新型車両DEC700形投入前にローカル線の廃止と見直しへ JR西日本ダイヤ改正予測(2023年以降予定)

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新型車両DEC700形投入前にローカル線の廃止と見直しへ JR西日本ダイヤ改正予測(2023年以降予定)

JR西日本は2022年4月11日、プレスリリースにて輸送密度2,000人/日・往復未満の線区の収支状況について公表した( ローカル線に関する課題認識と情報開示について )。今回はこれについて見ていく。

1. 赤字ローカル線の収支公表は車両老朽化を皮切りに実施か

今回のJR西日本のローカル線見直しは、新型車両DEC700形の投入を前に提起している。

JR西日本では2021年6月25日に非電化区間用新型車両としてDEC700形を製造すると公表した。ただJR西日本では新型車両の投入公表時またはその前に投入両数を公表することが多いが、DEC700形は未だに何両投入するのか決まっていない。

ほかに路線の見直しを図っているJR北海道でもキハ40系列の車両老朽化に伴い車両更新する必要性が生じた。しかしその新車を製造するにも多額の費用が掛かるため、車両更新のタイミングで路線廃止を選択させている。これは近畿日本鉄道伊賀線・養老線・内部線・八王子線でも行っており、車両老朽化による置き換え頃のタイミングで路線の存廃を自治体に委ねている。

JR西日本でも老朽化したキハ40系列254両及びキハ120形88両の計342両を保有している。今後老朽化車両の置き換え目的としてDEC700形を投入するが、どの程度廃線にするかによって必要な両数が変わる。そこで今回のタイミングで路線の存廃を伺い、その結果次第でDEC700形の投入両数を決めるのだろう




しかもJR西日本には山陰本線や姫新線、小浜線などで設備改良や車両更新に自治体から費用を拠出させた前例がある。このため赤字を全て補填するのであれば存続は堅いだろう。

ただ、その赤字額がいかほどかわからなければ沿線と議論ができない。そこで今回輸送密度が2,000人/日・往復未満の線区について収支状況を公表することとなった。JR西日本のプレスリリースに記載された詳細は以下の通り。

2019年度平均乗客数2,000人/日未満の線区の経営状況
路線 区間 2017年~2019年平均収支(億円) 平均輸送密度(人/日)
線区運輸収入 線区営業費用 線区営業損益 1987年 2019年 2019年/1987年比
小浜線 敦賀~東舞鶴 3.1 21.3 ▲ 18.1 2,712 991 37%
越美北線 越前花堂~九頭竜湖 0.7 9.1 ▲ 8.4 772 399 52%
大糸線 南小谷~糸魚川 0.2 5.9 ▲ 5.7 987 102 10%
山陰線 城崎温泉~浜坂 1.6 13.4 ▲ 11.8 4,966 693 14%
浜坂~鳥取 1.1 9.7 ▲ 8.5 4,878 921 19%
出雲市~益田 10.0 44.5 ▲ 34.5 2,779 1,177 42%
益田~長門市 0.9 12.4 ▲ 11.5 1,663 271 16%
長門市~小串・仙崎 0.9 10.3 ▲ 9.5 2,424 351 14%
関西線 亀山~加茂 2.5 17.1 ▲ 14.6 4,294 1,090 25%
紀勢線 新宮~白浜 6.7 35.4 ▲ 28.6 4,123 1,085 26%
加古川線 西脇市~谷川 0.2 2.9 ▲ 2.7 1,131 321 28%
姫新線 播磨新宮~上月 0.9 7 ▲ 6.0 2,389 932 39%
上月~津山 0.5 4.6 ▲ 4.0 1,527 413 27%
津山~中国勝山 0.8 5 ▲ 4.1 1,364 820 60%
中国勝山~新見 0.3 3.8 ▲ 3.5 702 306 44%
播但線 和田山~寺前 3 10.4 ▲ 7.3 3,388 1,222 36%
芸備線 備中神代~東城 0.1 2.1 ▲ 2.0 504 81 16%
東城~備後落合 0.01 2.6 ▲ 2.6 476 11 2%
備後落合~備後庄原 0.1 2.7 ▲ 2.6 725 62 9%
備後庄原~三次 0.3 2.9 ▲ 2.5 1,257 381 30%
三次~下深川 2.3 15.5 ▲ 13.2 3,500 888 25%
福塩線 府中~塩町 0.3 6.7 ▲ 6.5 898 162 18%
因美線 東津山~智頭 0.2 4.1 ▲ 3.9 1,551 179 12%
木次線 宍道~出雲横田 0.6 7.7 ▲ 7.2 879 277 32%
出雲横田~備後落合 0.04 2.8 ▲ 2.7 279 37 13%
岩徳線 岩国~櫛ヶ浜 1.8 7.2 ▲ 5.4 3,342 1,246 37%
山口線 宮野~津和野 1.8 10.2 ▲ 8.4 2,237 678 30%
津和野~益田 0.9 6.4 ▲ 5.5 1,859 535 29%
小野田線 小野田~居能 など 0.2 2.2 ▲ 2.0 1,479 444 30%
美祢線 厚狭~長門市 0.8 5.2 ▲ 4.4 1,741 478 27%

