東海道新幹線では2007年まで米原~京都間に南びわ湖駅を新設する計画があった。今回は南びわ湖駅新設の整備効果について見ていく。
1. 東海道新幹線南びわ湖駅開業効果はいかに!
東海道新幹線には南びわ湖駅設置構想があった。
東海道新幹線は1964年の開業当初在来線特急「こだま」の停車駅を絞っていたことから駅間が50km以上の区間が多数存在した。が、在来線の東海道本線から急行もなくなり新幹線の通っていない駅間での所要時間が長くなってしまうこともあり、おおむね30km程度の駅間となるよう新駅を相次いで設置、東京~名古屋間ではほとんどの駅間に中間駅を新s熱したことから1964年には東海道新幹線には12駅しかなかったところ17駅にまで増えた。
一方名古屋~新大阪間では1964年の開業以降一向に新駅を設置していない。これは当初設置するか怪しかった岐阜羽島駅を積雪時の保線目的で開業当初から設置したこと、京都に駅は必要なことから京都~新大阪間は比較的駅間が短かったことによる。
ただし米原~京都間は駅間が実キロにして68.1kmと極めて長く、1988年3月13日の東海道新幹線新駅が相次いで開業してからは東海道新幹線最長駅間となっている。
この一番長い駅間にJR東海と滋賀県が建設しようとしていた駅が南びわ湖駅である。
東海道新幹線南びわ湖駅は滋賀県栗東市内(当時栗東町内)のJR西日本草津線との交差部付近に設置、湖南地方の中枢都市草津へは草津線電車で1駅で到達できる。このJR西日本草津線新駅も設置する計画だ。
がこの東海道新幹線南びわ湖駅、2007年に計画頓挫した。なぜだろうか。
2. そもそも東海道新幹線南びわ湖駅整備効果はいかに!
そもそも東海道新幹線南びわ湖駅の整備効果はいかがなものだろうか。
現行ダイヤのまま踏襲すると南びわ湖駅には岐阜羽島・米原同様昼間は速達タイプの「ひかり」毎時1本と全駅停車の「こだま」毎時1本が停車する見込みだ。
速達タイプの「ひかり」は名古屋までは全駅に停車するが、名古屋のあとは豊橋または小田原に停車した後新横浜・品川・東京で終点となる。この「ひかり」を利用すると東京~南びわ湖間を約2時間30分で行き来することができる。
また東京~草津間は「のぞみ」利用京都のりかえだと通常期のぞみ普通車指定席利用で14,580円のところ、南びわ湖駅経由なら13,180円で済み1,400円の値下げとなる。また現行のJR旅客6社の運賃計算の関係上東海道新幹線に南びわ湖駅が開業すると在来線の東海道線と別線扱いとなり東海道新幹線京都のりかえでも東京~草津間を通しのきっぷで買えるようになることから190円の値下げとなる。
つまり東海道新幹線南びわ湖駅を設置することで草津・栗東・守山・野洲から京都のりかえ東海道新幹線東京方面利用でも安くなるのだ!
