鳥取・島根へ毎時1本の特急確保へ! JR西日本・智頭急行ダイヤ改正予測(2024年以降予定)

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鳥取・島根へ毎時1本の特急確保へ! JR西日本・智頭急行ダイヤ改正予測(2024年以降予定)

自民党鳥取県連は2022年6月11日、新聞記事にて鳥取県へ向かう特急「スーパーはくと」の毎時1本化を提言した。今回はこれについて見ていく。

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1. 特急「スーパーはくと」、毎時1本化へ提言へ

今回の自民党鳥取県連の提言では、智頭急行線特急「スーパーはくと」の増発および毎時1本化について提言したと新聞記事に記述がある。

今回の提言はただ増発すればいいという根性論ではなく、現実的な範囲で実現可能なことでくみ上げられている。

もっとも一番重視しているのは実質2020年に1日7往復から6往復に減便してしまった智頭急行線特急「スーパーはくと」の毎時1本化である。

が、乗務員数などを考慮してもただ増発するには足りないので、京都~大阪~鳥取~倉吉間運転の特急「スーパーはくと」のうち京都~姫路間の運転を取りやめ相生または姫路で山陽新幹線と連絡させるとしている。

このほか特急「スーパーはくと」を米子まで延長し姫路~鳥取~米子間の運転とするほか、山陰本線特急「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」を出雲市~益田・新山口間の運転に短縮し、米子・松江から大田市・浜田・益田方面へは特急「やくも」と特急「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」を出雲市で乗り換えるようにするという。

これにより智頭急行線特急「スーパーはくと」の毎時1本化に必要な乗務員が揃うとしている。




もっとも東京・名古屋方面へは従来通り姫路で乗り換えればよいが、京阪神へは山陽新幹線(またはJR神戸線新快速)への乗り換えが必須となるし、少なくとも京都19時35分発特急「スーパーはくと13号」鳥取行きは通勤ライナー要素を兼ねているので易々と短縮することはできない。おそらくこれは山陽新幹線と乗り換えさせることでJR西日本にとって京阪神発着利用で増収となるようにして少しでも交渉を進めたいということなのではないだろうか。

ただ、そもそも日本で一番人口の少ない鳥取県に向かう特急列車、しかも鳥取県の西半分は米子から特急「やくも」利用なので実際に智頭急行線特急「スーパーはくと」を使用するのは人口30万人程度しか考えられないこと、2021年3月13日JR西日本・智頭急行ダイヤ改正で特急「スーパーはくと」の毎日運転本数が7往復から6往復に減便したことを考えると、そもそも特急「スーパーはくと」を毎時1本も運転する必要がない

(2023.10.12 追記)その後特急「スーパーはくと」の利便性を確保するべく京都発着から大阪発着に短縮し運用数を増やさずに増発しようとする案も出ている。もっとも多客時は増発の必要は少なからずあるが、先述したように通常時は7往復から6往復に減便したくらいなのでそもそも需要がない。需要がないのでそもそも増発する必要がないのだ。

ただ、本当に特急「スーパーはくと」を毎時1本にするほどの需要喚起を行うことはできないのだろうか。それを検証していこう。




2. 米子・松江・出雲市へは智頭急行廻りの直通特急を設定してどうなるのか

そもそも智頭急行線特急「スーパーはくと」の運転区間は2022現在京都~大阪~姫路~鳥取~倉吉間となっている。

既に大阪~鳥取間の航空機は撤退しており高速バスも少ないことから利用を増やすためには人口を増やすか運転区間を拡大するかしかないわけで、日本一人口の少ない県鳥取県の人口がこれから増えるとも思えない。つまり特急「スーパーはくと」の運転区間を拡大するほか利用を拡大する術はない。

そうなると京都または倉吉から先に延ばすことを考えるのだが、そもそも特急「スーパーはくと」が京阪神から鳥取方面への利用を見据えた列車であることを考えると倉吉から先に延伸すべきだろう。そう考えると倉吉から山陰本線を先に進んだ米子・松江・出雲市方面へ延ばすのが一番の需要喚起策となるだろう。

ただ米子・松江・出雲市方面へは伯備線特急「やくも」も走っているので、比べながら検討しよう。

現状特急「やくも」は岡山~米子間を約2時間15分、岡山~松江間を約2時間40分、岡山~出雲市間を約3時間10分で運転している。

大阪府内から利用する場合には山陽新幹線新大阪駅に赴かなければならないが、新大阪~岡山間は山陽新幹線「のぞみ」でも約45分かかるほか岡山駅での乗り換え時間や列車の到着するタイミングを考慮すると岡山発着の時間に1時間程度加える必要がある。