なお芸備線三次~下深川間は2019年は長期不通期間があったため、通年であれば1,500人/日・往復程度の利用があった。

ではこのうち具体的にJR西日本がどの路線は基本的に廃止する意向なのか、そしてどの路線は基本的に存続で考えていくのか、見ていく。




2. 輸送密度2,000人/日・往復とはどのような状態なのか

まず、今回の公表に至る選定基準として2,000人/日・往復を選んでいる。

この2,000人/日・往復というのは、昼間はバスが1時間に1本程度、平日夕ラッシュ時は毎時2本程度、平日朝ラッシュ時は毎時4本程度で済む輸送量である。列車の定員はバス約2台分であることから、列車であれば朝だけ毎時2両、他の時間帯は毎時1両程度で運べる輸送量である。まあ昼間に毎時1両の運転ができればバスとなんとか同等の運転本数を確保できることから、輸送密度2,000人/日・往復は列車とバスがほぼ同じ運転本数で設定できる分界点と言える

つまり輸送密度2,000人/日・往復以上であれば鉄道の方がバスより優位性があるし、輸送密度2,000人/日・往復未満であればバスの方が優位性が上がる

ちなみに1980年代のJR西日本の前身旧日本国有鉄道による特定地方交通線選定基準は第三次まで合わせると4,000人/日・往復であったが、当時は自動車への移行が徐々に進み始めた時期であり今後も移行が進む可能性が高かったことから先見の明として4,000人/日・往復で切っているが、2022年時点では概ね一家に一台の車を所有している時代なので自動車への移行するような旅客は移りきってしまっており、今後の利用減少は沿線の少子化・過疎の進行と大きく相関する。このため4,000人/日・往復で一律廃止とするのは不適切で、見直し基準はJR西日本や以前のJR北海道のような2,000人/日・往復とすべきだろう。




3. 輸送密度200人/日・往復未満は無条件廃止か

では輸送密度で切るとしたらどの程度の路線は切るのだろうか。

そもそも輸送密度200人/日・往復未満の場合、バス代替どころかジャンボタクシーで代替できるレベルである。実際に輸送密度200人/日・往復未満であったため廃止したJR北海道札沼線では、廃止代替バスは基本的に定員13名のジャンボタクシーを使用しているほか、浦臼~新十津川間に至っては2022年9月30日を以て代替交通を廃止する見込みだ。

しかもJR西日本では保守作業の簡素化を目的にカーブで減速を行うが、この原則も相まってジャンボタクシーでの代替輸送の方が初よ時間が短かったりする。よって輸送密度200人/日・往復の路線は鉄道で存続する意味がないと言っても過言ではない

この輸送密度200人/人・往復未満に相当するのは、大糸線南小谷~糸魚川間、芸備線備中神代~備後落合~備後庄原間、福塩線府中~塩町間、因美線東津山~智頭間、木次線出雲横田~備後落合間の計226.7kmとなっている。

国鉄最悪の営業係数と言われた美幸線でも営業係数は4,731だったし、輸送密度も24人/日・往復であった。にも関わらず芸備線東城~備後落合間は営業係数26,906、輸送密度9人/日・往復しかいないのである。こんなのバスどころか乗り合いタクシーで代替できるので、鉄道として廃止するのは当然と言わざるを得ない。

