JR東海は2025年9月18日、プレスリリースにて2025年12月より多客期に特急「ひだ」「しなの」「南紀」で全車指定席化を図ることとした。今回はこれから2026年3月JR各社特急列車ダイヤ改正について予測していく。
1. JR東海で全車指定席化拡大へ!
JR東海では2025年12月より多客期に高山本線特急「ひだ」、中央西線特急「しなの」、紀勢本線特急「南紀」で全車指定席化する。
JR東海ではかねてより他社保有の特急列車である小田急直通特急「ふじさん」、JR東日本直通特急「踊り子」、JR西日本直通特急「しらさぎ」を通年全車指定席で運転している。
またJR東海が運営する東海道新幹線では最速達列車「のぞみ」で年末年始、ゴールデンウィーク、お盆の多客期に限り全列車全車指定席で運転している。
そんな中2025年12月よりJR東海が車両を所有する特急列車のうち名古屋を発着することが多い高山本線特急「ひだ」、中央西線特急「しなの」、紀勢本線特急「南紀」の3つで年末年始、ゴールデンウィーク、お盆の多客期に限り全列車全車指定席で運転することとした。
この3つの特急列車はいずれもJR東日本やJR西日本など他社に直通ずる在来線特急列車である。
これにより座席指定可能数が増えることで指定席の確保がしやすくなる。
なお指定席満席時には自由席特急券と同額の立席特急券を発券する。
JR東海管内では多くの区間で自由席特急券が30km以内330円、50km以内660円と割安価格にしているが、そもそもここまで割安なのは廃止した急行の代替を兼ねているためのほか。高校生で混みやすい普通列車からの分散目的である。が今回特急「ひだ」「しなの」「南紀」が全車指定席化する年末年始やゴールデンウィーク、お盆などの多客期は高校が休みのため普通列車に乗る高校生が少ない。このためJR東海としては多客期は混んでいる特急列車より空いている普通列車を利用してほしいということなのだろう。
なお紀勢本線特急「南紀」は途中河原田~津間で伊勢鉄道に乗り入れるが、プレスリリースには伊勢鉄道の記載はない。
2. なぜJR東海も在来線特急の全車指定席化に至ったのか
ではなぜ多客期だけとはいえJR東海も在来線特急列車の全車指定席化を図ることとした。なぜかだろうか。
1つ目は全車指定席化することにより車内検札を省略できる。JR各社の特急列車では8両程度までなら車掌1人乗務であるが、10両となると車掌を2人乗務させることが多かった。もっとも2020年以降JR東日本やJR西日本では10両特急列車の車掌乗務を1人に減らしたようだが、令和の国鉄ことJR東海では2024年現在も特急列車を10両で運転する際は車掌を2人乗務させている。高山本線特急「ひだ」や中央西線特急「しなの」は通常時は4両や6両で運転しても多客時には10両運転を行うことがあるため、車掌乗務人数を増やさなくてはならないのである。もし全車指定席化により検札業務が減れば今後車掌の2人乗務をなくすことができ、多客期の労務環境改善につながる。このため特急「ひだ」「しなの」が10両運転しうる多客期に絞った可能性がある。
2つ目は増収目的。
ふつうにきっぷを買った場合、在来線特急では全区間で指定席特急券やグリーン特急券、立席特急券であれば列車を指定するので車両を所有している会社に収益が回るのだが、自由席(かつほかに同区間を走る在来線特急がない場合説あり)の場合その鉄道を運営する会社に収入が行ってしまう。つまり特急「しなの」であれば指定席やグリーン車であれば特急券やグリーン券は名古屋~長野の全区間で運行車両である383系を保有するJR東海の収入になるが、自由席だとJR東海管内名古屋~塩尻間は自由席特急券がJR東海の収入になるが、JR東日本管内塩尻~長野間ではJR東日本の収入になり特急料金が按分されてしまう。つまり特急「しなの」を松本発着や長野発着で利用する場合、自由席は指定席と比べ通常期であれば530円安いがJR東海の収入は自由席への変更でそれ以上に減ることになるのである。
しかもJR東日本は2026年3月14日に運賃改定を行い、JR東日本東海道線とJR東海東海道新幹線東京~熱海間の別線化に伴うシステム改修費用としてJR東海に3億9700万円を負担させるとしている。他社の運賃値上げのシステム改修費用を負担するなどたまったものではない。
またJR西日本も2028年をめどに全線で運賃改定を図る可能性がある。そうなればJR西日本東海道線とJR東海東海道新幹線米原~新大阪間のに伴うシステム改修でまた3億円飛ぶかもしれない。
そのためこの費用を捻出しようとまずは年末年始やゴールデンウィーク、お盆などの多客期にJR東海保有の特急車両がJR東日本管内やJR西日本管内に直通する高山本線特急「ひだ」、中央西線特急「しなの」、紀勢本線特急「南紀」で全車指定席化し、指定席満席時の自由席特急券確保による収入の大幅な目減りを防ぐこととしたようだ。
3. 今後JR東海在来線特急で全車指定席特急の通年化なるか!
では今後JR東海で在来線特急を通年で在来線特急を全車指定席化する予定はあるのだろうか。
いまのところ
東京近郊のJR東日本特急列車や大阪近郊のJR西日本特急列車のように在来線特急は簡単に通年全車指定席化ができる。このため今回全車指定席化した特急「ひだ」「しなの」「南紀」も通年全車指定席化しても良いと思うが。
正直高山本線特急「ひだ」の名古屋発着・尾張一宮発着利用と中央西線特急「しなの」の名古屋発着・千種発着利用は指定席鹿発売しないでよくて、自由席はともに1両ずつで岐阜~高山~富山間と多治見~長野間の設定だけでいいと思うんだ。だって多客期以外の空いている時期でも快速列車を多数運転しているから特急自由席である必要ないじゃんか。あくまでJR東海の自由席特急料金が30kmまで330円、50kmまで660円と割安なのは普通列車の本数が少ない地域での救済目的なので。今回多客期に全車指定席として運転する特急「ひだ」「しなの」「南紀」は通年全車指定席化してもいいし、名古屋市内発着利用は自由席を使わせず多客期以外の時期でも自由席を減車して全く問題ないと思うが。
4. 結び
今回の2026年3月JR旅客6社ダイヤ改正では、在来線特急の全車指定席化が拡大する見込みだ。
一方ですべてのJR在来線特急が全車指定席化するかと言われるとほぼ無理で、JR九州は在来線特急の自由席を残す見込みだしJR東海も残してもおかしくない状況である。
今後JR旅客各社でどのようなダイヤ改正を実施するのか、楽しみにしたい。
関連情報: 年末年始期間における在来線一部特急列車の全席指定席での運行について―「ひだ」「しなの」「南紀」号の指定席を増やします― – JR東海
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