つまり、山陽新幹線「のぞみ」と伯備線特急「やくも」を連絡した場合、新大阪~米子間は約3時間15分、新大阪~松江間は約3時間40分、新大阪~出雲市間は約4時間10分かかることとなる。おかげさまで大阪~出雲間には日本航空のプロペラ機が1日4往復飛んでおり、多くの旅客が航空機に乗る始末である。

では智頭急行線特急「スーパーはくと」を島根県まで乗り入れるとどうなるのだろうか。

2022年現在特急「スーパーはくと」は大阪~鳥取間を約2時間25分で結んでいる。ここから山陰本線へ西に延ばすとすると大阪~米子間は約3時間25分、大阪~松江間は約3時間50分、大阪~出雲市間は約4時間20分で運転可能となる。これだけの単純比較だけでも智頭急行線経由は伯備線経由と10分程度しか変わらない

しかも伯備線特急「やくも」を利用する場合、近畿地方からは山陽新幹線に乗らなければならないため大阪府内では新大阪駅を、神戸市内では新神戸駅を利用する必要が生じる。ただ智頭急行線特急「スーパーはくと」の場合は地下鉄は阪急電車・阪神電車と乗り換え有れる大阪駅や三ノ宮駅に停車するため、各線の乗り換えを考えると利便性が高い。しかも鳥取・島根まで直通で行けるようになれば10分程度所要時間が長いデメリットを相殺できるどころかむしろメリットが多くなる

もし伯備線特急「やくも」を智頭急行線特急「いなば」同様1日6往復のみの運転とし、近畿地方から鳥取・島根を結ぶ列車を特急「スーパーはくと」に一本化し少なくとも新大阪~鳥取~米子~出雲市間で運転すれば、特急「スーパーはくと」は4両編成で毎時1本運転しても十分採算がとれるようになる




しかももし特急「スーパーはくと」を出雲市まで運転し毎時1本運転するようにすれば、概ね2時間に1本程度しか特急列車が来ない鳥取~米子間にも毎時1本の特急列車が来るようになる。つまり特急「やくも」を縮小し特急「スーパーはくと」を拡大することは鳥取県内の移動利便性をも向上することになるのである

さらに智頭急行では2024年以降に既存の特急型気動車HOT7000系を置き換える予定がある。この際に車両新製と増備をすれば車両は十分賄える。JR西日本は車両使用料を払いたくないがために特急「スーパーはくと」の運転区間を短縮しようとしているが、出雲市まで乗り入れる際にはさすがにJR西日本も同型の車両を用意する必要があるため、車両使用料は精算できる

なお特急「スーパーはくと」の運転区間は(京都~)新大阪~姫路~鳥取~松江~出雲市間で十分だろう。気動車のため出雲市より西への乗り入れも可能ではあるが、近畿地方から浜田へは山陽新幹線で広島に出てから中国JRバス・広島電鉄バス・石見交通の高速バスいさりび号(2019年までは毎時1本、2020年以降や約1時間30分間隔で1日11往復運行)連絡の方が速くて便利だし(2019年までは多客期に乗車整理券を配り場合によっては2号車を出すほどの大盛況だった)、益田へも山陽新幹線で広島に出てから石見交通の高速バス広益線6往復や新広益線2往復の計8往復の方が便利である。

そう考えると、特急「スーパーはくと」の出雲市乗り入れで縮小しキハ187系気動車2両編成の1日6往復で十分足りそうになる伯備線特急「やくも」を岡山~出雲市間から岡山~益田・新山口間の運転に拡大すれば、引き続き米子・松江から島根県西部各都市へ直通で向かうことができる。つまり自民党鳥取県連の提案のような出雲市での系統分割を行わずに済むのである。また車両面でも鳥取~米子間の特急列車楊車両がJR西日本キハ187系から智頭急行HOT7000系に置き換わる見込みなので、伯備線特急「やくも」用キハ187系もそろえることができる。