なお芸備線は2020年以降増発などの需要増加策を練っており2021年の時点で増発の効果はなく葬式鉄向けの増発を図るほどになったことから、最短で2023年度に廃止とする可能性がある。

そう考えると輸送密度200人/人・往復未満の路線の廃止はほぼ避けられないだろう

なおこれらの輸送密度200人/人・往復の路線をすべて廃止した場合、キハ120形が15両浮く見込みだ。もっとも一時的により老朽化しているキハ40系列を置き換えれば多少の省エネには働きそうだ。




4. 輸送密度500人/日・往復未満も原則廃止か

次に 輸送密度500人/日・往復未満の路線。

JR北海道では200人/日・往復を超えていれば、維持費用の負担はお願いするものの路線存続とした。これは稚内や根室などを結ぶ路線を廃止してしまうと対ロ政策に触れかねないため、宗谷本線や花咲線を残さざるを得ないためと言われている。

ただJR西日本は本州を中心に展開しているため国境を気にして廃止を躊躇する必要はない(厳密には境港線は入るかもしれないが、そもそも輸送密度2,000人/日・往復を超えているので今回の対象外である)。そう考えると輸送密度200人/日を超えていても安泰とは言えない。

ではどこで線引きするのか。過去にJR西日本では可部線可部~三段峡間を2003年11月30日の運転を以て廃止したが、この区間の廃止の根拠としたのが1997年度~1999年度の3年連続で500人/日・往復を下回ったことである(実際に1997年度492人/日・往復、1998年度456人/日・往復、1999年度421人/日・往復)。つまり先の事例を踏まえれば輸送密度500人/日・往復未満は原則廃止としてもおかしくはない

余談だが輸送密度500人/日・往復というのは第一次特定地方交通線の選定基準の1つで、50km以内の路線かつ輸送密度500人/日・往復未満の路線を廃止対象としている(ただし当時ですらこの条件に当てはまるのは添田線しかなく、ほとんどの第一次特定地方交通線選定路線は30km以下の盲腸線で輸送密度2,000人/日・往復未満の路線としている)。




これに相当するのは越美北線越前花堂~九頭竜湖間、山陰本線益田~小串間及び長門市~仙崎間、加古川線西脇市~谷川間、姫新線上月~津山間及び中国勝山~新見間、芸備線備後庄原~三次間、木次線宍道~出雲横田間、小野田線全線、美祢線厚狭~長門市間などの計411.4kmとなっており、いずれの路線も特急列車の運転はない。

このうち小野田線は比較的街なかを走行しているが、サンデン交通のバスの方が圧倒的に運転本数が多いためある意味鉄道としての使命を終えていると言ってもいいだろう、いやむしろ小野田線を廃止にしたら跡地をBRT道路として整備すれば周辺の渋滞緩和につなげるかもしれあい。

ただこれらの路線を見る限り、越美北線ほぼ間違いなく隣駅間輸送密度的には越前花堂~越前大野間では500人/日・往復を超えている可能性も考えられるほか、美祢線も厚狭~美祢間は500人/日・往復を超えていてもおかしくない。また小野田線も雀田~長門本山の本山支線を分け、本線の居能~小野田間のみの輸送密度であれば500人/日・往復をまず超えるが、あえて全線平均とすることで全線で廃止したいという魂胆が見える(もっともJR北海道留萌本線みたいに沿線が一部区間存続を打ち出し始めたらJR西日本が困る線区でもあったりする)。

また近年加古川線の区間別輸送密度を西脇市で分けたことを考えると西脇市~谷川間を意地でも廃止したいという魂胆も見える。

そう考えるとJR西日本は500人/日・往復を下回る路線も原則廃止で調整するのではないだろうか

もしこれらの路線を廃止すれば、キハ40系列を8両およびキハ120形を23両の運用が浮く見込みだ。また電車も105系2両と123系2両、125系1両が浮く見込みで、今後の電車の老朽置き換え数の削減も期待できそうだ。