そんな南びわ湖駅計画地には将来の駅設置に向けロータリーを設けているほか、栗東駅・森山駅方面への道路も整備した。にもかかわらず実質建設中止となっている。
そんな便利な駅を設置しなかったのは2007年に新幹線建設反対派の知事が当選したためであるが、今の現状を見ても本当に東海道新幹線南びわ湖駅は必要ないのだろうか。
3. 東海道新幹線南びわ湖駅を設置するに至らなかった理由
ではなぜ東海道新幹線南びわ湖駅は実質建設中止となったのか。
そもそも東京~京都間を最速達列車「のぞみ」は約2時間11分でJR西日本琵琶湖線新快速で草津駅まで20分と南びわ湖駅利用とそこまで所要時間が変わらない。しかも最速達列車「のぞみ」はたいてい1時間に6本来るし、多客時には最大毎時12本(建設中止時の2007年でも毎時8本)、最短3分間隔でやってくるなど利便性が高い。しかも京都駅まで天下の新快速が草津~京都間約20分で結ぶなど速すぎるし、琵琶湖線内であればたいてい座れるのである。このため草津市・栗東市・守山市・野洲市などの沿線住民からは最速達列車「のぞみ」の停車する京都に行った方が利便性が高く、税金を拠出してまで建設しようとはならなかったのである。まあ南びわ湖駅を設置した方が京都のりかえであっても190円程度安くはなるが、安さを目指したいのであれば米原まで琵琶湖線で行けばよいし。
また南びわ湖駅を設置しないことは東海道新幹線を運営するJR東海にもメリットがある。南びわ湖駅を設置すると東京~草津間利用者が値下げとなることから、その分収入が下がる。しかも柔軟に増発できる一番収益効率が良い「のぞみ」利用から増発しにくく満席時には自由席利用となるため減収しやすい「ひかり」利用となることから、南びわ湖駅を設置してもJR東海は収入が下がるのである。
かくして沿線住民もJR東海も必要ないと思われたことから、「のぞみ」主体のダイヤとなった2003年10月1日東海道新幹線ダイヤ改正から約4年後の2007年に南びわ湖駅を設置を凍結し事実上中止することとした。
4. 2025年現在でも必要ないのだろうか
そんな2007年に建設中止となった東海道新幹線南びわ湖駅であるが、2025年と比べ情勢が変わってきている。
まずは東海道新幹線南びわ湖駅に接続する予定のJR西日本草津線が2022年3月12日JR西日本ダイヤ改正で平日昼間に23往復減便、平日11時台~13時台は30分間隔(毎時2本)から1時間間隔(毎時1本)に減便している。もし東海道新幹線南びわ湖駅を設置したら草津線利用者が増えることから草津線に平日昼間に3往復増発し毎時2本運転に戻るのではないか。
また草津・栗東・守山・野洲の各市民が使っている東海道新幹線京都駅は訪日外国人の影響もあり非常に混雑している。どれくらい混雑しているかというと計画中の北陸新幹線京都市内新駅が京都駅を通らないルートが出るほどである。さすが古都京都なだけのことはある。
一方草津や守山などの江戸時代を彷彿させる町並みは全然人通りがない。観光地としてめちゃくちゃ空いているのだ。
そして観光地として空いていることから滋賀県内のホテルは京都市内と比べると破格の安値である。草津から京都まで新快速で20分なんだから、滋賀に宿泊して京都に旅行なんてことも余裕でできてしまう。
その観光地や宿泊地として滋賀が見向きされない理由の1つが、東海道新幹線南びわ湖駅がないことである。東海道新幹線南びわ湖駅ができれば観光客が多くなり宿泊者も増えるほか、京都も混雑が分散され快適になるのではないだろうか。
5. 東海道新幹線南びわ湖駅は開業できるのか
では東海道新幹線南びわ湖駅は開業できるのか。
そもそも東海道新幹線は2020年3月14日ダイヤ改正以降最速達列車「のぞみ」を最大毎時12本と高頻度運転できるようにしていることから、速達タイプで南びわ湖駅に停車する「ひかり」を毎時2本から増発できない。一方南びわ湖に停車するであろう小田原または豊橋停車の「ひかり」は土休日を中心に小田原~名古屋間や東京~豊橋間で指定席が満席に近く停車駅を増やしても座れない。つまり南びわ湖駅利用目的の旅客を乗せる列車がないのだ。このため東海道新幹線南びわ湖駅の開業には「ひかり」の増発が不可欠だ。
だがJR東海によれば東海道新幹線「ひかり」を増発する余地があるとしている。それがリニア中央新幹線の名古屋開業である。
リニア中央新幹線が品川~名古屋間で開業すれb、JR東海は東海道新幹線のうち静岡停車の「ひかり」を毎時1本追加できるとしている。少なくとも昼間の「ひかり」が毎時2本から毎時3本に増発できる見込みだ。
もしそうなれば「ひかり」の混雑が分散し南びわ湖駅利用者分の席が用意できそうだ。そうなれば南びわ湖駅を設置できそうだ。
ただリニア中央新幹線品川~名古屋開業では名古屋~新大阪間は東海道新幹線利用が多いと考えられることからも、名古屋~新大阪間で東海道新幹線の線路容量があかないのである。このためリニア中央新幹線新大阪延伸をもって開業するかもしれない。
6. 結び
今回の2040年以降東海道新幹線南びわ湖駅設置は、少なくともリニア中央新幹線名古屋開業後、もしくは新大阪全通後に東海道新幹線の線路容量があいた際に設置できそうだ。
今後東海道新幹線でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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