が、もし伯備線特急「やくも」が気動車で十分となると伯備線および山陰本線新見~伯耆大山~西出雲間の電化設備は不要となる。もし不要となれば維持費の節減に成り、JR西日本としてもメリットがある。ただ非電化化による合理化の引き換えとして電車寝台特急「サンライズ出雲」が乗り入れられなくなるので、おそらくそれを避けるために電車特急として伯備線特急「やくも」を残したいのだろう。

JR西日本では伯備線特急「やくも」用として2023年以降4両固定編成の新型車両273系電車を11本導入するとしているが、伯備線で使えなくなったら紀勢本線特急「くろしお」に転属して283系(「オーシャンアロー」型車両)の置き換えや場合によっては大阪・名古屋~敦賀間運転の北陸新幹線に連絡する特急列車に運用すればよいのである。




3. 東京方面への連絡を考えても特急「スーパーはくと」の島根延長が有利!

ここまで京阪神と鳥取・島根両県へのアクセスを考えてきたが、東京・名古屋などから鳥取・島根両県へ向かう際にはどうなるのだろうか。

特急「スーパーはくと」から名古屋・東京方面への利用は2022年時点でも姫路乗り換えを推奨しているので、米子や松江、出雲市に来る特急列車が伯備線特急「やくも」から智頭急行線特急「スーパーはくと」に置き換わったところで、山陽新幹線との乗り換えも岡山から姫路に変わるだけで、列車乗車時間も互角である。

せめて姫路での乗り換え時間を28分~30分から13分~15分程度に短縮する努力はしてほしいものだが、それを改善して特急「スーパーはくと」の発着時刻を15分ずらせばほぼ同等の時間で到着できるようになる。

そう考えると、名古屋・東京方面のアクセスを考えても伯備線特急「やくも」縮小および智頭急行線特急「スーパーはくと」の出雲市延長によって島根県や鳥取県西部から名古屋・東京方面へのアクセスが悪化するとは思えない。

いやむしろ伯備線特急は2020年~2021年の間は事実上1日15往復から8往復にほぼ半減していたほか、2022年3月12日JR西日本ダイヤ改正以降も定期列車は12往復までしか回復していないことを考えると、智頭急行線特急「スーパーはくと」の出雲市延長により新大阪~出雲市間で1日14往復程度、毎時1本の運転できるとなれば智頭急行線特急「スーパーはくと」の方がメリットが上回ってもおかしくはない




ただ、もし最速で2037年に全線開業する見込みのリニア中央新幹線が無事開業した場合、伯備線特急「やくも」から東京方面に行くには岡山で山陽新幹線に乗り換えた後さらに新大阪でリニア中央新幹線に乗り換えるのが陸路では最速となる。が、そもそもリニア中央新幹線新大阪駅は大深度地下に建設するため山陽新幹線との乗り換えに20分を要するとしているし(JR東海のリニア中央新幹線建設説明会での発言による)、2度も乗り換えたら利便性は高いとは言えない。

ただ特急「スーパーはくと」であれば新大阪に直接乗り入れることができるので、リニア中央新幹線ができても1回乗り換えでアクセスできる。そう考えると智頭急行線特急「スーパーはくと」の島根延長は島根県内および米子から東京へ出るのに非常に有用な手段となり得るのだ!

今回の自民党鳥取県連の提言では特急「スーパーはくと」の毎時1本化の引き換えに運転区間を姫路~鳥取~倉吉間に短縮すべきとしているが、これは大阪方面へは山陽新幹線と乗り継がせることでJR西日本に増収になるようにしてできるだけ実現させようとしている一方で、今後のリニア中央新幹線開業位のことを何も考えていないのである。つまり今回の自民党鳥取県連の提言は鳥取県東部に限局した短期的利益にしか目を向けられておらず、鳥取県西部や島根県も含めた山陰地方全体やリニア中央新幹線の全通を考えたら長期的に損することばかりなのである

これらを踏まえれば、特急「スーパーはくと」は運転区間を短縮ではなくむしろ運転区間を延長し、鳥取県東部のみならず県西部や島根県からの需要を取り込むべきではないだろうか




(2022.9.3 追記)しかもJR西日本では、2023年4月1日より岡山での山陽新幹線と在来線特急との特急料金乗継割引を廃止すると公表した。この乗継割引は新幹線と乗り継ぐ場合在来線特急の特急料金を半額とする制度だが、姫路や新大阪での乗継割引は残ることから、智頭急行線特急「スーパーはくと」と山陽新幹線を乗り継ぐ場合は乗継割引が引き続き適用となるが、特急「スーパーいなば」や伯備線特急「やくも」と山陽新幹線を乗り継ぐ場合には乗継割引が効かなくなることから値上げとなるのである