5. 輸送密度500人/日・往復以上運転の線区は特急運転区間のため廃止回避か

次に輸送密度が500人/日・往復~1,000人/日・往復ある区間を見てみよう。

これに相当するのは小浜線敦賀~東舞鶴間、山陰本線城崎温泉~鳥取間、姫新線播磨新宮~上月間及び津山~中国勝山間、山口線宮野~益田間の計301.3kmとなっている。

これらの区間を見ると特急「はまかぜ」や特急「スーパーおき」などの運転区間を含む。もっとも輸送密度1,500人/日・往復までの区間も含めれば特急「くろしお」や特急「南紀」、特急「スーパーまつかぜ」の運転区間まで含むことになる。

これらの大阪や新幹線停車駅などと各都市を結ぶ都市間特急運転線区が易々と廃止になるとは考えにくいほか、沿線自治体の反発も強く、むしろ税金を拠出してでも残そうとする機運は高まる。

またそもそもJR西日本も特急列車であれば特急料金も徴収できるほか、比較的長距離利用が多いため他の線区の収支にも影響しかねないことから易々と廃止にしたいとは思えない。そう考えるとDEC700形などの新型車両製作費を税金から徴収するなどして赤字を埋め合わせたいのが一番の本望なのではないだろうか

そう考えると特急運転線区を含む輸送密度が500人/日・往復以上の路線は何らかの形で存続する可能性が高いのではないだろうか

ただ、廃止を免れたとしても減便を行う可能性は高いほか、紀勢本線特急「南紀」に至っては新宮~紀伊勝浦間のみJR西日本に乗り入れるためにJR西日本が運転士や車掌などの乗務員を手配しなければならず運用効率が悪い。そう考えると特急「南紀」の新宮~紀伊勝浦間廃止はあり得るのではないだろうか




6. 2000年以降に新車に統一した路線では廃止回避か

では輸送密度だけで存続か廃止が決まるかというと、そうでもない。

先述したように、今回の廃線はDEC700形などの新型車両投入数の削減も目論んでいる。このため車両置き換え対象のキハ40系列やキハ120系を使用している路線を中心に廃止対象を策定しているのだが、電化区間でも老朽化した車両で運転している場合は別形式での車両投入が必要であることから、老朽車両を運転している線区は当然廃止の対象となる。

ただ、2000年以降に新車を投入した各線ではそもそも車両老朽化が進んでいないし、ローカル線の新車に至っては沿線自治体の税金補助で投入した例が多い。このため易々と廃止にできない実情がある。

これに該当するのが125系電車ですべて統一した小浜線とキハ122形・キハ127形気動車のみ運転の姫新線播磨新宮~佐用間で、英金拠出も考えると佐用~上月間も減便するとはいえ残るだろう。

ただし定期運用を125系電車で統一している加古川線西脇市~谷川間はもし廃止すれば浮いた車両を加古川~西脇市間でもっぱら運転している老朽化した103系の置き換えとして用意できるため、廃止することで新製車両数削減を目論むことができる。そう考えると西脇市~谷川間は廃止を想定していそうだ。

もしJR西日本が管内の輸送密度500人/日・往復未満の路線を廃止すれば638.1kmの路線を廃止することとなる。このほかに北陸新幹線金沢~敦賀間開業と北陸本線金沢~敦賀間の経営移管により営業範囲が差し引き5.6km短くなるためこれらも差し引くと、JR西日本の営業キロは2022年時点では4887.3kmあったものが、今回の路線見直しで4243.6km程度にまで縮小する可能性は十分考えられる。これにより今回の路線見直しでJR西日本は路線網を13.1%程度の縮小を目論んでいるようだ。

また気動車も46両削減できる見込みであることから、新型車両DEC700形の投入本数も抑えることができそうだ。

もっとも路線廃止は最速で芸備線一部区間の2023年度を皮切りに始めるのではないかと考えられるが、少なくとも輸送密度が2,000人・日/往復いる非電化区間から順次DEC700形を投入する可能性はある。


7. 結び

今回のJR西日本のローカル線見直しは、2,000人/日・往復未満の線区を対象に公表しているが、おそらく輸送密度500人/日・往復未満の線区を廃止にする可能性が高く、500人/日・往復を超えていれば沿線自治体などの税金拠出などの条件付きながらも基本的には存続する方向になる見込みだ。

今回の見直しをDEC700形の投入を前に行うことで新型車両の投入抑制を抑えられるほか、今後の保守工事を減らすことができ赤字を削減することができる。

今後JR西日本でどのような路線を存続させるのか、見守ってゆきたい。

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