8時43分発特急「ひだ3号」富山行きおよび富山13時02分発特急「ひだ14号」名古屋行きにも投入することとなった。これにより4往復中1往復にて富山乗り入れを果たすこととなった。
現状のキハ85系による富山への乗り入れ編成は3両編成(グリーン車1両・普通車指定席1両・普通車自由席1両)だが、HC85系では普通車のみの2両(多客時に4両を想定か)となっており、グリーン車の富山乗り入れはしないこととなったようだ。
今後2023年3月ダイヤ改正までに富山発着特急「ひだ」の全てがキハ85系からHC85系に置き換わることが見込まれるが、富山発着特急「ひだ」自体が減便する可能性は捨てきれない。そう考えると富山発着特急「ひだ」が4往復から3往復や2往復に減ってもおかしくはないのではないだろうか。
3. 新型車両HC85系は大阪に乗り入れるのか
今回の2022年7月1日JR東海運用変更で名古屋~高山間に新型車両HC85系えを投入するが、2023年3月ダイヤ改正で特急「ひだ」の全列車をHC85系に統一するのであれば大阪発着の1往復も考慮しなければならない。
もっとも1日1往復しか運転のない系統なので2016年3月26日JR東海ダイヤ改正にて大阪発着特急「しなの」1往復を廃止にしたのと同様、廃止になってもおかしくない。
ただ2022年6月ごろに1日1往復の大阪発着「ひだ」しか停車しない東海道本線大垣駅にも新型車両HC85系の乗降案内を設置したことから、大阪発着「ひだ」にもHC85系拡大する可能性は高そうだ。
なお、大阪発着の特急「ひだ」は全車普通車のキハ85系3両編成を使用しているが、新型車両HC85系は4両編成と2両編成の2種類しかない。これを考えると、大阪発着列車を新型車両HC85系に置き換えて存続したとしても、3両から2両への減車はほぼ間違いないだろう。
ただ、新型車両の投入前後で直通運転を縮小したり廃止したりするケースも少なくない。
そして2010年より投入したJR西日本225系新快速電車の試運転をJR東海東海道本線で行ったが、2016年3月26日の特急「しなの」の大阪発着便廃止に伴い列車走行キロを調整する必要がなくなってしまったために221系・223系含め大垣へのJR西日本普通列車の乗り入れをすべて廃止してしまったではないかJR東海。
そう考えると次回2023年3月ダイヤ改正で新型車両HC85系が大阪に乗り入れたとしても、今後廃止する可能性は十分にあるため安泰とは言えないのではないだろうか。
4. 紀勢本線特急「南紀」への投入で紀伊勝浦乗り入れ廃止検討か?
次回の2023年3月JR東海ダイヤ改正までに、新型車両HC85系を紀勢本線特急「南紀」にも投入し、全ての列車でHC85系による運転に置き換える見込みだ。
ただ、岐阜新聞の記事によれば、「紀勢線でも走るほか、現行車同様に高山から先の富山方面、大阪方面への運行も検討する」と記述している。もっとも岐阜の新聞なので県内を走行をしない紀勢本線特急「南紀」は守備範囲外と言われれば致し方ないが、他社のJR西日本直通が必要な富山方面、大阪方面への運行は検討するとしていて、紀勢本線は走ると確定してしまっているのである。おいおい、特急「南紀」の終点紀伊勝浦はJR西日本の管轄なので、検討という表記が正しいはずだが。
そもそも2019年の乗車人員は新宮ですら920人/日しかいないが、終点の紀伊勝浦は342人/日しかいない。新宮~紀伊勝浦間はこのほかに和歌山・新大阪方面の特急「くろしお」が定期列車だけでも5往復の運行があり、相互接続させれば特急「南紀」定期列車1日3往復の旅客は十分運びきれる。しかも名古屋から紀伊勝浦への三重交通高速バスは2014年に廃止してしまったため競合交通機関がない。
またJR西日本もこのご時世で利用客数が減ったため2021年以降列車運転本数を順次削減し前年2021年3月13日JR西日本和歌山支社ダイヤ改正にて紀勢本線特急「くろしお」を新宮発着の1往復を含め減便した。また全区間がICOCAエリア内の和歌山県内のJR各線はでは2021年9月30日をもって普通回数券の発売を取りやめているほか、2023年4月より電車特定区間内で一部区間の値上げも行うほど余裕がない。
またそもそも特急「南紀」の運転区間である紀勢本線新宮~紀伊勝浦間は2019年度でも輸送密度が1,000人/日・往復程度しかおらず、JR西日本が今後の存続も含めた議論を要求している。そう考えるとJR西日本管内を片道20分も走行しない特急「南紀」のために乗務員を手配している余裕などはない。
さらにJR東海としても紀伊勝浦発着の特急券では収入がJR西日本と按分されてしまう。そうなるとJR東海としては新宮発着に短縮すれば特急料金の按分の必要がなくなるのでJR東海としても増収となり得る。
そう考えると新型車両HC85系の投入に合わせ特急「南紀」の運転区間を名古屋~新宮間に短縮することは、JR東海・JR西日本ともにメリットが大きい。
そうなると新型車両HC85系の投入に合わせ2023年3月ダイヤ改正で特急「南紀」の紀伊勝浦乗り入れが消滅するのではないだろか。
もう合理化のために120km/hまでしか出ないフリーゲージトレイン(160km/h対応の軌道可変車両はスペインで実用化済み)でも作って、近鉄名古屋~松阪間は近鉄、松阪以南はJR東海の線路を走行した方が近鉄・JR東海ともにメンテナンス費が節減できるような気はするが。別に名鉄特急「北アルプス」のように私鉄電化区間を非電化車両が直通したことはJR東海管内での実績があるし、そもそも近鉄には標準軌と狭軌路線がありフリーゲージトレインによる京都~吉野方面列車を設定することを検討しているし、国鉄伊勢線が特定地方交通線として廃止対象になったのは三重県南部から名古屋への異動は松阪で近鉄に乗り換えれば良いというのが遠因にあったわけだし。あ、参宮線直通快速みえに支障をきたしうるからしないか。
ただJR旅客各社間では他社直通列車を列車走行キロで相殺している。今回の紀勢本線特急特急「南紀」の紀伊勝浦乗り入れ廃止によりJR東海車両のJR西日本乗り入れ距離が減った場合、JR西日本車のJR東海乗り入れ区間の縮小を図るとすると北陸本線特急「しらさぎ」のうち1往復を名古屋~米原間で減便する可能性がある。
そう考えると次回2023年3月JR東海ダイヤ改正では、特急運転区間の変更などある程度の規模の変更が予想されそうだ。
5. 結び
今回の2022年7月1日JR東海運用変更では、高山本線特急「ひだ」に新型車両HC85系を投入することで運用変更を図ることとなった。
もっとも2022年内はHC85系はJR東海管内のみでの運転となりそうだが、次回2023年3月JR東海ダイヤ改正では全ての高山本線特急「ひだ」および紀勢本線特急「南紀」の車両が置き換わることで、新型車両HC85系の富山や大阪乗り入れが見込まれる。一方で、同時に紀勢本線特急「南紀」の紀伊勝浦乗り入れを中止する可能性が十分考えられる。
今後HC85系の投入に伴い所要時間の短縮はあるのか楽しみにする一方で、特急「ひだ」「南紀」の運転区間短縮はあるのか、見守ってゆきたい。
コメント
松阪で対面乗り換えにした方が合理的なのでは…