おいおい、鳥取や倉吉から名古屋・東京に出る場合は乗継割引が効くというのに、米子や松江から名古屋や東京に出る際に乗継割引が効かなくなるとはどういうことだい?しかも同時に新大阪~博多間で「のぞみ」指定席料金が値上げことを考えると米子や松江からは値上げのダブルパンチなんですわ。しかも同じ鳥取県内で乗継割引が効く効かないの差をつけていいものだろうか、いやない。これは鳥取県や島根県としても抗議すべきことだろうし、それこそ今後も乗継割引を設定し続けられるようにするためにも智頭急行線特急「スーパーはくと」を出雲市まで毎時1本運転で乗り入れさせ山陰特急の中核とすべきだろう。




4. 輸送力増強のため因美線で設備改良必至か

では特急「スーパーはくと」の運転区間を出雲市まで延長したとして、どの程度の両数が必要でそれに合わせてどのような設備改良が必要なのだろうか。

もっとも特急「スーパーはくと」の運転区間を延長しても毎時1本に増発するだけで輸送量が挙げられるので、通常時は現状の5両または短縮した4両で足りる。が、多客期に伯備線特急「やくも」が毎時1本運転で4両から6両に増結して運転していることを考えると、さらに鳥取・倉吉への利用が加わることになる特急「スーパーはくと」は毎時1本運転の場合多客期に8両や9両への増車をしないと捌ききれない。

もっともJR神戸線はほぼ複々線で130km/h対応しているし、鳥取~出雲市間の山陰本線もほぼ単線ながらも120km/hに対応しているほか両線とも9両編成に対応しているので十分走ることができるが、智頭~鳥取間のJR西日本因美線内の設備が弱く、最高速度が概ね95km/hと低いだけならまだしも6両増車運転の場合郡家でドアカットを行う必要があるほか列車交換設備も増強しなくてはならない。

JR西日本では因美線のうち特急列車の乗り入れない東津山~智頭間の路線の存廃も見据えた見直しを要求している

もうこの際に因美線を智頭急行に転換してしまって、智頭急行の資金でJR西日本因美線智頭~鳥取間の設備増強や高速化を図るべきではないだろうか

もし因美線を智頭急行に移管してしまえば、JR西日本としてはやや運賃収入や特急料金収入は多少減りはするが(大阪~鳥取間利用の場合、JR西日本分の特急料金が340円安くなる)、老朽化しているキハ40系列やキハ120形の置き換えを自社費用ではなく智頭急行に新車を投入させることができるためJR西日本としても大きく費用節減となる。

また鳥取県も出資する第三セクター会社智頭急行に移管すれば、将来的な普通列車の減便も抑えられるかもしれない。そう考えると因美線を智頭急行に移管させるべきではないだろうか


5. 結び

今回の自民党鳥取県連の提言では、山陰方面の特急増発に向け提言を行っている。ただ、以下のような施策を図ることで、特急「スーパーはくと」の毎時1本化および長期的視点に立った京阪神・東京方面への利便性向上、および鳥取・島根両県での流動活性化につなげることができる。

  • 智頭急行線特急「スーパーはくと」の運転区間を(京都〜)新大阪〜姫路〜鳥取〜松江〜出雲市間に拡大する→1日14往復~15往復を通常期4両~5両、多客時最大8両~9両で運転
  • 伯備線特急「やくも」の運転を1日6往復~7往復程度に縮小し通常時は2両、多客時は最大4両で気動車化、運転区間は岡山~出雲市~益田~新山口間に拡大

今後2023年以降に伯備線特急「やくも」と智頭急行線特急「スーパーはくと」で車両置き換えを行う中で、鳥取・島根方面の特急列車をどのように再編するのか、楽しみにしたい。

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コメント

  1. やん より:

    鳥取、米子、松江の意見は聞こえてくるが、田舎のエゴではなく、都会地の立場で考えれば、山陰へのルートは一本で分かりやすいのが良い。
    現実的な案だと思う。

  2. モモテン より:

    島根県民であまり智頭急行に馴染みはなかったのですが、調べれば調べるほどこれが最適で一番現実的な案に思えます。
    島根県も智頭急行に出資するべきかも。

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